学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

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比企谷八幡の2人の恋人の愛は重い

「んじゃ失礼します」

 

造形教室から出ると外は真っ暗になっていた。もう秋だから夏と違って夕方6時でも凄く暗い。寮に着くのは7時くらいか……

 

(もしかしたら今から治療院に行ったらオーフェリアと会えるかもしれないな)

 

確かオーフェリアは今日も治療院に行く予定だった筈だ。折角だから一緒に帰りたいな。

 

方針を決めた俺は治療院に向かって歩き出した。

 

 

 

歩くこと15分、巨大な治療院が見えてきた。相変わらずデカいな。大抵の傷は学園の医務室で治るから余り行った事がない。

 

さてさて、オーフェリアはいるか?

 

そう思いながら入口の自動ドアが開くので中に入るとそこには白い髪と薔薇色の髪を持つ美しい少女が2人いた。

 

「……あ、八幡」

 

「ん?ああ、比企谷か。直で会うのは久しぶりだな」

 

治療院のロビーにはオーフェリアとリースフェルトがいて俺がいる方に歩いてきた。

 

「久しぶりだなリースフェルト。今日はオーフェリアと一緒に治療院に行ったのか?」

 

「いや、駅で偶然会ったから同伴しただけだ。お前はオーフェリアを迎えに来たのか?」

 

「まあそんな所だ。俺も少し治療院の近くに用事があったんでな」

 

「……それってシルヴィアのプレゼントに関する事?」

 

「ああ。とりあえず方針は決まったな」

 

造形教室に行って俺が作りたい物は決まったしな。

 

「ところで比企谷、オーフェリアから聞いたのだが……お前は本当にオーフェリアとシルヴィア・リューネハイムの2人と付き合っているのか?」

 

……ああ。まあ普通に気になるよな。

 

「まあ付き合っている。真面目っぽいお前からすれば不誠実かもしれんが譲る気はないぞ?」

 

オーフェリアとシルヴィは、どちらか1人を選べない優柔不断な俺を許してくれて選ばなくてもいいという選択肢を与えてくれたんだ。その恩に報いる為にも2人を永遠に、平等に愛すると誓ったんだ。こればかりは揺らぐ事はないだろう。

 

「……意志は固そうだな。それならそれで文句は言わないが……もしもオーフェリアを泣かしたら私がお前を丸焼きにするからな」

 

強い視線で俺を見てくるので俺も睨み返す。

 

「無意味な仮定だな。俺はオーフェリアにしろシルヴィにしろ絶対に悲しませるつもりはない」

 

2人の悲しい顔は見ていると胸が張り裂けそうに痛くなる。もう2度とあんな思いは……!

 

暫くの間睨み合っているとリースフェルトが息を吐く。

 

「わかった。お前を信じるからオーフェリアを頼むぞ」

 

「わかってる。必ず幸せにしてみせる」

 

「ならいい。オーフェリア、私はもう帰るがまたな」

 

「……ええ。またね」

 

「おいリースフェルト、駅まで送るぞ」

 

「いや大丈夫だ。これから綾斗と待ち合わせをしている」

 

「そうか、またな」

 

挨拶を交わすとリースフェルトは会釈をして治療院から出て行った。リースフェルトが見えなくなるとオーフェリアが話しかけてくる。

 

「……それで八幡、シルヴィアにあげるプレゼントは決めたの?」

 

「まあな。とりあえず明日からは放課後造形教室に行くから遅くなるから先に食べててくれ」

 

「……ううん。私は好きな人と一緒に食べたいから八幡を待つわ。多分シルヴィアも」

 

そう言ってくれるのは本当に嬉しいがハッキリと言うな。マジで顔が熱くなる。

 

「……ちっ。好きにしろ」

 

「あ、待って八幡」

 

俺はオーフェリアから逃げるように顔を背けて治療院を出るとオーフェリアもそれを追って治療院を出た。いつかはオーフェリアやシルヴィの言動に対して恥ずかしくならないようにしたいな。

 

そう思いながら駅に向かって歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて八幡君、女の子にデレデレした理由を聞いていいかな?」

 

目の前には笑顔(目は笑っていない)シルヴィがドス黒いオーラを出しながら腕組みをしていて、俺は正座をしてシルヴィを見上げている。

 

