学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

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比企谷八幡は面倒事に挑む

朝、窓から入ってくる朝の日差しによって俺は目を覚ます。天気は快晴と暑いが良い天気である。

 

時計を見ると午前7時半、まあまあ良い時間だ。

 

俺があくびをしていると、

 

「おはよう、八幡君」

 

隣にいるシルヴィが笑顔で挨拶をしてくる。あ、そっか。シルヴィは昨日からうちに泊まって……

 

そう考えていると昨日の出来事を思い出す。そうだ……俺は昨日、シルヴィにそ、その告白をされて……

 

ダメだ、思い出すと顔が熱くなってくる。まさかの世界の歌姫から告白されるとは夢にも思わなかったからな……

 

「八幡君、顔赤いよ。もしかして昨日の事を思い出してるの?」

 

「あ、いや、そのだな……」

 

図星を指摘されて焦っているとシルヴィは笑いながら俺に抱きついてくる。

 

「八幡君可愛い……昨日言った事は嘘じゃないから」

 

わざわざ言わなくていいからな!マジで恥ずい。

 

シルヴィは俺の顔を見て楽しそうに笑いながら俺の胸に顔を埋めてくる。

 

「んっ……八幡君、好き……大好き……」

 

そう言ってくるシルヴィを見ると恥ずかしさだけでなく、俺に対してそこまで想ってくれる嬉しさ、直ぐに返事が出来ないという事実に対する罪悪感が混ざり複雑な感情が湧いてくる。

 

しっかりと自分の中の気持ちを整理して早く返事をしないとな……

 

甘えてくるシルヴィを抱きしめながら強く決心した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい八幡君。あーん」

 

「んっ……」

 

それから20分、起きた俺達は朝食を食べているがさっきからシルヴィは俺に食べさせてくる。初めは拒否ろうとしたが逆らえずにあーんをされている。

 

「美味しい?」

 

シルヴィはそう聞いてくるが照れているからか味を感じる事が出来ません

 

「あー、まあな」

 

「そっか。じゃあ八幡君」

 

するとシルヴィは小さい口を開けてくる。おい、まさかシルヴィの奴……

 

「……それは俺がお前に食べさせろってメッセージか?」

 

「うん。好きな人に食べさせて貰いたいしね」

 

「っ……だからはっきりと言うな!」

 

シルヴィの気持ちはもう知っているがそこまでハッキリと言われたらどうしても顔が熱くなってしまう。

 

「ごめんごめん。つい、ね……」

 

「ついで言わないでくれよ……」

 

こいつは俺の精神をぶっ壊したいのか?下手したら告白に対する返事をする前に悶死するぞ?

 

「あーん」

 

その間にもシルヴィはあーんを要求してくる。こりゃ俺が折れるしかないな……

 

「……ほらよ」

 

ため息を吐きながらソーセージを差し出す。

 

「あーん」

 

シルヴィは小さくて可愛い口を開けてソーセージを食べる。くそっ、食べてる所も可愛いな……

 

「んっ、美味しい。じゃあお返しだよ」

 

シルヴィは笑顔で卵焼きを口の中に入れてくる。もう本当にどうにでもなれ……

 

結局朝飯はお互いにあーんをし合う事になっていつもの倍近い時間がかかった事は言うまでもないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おー、今日は昨日よりずっと混んでるな」

 

「まあ準決勝だしね」

 

食事を済ませた俺達はシリウスドームの前でドームに集まる観客を見て驚く。まだ試合1時間前なのに数千人の観客がドームに入っているくらいだ。

 

「今日の試合は刀藤達とアルルカントの人形ペアが第一試合で天霧達と雪ノ下と由比ヶ浜ペアが第二試合か」

 

「うーん。あの子達には頑張って欲しいけど……」

 

「天霧の弱点が無くなった以上かなり厳しいだろうな」

 

