学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

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比企谷八幡は陰謀渦巻く戦いを観戦する(前編)

 

 

 

 

どうしてこうなったんだ?

 

俺の頭の中にはその考えしかない。普段なら思考停止に陥る事はないが今においてはしょっちゅう思考停止してしまっている。

 

何故なら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふふっ」

 

歩いている中、オーフェリアが今まで見た事がないくらい艶のある表情で俺の腕に抱きついているからだ。この表情なら俺以外の人が見ても笑顔と判断出来るだろう。

 

「………八幡」

 

そう言って更に腕に力を込める。それによって俺の腕には柔らかい二つの塊が当たる。チラッと見ると俺の腕に当たって形が変わっている。

 

(……くっ。これはヤバい)

 

 

改めてオーフェリアが持つ二つの塊ーーーオーフェリアの胸が俺の腕に当たって形が変わっているのを理解すると顔が熱くなるのを実感する。

 

マジで何があったんだ?

 

オーフェリアの奴、小町達の控え室を出て俺がオーフェリアの願いを叶えると言ってたらいきなり抱きついてきた。

 

その後暫く抱き合って、ちょうど5分くらい前に抱擁をといて観覧席に向かって歩き始めて今に至る。

 

向かっている場所はレヴォルフの生徒会専用の観覧席、ガラードワースの生徒会専用の観覧席にはオーフェリアがベッタリくっ付いているので戻れないだろうからレヴォルフの生徒会専用の観覧席に向かう事にした。

 

腕に当たっている柔らかい感触に耐えながら歩いていると漸くレヴォルフの生徒会専用の観覧席に到着した。

 

オーフェリアが許可証を使用すると扉が開く。中に入ると人一人いなかった。よかった、これで他の人に変な目で見られずに済むな。

 

安堵の息を吐きながら扉を閉め席に座る。するとオーフェリアは俺の横に座って俺の肩に頭を乗せてスリスリしてくる。

 

「……八幡」

 

ドキドキしているとオーフェリアが俺の名前を呟いてくる。もうマジで何なの?さっきから様子が変だがマジで何があったの?

 

「……オーフェリア、何があったんだよ?」

 

つい聞いてしまう。するとオーフェリアは頬を染めながら口を開ける。

 

「……そうね。今の私は自由になりたいと思うようになったの。だって……自由になったら八幡が私の願いを叶えてくれるのだから」

 

そう言っているがマジで何なんだ?あれ程自由になるのを諦めていたオーフェリアが自由になりたいと思うようになるって……

 

オーフェリアの願いって何なんだ?そして俺は何をする事になるんだ?

 

理由はない。理由はないが途轍もなく凄い事をしないといけない気がする。それこそ……何かしらの責任を取るみたいな事とか。

 

だとしたらどうしよう……

 

 

悩んでいる時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さぁー各学園で白熱の試合が続いております四回戦!このシリウスドームでのトリを飾るのは星導館学園の天霧、リースフェルトペアとレヴォルフ黒学院のウルサイス姉妹です!ベスト16に進むのは果たしてどちらのタッグなのか!』

 

実況の声が聞こえたのでステージを見ると天霧とリースフェルト、ウルサイス姉妹がステージに現れる。

 

とりあえずオーフェリアの願いについて悩むのは後でいいだろう。今は試合に集中だ。何故ならこの試合がディルクの望んだ試合なのだから。

 

意識を切り替えてステージを見ると天霧の周囲に魔方陣が浮かんで万応素が輝いて弾ける。

 

『ーーー内なる剣を以って星牢を破獄し、我が虎威を解放す!』

 

天霧がそう言うと大量の星辰力が天霧の体から現れる。それと同時に手には『黒炉の魔剣』が起動状態となって現れる。

 

「……ああ。あれが『黒炉の魔剣』」

 

オーフェリアは一瞬目を細めて天霧の手にある『黒炉の魔剣』を見る。やはりディルクの手駒だけあって天霧の事を知ってるのか?

 

疑問に思っているとイレーネの持つ『覇潰の血鎌』が紫色の光を放ちだす。どうやら両ペア共にやる気十分のようだ。

 

緊張感が張り詰める中ーーー

 

 

『鳳凰星武祭四回戦第十一試合、試合開始!』

 

試合開始が告げられる。

 

それと同時にリースフェルトが構えを見せる。

 

『咲き誇れーーー赤円の灼斬花!』

 

リースフェルトの周囲に炎が吹き上がり紅蓮の戦輪を十数個作り上げる。やはり能力者としての基本はマスターしているようで準備が速い。

 

リースフェルトが戦輪をイレーネに飛ばすが『覇潰の血鎌』によって全て破壊される。

 

しかしそれは囮のようで本命は天霧による攻めだ。

 

天霧はその隙を突いてイレーネとの距離を詰めて『黒炉の魔剣』を使って下段から斬り上げる。

 

それに対してイレーネは『覇潰の血鎌』で受け止める。すると刃同士が干渉し合って火花が舞い散る。

 

どうやら全てをぶった斬る『黒炉の魔剣』でも同格の純星煌式武装が相手ならそう簡単にはいかないらしい。

 

天霧もそれを理解したようで直ぐに鍔迫り合いを止めてイレーネの体に斬撃を放つ。イレーネは『覇潰の血鎌』を振るって迎撃するも天霧には回避されて反撃される。

 

