学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

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比企谷八幡は修羅場に遭遇する(前編)

 

 

 

『試合終了!勝者、エルネスタ・キューネ&カミラ・パレート!』

 

アナウンスが流れると会場が歓声を上げる。

 

「……はっ!」

 

それと同時に真っ白になっていた俺の意識が再起動する。ステージを見るとアルルカントの擬形体の足元には2人の界龍の生徒が倒れこんでいた。

 

(……いつの間にか終わってやがる)

 

第1試合についてだが……頭の中が真っ白になっていた為、全く記憶にない。

 

頭が真っ白になった理由は……

 

「ふふっ」

 

俺の肩に頭を乗せて楽しそうな表情を浮かべているシルヴィがその、俺の頬に……ダメだ、思い出すだけで顔が熱くなってきた。

 

やっぱりあの柔らかい感触って……

 

そう思いながらシルヴィを見ると俺の目は自然とシルヴィの瑞々しい唇を見てしまう。それを見ただけで俺の顔が熱くなるのが嫌でも理解してしまう。

 

「八幡君?」

 

顔の熱について悩んでいるとシルヴィがいきなり頬を突いてきた。

 

「な、何だ?!」

 

いきなりの不意打ちについ過剰に反応してしまう。VIP席にいるお偉いさんは何事だとこっちを見てきた。いかん、さっき頬にキスをされた所為か冷静さを失っているな。

 

シルヴィは何で俺が冷静さを失ったか知っているかのように小悪魔のような笑みを浮かべて抱きつきながらスリスリしてくる。

 

「ふふっ。八幡君可愛いね。もしかして照れてるの?」

 

もしかしなくても照れてます。シルヴィの奴、オーフェリアみたいにガンガン甘えてくるし。甘えん坊はどうにも拒絶出来ないから対応が難しいんだよな。

 

「うるせぇ。そんな事どうでもいいだろ」

 

投げやりにそう返すとシルヴィはますます笑みを深める。

 

「ふーん。あくまで素直にならないんだ」

 

「は?いやいや、俺はいつも素直だからな?」

 

「それはないね」

 

断言しやがった。いや、まあ素直ではないのは否定しないがそこまではっきり言わなくても……

 

シルヴィに突っ込んでいるとシルヴィは突然小悪魔のような笑みに蠱惑的な雰囲気を纏わせてきた。

 

「ふーん。照れてないんだ。だったら八幡君」

 

そう言ってシルヴィは俺の耳に顔を近づけて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……次は頬じゃなくて唇にしてもいいよね?」

 

そう言ってきた。

 

……は?頬じゃなくて唇だと?シルヴィの綺麗な唇が?俺の唇に?

 

その光景を想像すると一瞬で顔が熱くなってきた。ヤバいヤバいヤバい!想像しただけで死にそう。てか実際にされたらガチで死にそう。

 

俺は即座に敗北を認めた。

 

「わかった。俺の負けだ。さっきは照れてました」

 

正直に自白するとシルヴィは勝ち誇った笑みを浮かべながら俺を見上げて抱きついたまま再度スリスリをしてくる。

 

「ふふっ。私の勝ちだね。照れてる八幡君可愛いなぁ」

 

止めて!俺のライフはもうゼロだからね?!シルヴィの甘え方凄く可愛いんですけど?!

 

てか俺は今全世界のシルヴィファン推定数十億人を敵にまわしたな。これはマジでヤバい。統合企業財体を敵にまわすよりヤバいと思う。

 

俺の命日が遠くないと思っている中、当のシルヴィは未だに抱きついている。そろそろ俺の理性がマズいので逃げよう。

 

俺は唐突にシルヴィとの抱擁をといて立ち上がる。

 

「すまんシルヴィ。腹痛いから手洗いに行ってくる」

 

「え?ちょっと八幡君……」

 

シルヴィが言葉を言い終わる前に俺は全力疾走してVIP席を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

5分後……

 

「ふぅ……」

 

俺は息を吐いて手洗いを後にする。顔の熱は既に無くなっている。にしてもさっきはマジで危なかったな。それにシルヴィから逃げる為に嘘を吐いたし。……帰ったらシルヴィに謝るか。

 

さっきした失礼な行動に対して反省してVIP席に戻ろうとすると……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……八幡」

 

いきなり名前を呼ばれたかと思ったら後ろから軽く衝撃が走る。そして直ぐに背中に柔らかい感触が当たる。こんな事する奴はシルヴィ以外には1人しかいない。

 

「オーフェリアか」

 

「おはよう八幡」

 

俺がオーフェリアの名前を呼ぶとオーフェリアは背中から離れて正面に回ってくる。いつも通り悲しげな表情だが……少しだけ嬉しそうな表情をしている。

 

そんな中、俺は昨日見た夢を思い出して顔が熱くなるのを感じる。しかし、さっきシルヴィとお互いの夢を暴露して恥ずかしい思いをしたからか、シルヴィと鉢合わせした時よりは遥かにマシだ。

 

「おはよう……って何してんだよ?!」

 

俺が挨拶をしているとオーフェリアは俺の手を取って自分の胸に近づけてくる?ヤバいヤバいヤバい!