何せ前回の試合、制限時間を超えて負けたかと思いきや途中から復活して逆転したくらいだ。あの事から弱点は克服したと思う。そして制限時間がない天霧をタイマンで倒せる参加者は刀藤くらいだろう。

 

それに加えて優秀な能力者のリースフェルトもいるので雪ノ下達に勝ち目は殆どないだろう。

 

問題はアルルカントの方だ。アルディは防御障壁というふざけた力を使っているが、リムシィはまだふざけた力を使っていない。

 

アルディのパートナーである以上優れた武器を持っている筈だが、今まで一度も使ってないのが不気味であり、そこが刀藤達との試合を左右するだろう。

 

 

そんな事を考えていると

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……おはよう」

 

いきなり声が聞こえたかと思ったら背中に衝撃が走った。そして直ぐに柔らかな感触が背中に伝わる。

 

「おはようオーフェリア。いきなり抱きつくのは止めてくれ」

 

俺がそう言うとオーフェリアは抱きつくのを止めて俺の正面に来る。

 

「……わかったわ。じゃあ今から抱きついていいかしら?」

 

いや、許可を取れって意味で言った訳じゃないんだが……

 

そう思いながらオーフェリアを見ると上目遣いをして見上げてくる。だからその顔は止めてくれ!

 

「はぁ………好きにしろ」

 

ダメだ。どうもオーフェリアとシルヴィには甘くなってしまう。

 

「んっ……」

オーフェリアは頷いて正面から抱きついて背中に手を回してくる。あぁ……認めるのは癪だが本当に可愛いなぁ……

 

「む〜」

 

妙な声が聞こえたので横を見るとシルヴィが面白くなさそうな表情で俺達を見ている。……あ、そっか。仮にもシルヴィはその……俺の事が好きな訳だから他の女子と抱き合うのは気に入らないのだろう。

 

(……ヤバい。自分でそう思うだけで恥ずかしくなってきた。死にたい)

 

「……オーフェリアさん。もう少ししたら代わって」

 

シルヴィがオーフェリアをジト目で見ながらそうお願い……いや、威圧する。シルヴィ怖過ぎる。

 

しかしオーフェリアは特にビビらず……

 

「……嫌よ。どうせシルヴィアは八幡の家に泊まった時に散々抱きついたのでしょう?今日は私が独り占めするわ」

 

シルヴィの意見を即座に却下して更に強く抱きしめてくる。胸が当たってヤバいです。

 

「そんなに抱きついてないよ。一緒にお風呂に入った時と寝た時くらいだよ」

 

「……お風呂?八幡、シルヴィアと一緒にお風呂に入ったの?」

 

シルヴィの反論を聞いたオーフェリアはシルヴィ同様ジト目になって抱きついたまま俺を見上げてくる。気のせいかさっきより強く抱きしめられているような……

 

「入ったというかシルヴィが乗り込んできたんだよ」

 

俺から一緒に入ろうだなんて言えないからな?言ったら社会的に抹殺されそうだ。

 

「……やっぱり。シルヴィア……」

 

オーフェリアは恨みがましくシルヴィを見る。対するシルヴィも……

 

「仕方ないじゃん。八幡君と一緒に入りたかったんだし」

 

そう言うとシルヴィは俺の背中に抱きついてくる。いきなりどうした?!

 

「……何のつもりかしら?」

 

「……別に。よく考えたらオーフェリアさんの許可を取らなくても抱きつけばいいって思っただけだよ」

 

シルヴィはギューっと抱きしめてくる。マジで止めてくれ!周りの目が痛いから!変装してなかったらマジで殺されそうだ。

 

俺は2人に抱きつかれたまま影に潜りその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

「………」

 

所変わってVIP席にて

 

周りの視線が痛い。マジで痛い。お偉いさんが向けてくる視線がマジで痛い。

 

「えへへ」

 

「……ふふっ」

 