家に帰ってくるなりシルヴィは『女の子にデレデレしたの?』と詰め寄ってきて認めたら寝室に連れていき正座を要求してきた。ちなみにオーフェリアはリビングでテレビを見ているが助けて欲しい。

 

「実はだな……」

 

俺は昼休みにオーフェリアに言った事を再び話した。それを聞いたシルヴィは暫くの間唸ってからため息を吐く。

 

「うーん。元々私が子供が欲しいって言ったのが原因だし今回は許すよ」

 

「え?いいのか」

 

「うん。……でも今後は余り私とオーフェリアさん以外の女の子にデレデレしないでね?」

 

不安そうな表情をしながら俺を見てくる。

 

「わかってる。オーフェリアにも言ったが俺が愛するのはお前とオーフェリアだけだ」

 

「なら良し!じゃあ正座をしなくていいよ。ご飯にしよ?」

 

シルヴィはそう言って手を出して俺を立ち上がらせてくる。普段正座しないからよろけてしまう。

 

「ごめんね。少し正座させ過ぎたみたいだね」

 

「いや、元はと言えば俺が悪いんだから気にするな。それより行こうぜ」

 

腹が減って仕方がない。早く食いたい。

 

「八幡君」

 

寝室を出ようとすると後ろからシルヴィに話しかけられる。何だよいきなり?

 

疑問に思いながら振り向いた瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちゅっ……

 

振り向きざまにいきなりシルヴィに唇を奪われた。俺の唇にシルヴィの柔らかい唇の感触が訪れる。

 

(………?!)

 

いきなりのシルヴィの行動に目を見開くとシルヴィが艶のある目をしながら蠱惑的な笑みを見せ、直ぐに耳打ちをしてくる。

 

 

「今回は許すけど……次はこんな事にならないよう私の事以外考えられないようにしてあげるからね♡……んっ」

 

シルヴィはそう言ってもう一度キスをすると寝室を後にしてリビングに向かっていった。

 

対する俺はシルヴィのいきなりの行動に顔が熱くなり動きが鈍くなりながら寝室を後にしてリビングに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで?オーフェリアさんは八幡君を許したの?」

 

シルヴィは夕食を食べながらオーフェリアにそう聞いてくる。俺はというとさっきのシルヴィのキスによってマトモに喋れないので聞き手に回っている。さっきから一言も言っていないが勘弁して欲しい。恥ずかしくて死んでしまう。

 

「……ええ。昼休みに八幡と242回キスをして許したわ」

 

「ぶほっ!げほっ、ごほっ!」

 

オーフェリアの爆弾発言に飲んでいた味噌汁を吹き出してしまった。オーフェリアの馬鹿野郎!

 

当の本人はキョトンとした表情で俺を見ている。

 

「……八幡?大丈夫?」

 

「はぁ…はぁ…誰の所為だ!いきなり変な事を言ってんじゃねぇよ!つーか数えてたのかよ?!」

 

よく数えたな!俺は30回を超えてからは数えてなかったぞ!!

 

そう思っていると……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……当然よ。八幡としたキスは全て覚えているわ。シルヴィアもそうでしょう?」

 

「うん。いつ何回したかハッキリと覚えているよ」

 

2人はさも当然のようにそう言ってくる。マジかよ?!

 

「え?ちょっと待って。という事はお前らさ、付き合ってから約2ヶ月弱にしたキスの回数も覚えているの?」

 

まさかとは思うが……こいつらなら覚えていそうだ。一応の意味で確認するも……

 

「「もちろん」」

 

2人は当たり前のように頷く。マジですか?

 

「ちなみに……何回したんだ?」

 

好奇心が芽生えてしまいつい聞いてみた。否、聞いてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えーっと……私は9632回だね。オーフェリアさんは?」

 

「……私は13569回よ」

 

聞いた瞬間、頭がクラクラし始めた。マジか……沢山キスをしたのは知っていたがここまでとは……

 

「あー、まあ私は仕事が多いからオーフェリアさんより少ないかぁ…….」

 

「……別に気にしなくても大丈夫よ。八幡はキスの回数で私達の優劣をつける筈がないわ。それにシルヴィアはその代わりに八幡と一緒にお風呂に入っているじゃない」

 

2人が何か言っているが殆ど耳に入らない。

 

そんな中俺が思った事は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(こいつらの愛重いな!俺は2人の愛に応える事が出来るのか?!)

 

ただそれだけだった。


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