本来鎌は攻撃動作が限定されているので武器としてはそこまで優れていない。イレーネは身体能力でそれを補っているが大抵の雑魚ならともかく天霧クラスの相手には厳しいだろう。現に今、天霧の一撃がイレーネのマフラーをぶった斬ったし。

 

するとタイミングを見計らったようにリースフェルトの戦輪がイレーネに襲いかかる。しかしイレーネが作り出した重力球が戦輪とぶつかり合って互いに消滅する。

 

「ふーん。組んで1ヶ月の割には中々良いコンビじゃん」

 

「……でも連携だけなら小町と戸塚の方が上じゃない?」

 

「そりゃ締め切り直前にエントリーしたあいつらと違って小町達は遥か前にエントリーしたからな。それにあいつらの連携は難しいだろ?」

 

天霧とリースフェルトの場合は力が大きいし割と癖があるからな。連携の難度が違い過ぎる。

 

そう思いながらステージを見ると天霧が後ろに跳んでいた。よく見ると先程まで天霧がいた場所の周囲の空気が震えているのがわかる。

 

「あの辺りの重力を操作したのか。つくづく面倒臭い純星煌式武装だな」

 

「……彼女からしたら八幡の能力の方が面倒だと思われているわよ。なにせ影の中にいれば重力の影響を受けないのだから」

 

まあ、な。俺の影の中は全ての攻撃に対して絶対の防御を持つ。これで影の中からでも攻撃が出来れば正真正銘無敵なんだがな……悲しきかな、影の中にいる間は影による攻撃が一切出来ない。

 

俺の能力の欠点について考えている時だった。ステージにいる天霧がふわりと浮き上がった。アレは……

 

「この前の序列戦で俺がやられたヤツだな」

 

重力を弱めて相手を浮かす技、俺も以前アレをくらったがあの状態になると身体がくるくる回るだけで何もできなくなる。俺は影に入って逃げれたが天霧達はヤバくないか?

 

しかもリースフェルトも重力の影響を受けているのか地面に倒れこんでいる。

 

『さぁて、私は『華焔の魔女』ほどコントロールはよくねぇが、流石に止まった的なら外さねぇぜーーー単重壊!』

 

イレーネがそう叫ぶと重力球が現れて天霧へ狙いを定める。……が、不意にイレーネが膝を折った。おそらく『覇潰の血鎌』の代償による負担の所為だろう。早くプリシラから血を貰わないと負けるだろう。

 

しかしイレーネは顔を歪めながらも能力を発動している。

 

『これで終わりだ、天霧!』

 

重力球が天霧に放たれて、まさに直撃しようというその刹那ーーー

 

『咲き誇れーーー六弁の爆焔花!』

 

倒れこんでいるリースフェルトが放った火球が重力球より先に天霧に直撃した。

 

それによって小規模な爆発が起こり爆煙の中から天霧が出てくる。多少ダメージを受けたようだが、重力球をくらうダメージよりは低いだろう。

 

「天霧を信頼している。だからあえて攻撃して天霧を重力の影響から逃すって………あいつら完全に夫婦だなおい」

 

味方を攻撃して敵の攻撃から守るなんて余程天霧を信頼してないと出来ない事だ。

 

天霧にしろリースフェルトの為に鳳凰星武祭に出場してるし。つーかこいつらは本当に付き合ってないのか?絶対に付き合ってるだろ。

 

 

 

 

 

 

 

天霧に対して内心突っ込んでいる時だった。

 

「……夫婦」

 

オーフェリアがポツリと何か呟いた。

 

「どうしたオーフェリア?」

 

よく聞こえなかったので聞いてみるとオーフェリアは俺の顔を見てくる。

 

「……八幡。八幡は誰かと夫婦になりたい?」

 

は?俺が誰かと夫婦になりたいだと?

 

いきなり妙な事を聞いてくる奴だな。質問の意図は理解できない。理解はできないが一応質問には答えよう。

 

「そりゃまあ……なりたいっちゃなりたいな」

 

美人で優しくて俺を養ってくれる人と結婚したいし。そして俺は専業主夫として幸せになりたい。

 

そう返すと………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ八幡。……私と夫婦になりたい?」

 

オーフェリアが爆弾を投下してきた。

 

ふぁぁぁぁぁぁ?!い、いきなり何を言っているんだよ?!オーフェリアと夫婦だと?!こいつマジでどうしたんだ?!

 

内心焦りまくっていると、オーフェリアはそれを無視して近寄ってくる。止めて!俺のライフはもうゼロだからな!!

 

「……八幡」

 

そう言って更に顔を近づけてくる。近い近い近いから!!

 

俺が離れようとすると更に詰め寄ってくる。ダメだ!誰か助けてくれ!

 

そう思っていると携帯端末が鳴り出した。よし、ナイスタイミングだ!

 

そう思いながら携帯を取り出して通話ボタンを押す。それと同時にある考えが浮かぶ。

 

 

(……あれ?そういや前にも似たような状況があったような?)

 

しかし時すでに遅く……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『すみません比企谷君。今よろしいでしょうか?』

 

画面には星導館の生徒会長が映っていた。何でエンフィールドが電話をしてくんだ?

 

「……八幡」

 

そして何でオーフェリアはどす黒いオーラを出しているんだ?

 


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