理由は簡単、試合を待っている俺の両サイドからシルヴィとオーフェリアが思い切り甘えてくるからだ。

 

両腕に抱きついてきてお菓子を食べさせてきたりととにかく甘えてくる。それでありながら特に過激な事をしてこないからタチが悪い。過激な事をしてくれたら他の人が注意してくれるものの……

 

今日何度目かわからないため息を吐いていると実況のアナウンスと共に第一試合に出る4人が出てきた。

 

「おい。試合が始まるから離してく「「却下。くっついていても見れるわ(よ)」」……さいですか」

 

頼んだ結果一蹴される。やはり2人には逆らえないな……

 

『聞くがよい!今回も貴君らには1分の猶予をくれてやろう。我輩たちはその間、決して貴君らに攻撃を行う事はない。存分に仕掛けてくるがよい!』

 

半ば諦めている中、擬形体のアルディという方がいつも通り1分攻撃をしない宣言をしてくる。この宣言は毎回しているがアルディに攻撃を当てた選手は1人もいない。

 

「相変わらず傲慢な擬形体だな……つーかシルヴィだったらどう戦う?」

 

「私?うーん。相手は機械だからリズムは決まってるから色々なリズムで相手を誘導しながら攻撃をするかな。多分刀藤さんなら出来ると思うよ」

 

機械の反応速度を上回るのは不可能だから相手を誘導する……まあ刀藤なら可能だろう。

 

「八幡君は?」

 

「俺?俺なら上下前後左右全ての方向からの同時に一斉攻撃だな。奴の能力は多分に多方向からの同時攻撃を対処するのには向いてないと思う」

 

そういう意味じゃ俺の能力とは相性が良いとは言えないだろう。

 

「オーフェリアは……力づくだろうな」

 

「……そうね」

 

多分オーフェリアが拳に星辰力を込めてパンチするだけでアルディの体は防御障壁ごとバラバラになるだろう。簡単に想像が出来る。改めて隣で俺に抱きついている少女が規格外である事がわかってしまう。

 

そうこうしていると……

 

『鳳凰星武祭準決勝第一試合、試合開始!』

 

アナウンスが流れて試合が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『試合終了!勝者、エルネスタ・キューネ&カミラ・パレート』

 

アナウンスが流れ歓声が上がる。これで準決勝第一試合が終了した。

 

「まさか合体するとは……」

 

試合序盤は刀藤がアルディを抑え、沙々宮が凄い煌式武装でリムシィを追い詰めたが、リムシィのパーツがアルディに追加され合体してからは逆転した。

 

「アレは驚いたよね」

 

シルヴィも感心したような声を出してくる。

 

「まあ天霧達は合体を見れたんだしラッキーだな。初見でアレを対処するのは厳しいだろうし」

 

アレは強力だが合体するまでの隙がデカい。合体する前にどちらかを倒せば有利になるだろう。と言ってもあのエルネスタが対策をしてないとは思えないが……

 

そう思っていると腹が鳴った。昼食にはまだ早いが腹が減った。

 

「すまん。少し小腹が空いたから何か買ってくるから離れてくれ」

 

腕に抱きついている2人に話しかける。流石に理由があったら離れてくれるだろう。

 

「わかった。ごめんね」

 

「……早く帰ってきて」

 

2人はそう言って腕を離してくる。

 

「わかった。じゃあまた」

 

2人にそう言ってVIP席を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ったく……準決勝となると売店も混んでるな」

 

売店の混雑ぶりに辟易しながら売店から出る。手にはお菓子とマッ缶を持って。

 

「早く帰らないとあいつらが怒りそうだし急ぐか」

 

頭の中でシルヴィとオーフェリアがジト目で見てくるのをイメージしながら歩き出そうとした時だった。

 

 

いきなり携帯端末が鳴り出したのでポケットから出すとエンフィールドからだった。何か嫌な予感がするな。

 