 

いきなり何をやってんだよ?どんな趣味だよ?!って話だからな?

 

「……実は昨日夢を見たの」

 

「夢だと?」

 

猛烈に嫌な予感がした。俺の夢といい、シルヴィが見た夢といい理由はないが……嫌な予感がしてならない。

 

そして俺の予感は的中した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ええ。昨日八幡に抱かれる夢を見たわ」

 

はっきりとそう告げてきた。待て待て待て待て!

 

「こ、こんな場所ではっきりと言うなバカ!」

 

顔が熱くなるのを感じながらそう突っ込む。今は手洗いの近くで人が結構いる。周囲にいる人殆ど全員が俺とオーフェリアを見ている。殆どが好奇の目を向けていて居心地が悪い。

 

これはマズいと判断した俺はオーフェリアの手を掴んで全力疾走でこの場を離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ここなら大丈夫だな」

 

とりあえずオーフェリアを引っ張って人が少ない休憩所に着いた。幸い人は俺達2人以外いない。

 

「……八幡」

 

俺が足を止めるとオーフェリアは直ぐに抱きついてきた。さっきオーフェリアから聞いた夢の内容もあって俺の顔は熱くて仕方ない。

 

「……あのだなオーフェリア。そろそろ離れてくれないか?」

 

この状況はマズいのでオーフェリアに離れてくれるように頼んでみるも……

 

「……嫌」

 

オーフェリアは断ってきた。それには正直驚いた。いつもは離れてくれと言ったら離れるオーフェリアが断るのは完全に予想外だ。

 

「……んっ」

 

オーフェリアは断ると同時に更に強く抱きついてくる。それによって二つの柔らかな膨らみが当たってヤバい。

 

(何で風邪を引いた時より体が熱くなるんだよ?)

 

「オーフェリアマジで頼む。その……胸が当たって……」

 

ヤバいから離れてくれ、そう頼もうとするも……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……嫌なの?あんなに胸が沢山載っている雑誌を持ってるのに?」

 

「がはぁっ!」

 

オーフェリアが不思議そうな表情で俺の臓腑をナイフで抉ってきた。いきなり何を言ってんだよ?!

 

「い、いや……そのだな……」

 

しどろもどろになってしまうとオーフェリアは上目遣いで見てくる。破壊力ヤバ過ぎる……

 

「……別に怒っていないわ。でも……もしも雑誌に載っているような事がしたいなら……」

 

オーフェリアは一つ区切り俺から離れて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー私を好きにしていいわよ

 

そう言って俺の手を掴んで自分の胸に運ぶ。え?今なんて言ったんだ?全く理解できん。

 

衝撃の発言によって呆気に取られていると……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ……」

 

遂に俺の手は触れてしまった。そして手にはこの世の物とは思えないくらい柔らかな感触が襲っている。

 

(……は?ちょっ……俺は今、オーフェリアの……▼ゝ◆?◎〆\=\@ッ!?%◆%○ッ!)

 

途中から自分でも何を考えているかわからなくなってしまった。しかし今自分のしている事は理解できているので慌てて手を離そうとするも……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ダメ。んっ……もっと」

 

オーフェリアは俺の手首を掴んで離すのを防ぐ。よって俺の手は未だに柔らかな膨らみに触れている。初めて触れたがこれは……

 

一瞬呑まれかけたが何とか復帰する。

 

「ちょっ!オーフェリア!それは……」

 

慌ててオーフェリアに離してくれと頼もうとするがオーフェリアはそれを無視して手首を離さない。

 

「……八幡が本当に嫌なら離すわ。でも嫌じゃないなら……八幡の好きにしていいわよ。……自分に正直になって」

 

オーフェリアはそう言うと俺の手を掴む力を緩める。これなら俺が少し手を動かせば離れられるだろう。

 

そう思いながら俺は柔らかな感触に包まれている自分の手を見る。内心ドキドキしながらその手を離そうとしーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー八幡の好きにしていいわよ。……自分に正直になって

 

オーフェリアの一言を思い出して思考を停止してしまう。……触ったままでもいいのか?

 

(……いや、ダメだダメだ!そんな事をしちゃ絶対ダメだ!)

 

一瞬魔がさしたが首を横に振る。やっぱり恋人関係でもないのにこういう事をするのは論外だ。だから……手を離す。

 

そう決心して行動に移そうとした時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何してるの、八幡君?」

 

いきなり聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

声のした方向を見ると……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「し、シルヴィ……」

 

そこにはさっきまで一緒に試合観戦をしていたシルヴィが立っていた。

 

シルヴィに指摘されたので現状を確認する。

 

 

オーフェリアの胸を揉んでいる。

 

……明らかに詰みじゃねぇか!?

 

内心突っ込んでいる中、シルヴィは怒ったような表情を、オーフェリアは勝ち誇ったような表情をしてお互いに見合っていた。そしてその空気は……ガチでヤバい。

 

 

 

……俺は生きて帰れるのか?


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