場合によっては人に聞かせられない話になるので俺は人気のない場所に移動して、更に念を込めて影の中に潜り電話に出る。

 

空間ウィンドウを開くとエンフィールドの顔が、背後には天霧達が映っていた。エンフィールドの顔は真剣だ。明らかに厄介事だな。

 

「どうしたエンフィールド。その顔からして面倒事か?」

 

俺が尋ねるとエンフィールドは頷く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『はい。比企谷君の予想通りフローラが拉致されました』

 

本当に面倒事だなおい。

 

「拉致したのはディルクか?」

 

『そうですね。犯人は『黒炉の魔剣』に対して緊急凍結処理をしろと要求しましたので』

 

うん、それ絶対にディルクだ。他に考えにくい。

 

しかし俺は落ち着いている。しっかり対策をしてあるからだ。

 

目を瞑って自身の星辰力を探る。

 

……良し、反応は2つ。1つはオーフェリア、もう1つはシリウスドームから離れているが、これがフローラだろう。場所も把握した。

 

「問題ない。既に場所も把握した」

 

『本当か?!』

 

俺がそう返すとリースフェルトがエンフィールドを押し退けて詰め寄ってくる。いきなりは止めろ!ビビるからな!

 

「ああ。エンフィールドとは事前に仕込みをしといた。んじゃ今から助けに行くわ」

 

『私も行くぞ!』

 

「却下だ。てめぇは準決勝があるだろうが。自分の戦いに集中しろ」

 

『そうですね。あちらの要求には棄権するなという条件が入っている以上綾斗とユリスは動かない方がいいでしょう』

 

『……わかった』

 

俺とエンフィールドが反対するとリースフェルトは渋々だが頷く。全く……前から思ったがリースフェルトって熱くなると周りが見えなくなるなおい。

 

『……なら私が代わりに行く』

 

すると沙々宮が画面に割り込みながらそう言ってくる。そして刀藤も入ってきて

 

『私も行きます!』

 

そう言ってくる。

 

「いやいや、お前ら準決勝でかなりの大ダメージを受け『足手まといになるつもりはない』………いいんだな?」

 

途中で割り込んでくる沙々宮に確認を取るとコクリと頷く。姿はボロボロだが強い意志を感じる。こりゃ諦めないだろうな。

 

「わかったわかった。んじゃてめぇと刀藤は参加でいいんだな?」

 

『そう』

 

『は、はい!』

 

「……わかった。エンフィールドはどうすんだ?」

 

『私ですか?私は作戦上それは無理です』

 

「作戦だ?どんな作戦だ?」

 

『話すと長くなるので後で刀藤さん達に聞いてください』

 

「わかった。んじゃ今から15分後にシリウスドーム正面ゲートのトイレの横集合な」

 

『……わかった』

 

『はい!』

 

「良し。んじゃ切るぞ」

 

『比企谷!フローラを頼む!』

 

電話を切ろうとするとリースフェルトが頭を下げてくる。

 

「……安心しろ。絶対に助け出す」

 

俺自身の目的の為にも絶対にフローラを助けないといけない。目的を果たす為なら何でもやってやる。

 

強く決心しながら電話を切る。さて……集合場所に行くか。

 

俺はオーフェリアとシルヴィの端末に『済まん。急用が入ったから帰る。試合は俺抜きで見てくれ』とメールを送りながら集合場所のトイレに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻……

 

「えっ?!何これ?!」

 

「……どういう事?」

 

「オーフェリアさんにも来たの?」

 

「……ええ。でも八幡に急用ってあるのかしら?」

 

「うーん。八幡君生徒会や部活に入ってないから考えにくいね」

 

「……まさか……ナンパ?」

 

「え?!そ、そんなの嫌だよ!」

 

「私も嫌よ……」

 

「もしも本当にナンパだったら……」

 

「………八幡」

 

VIP席にいるお偉いさん達は中央にいるドス黒いオーラを出している2人にビビりまくっていた。

 


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