ゴッドイーター、改め死神   作:ユウレスカ

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お久しぶりです

久しぶり過ぎてキャラが違うかもしれません


ep.22「数十年」

 ガタン、と大きな音。ギルバートが思わずと言った様子で立ち上がり、椅子が動いた音だ。

「……本気なんですか、ビャクヤさん」

 彼の目の前に座っているのは、同じ隊に所属する朽木 白哉。いつも通りのポーカーフェイスだが、その瞳は真剣さを帯びている。

「ああ、本気だ」

 その声色に嘘がないことを感じ取ったのだろう。ギルバートは崩れ落ちるように座り直す。組んだ両手は緊張か、はたまた告げられた話の内容のせいかぷるぷると震え、蟀谷からは冷や汗が垂れている。

 自分以外がこのことを聞いてもこうなっていただろうと、ギルバートは断言できる。なぜなら。

「流魂街の女性を、嫁に迎えたいと」

 四大貴族の、それも後継ぎが俗に言う平民と結婚すると。そんなことを、本人が漏らしたのだから。

 ああ、と再度頷かれ。ギルバートは大きく深呼吸をする。頭の中では思考がせわしなく飛び交っている。第一に浮かんだ感想はただ一つ。

――なんでそれを俺に相談するんですか!

 ただそれだけだった。

 

 

 

――なんか最近朽木くんが悩んでるみたいだから、同じ隊のよしみだしギル、聞いてやってくれない?あ、最初から悩みを聞くというスタンスだと彼話さないから注意ね。初めは食事に誘うとか……ってこれじゃデートじゃん!よくある恋愛の攻略法じゃん!道ならぬ道に昔の同僚と同期を誘いかけるなんて……いやだわ私ったら!って痛い海燕先生痛いです頭ぐりぐりしちゃらめぇぇぇぇぇぇ!!

 

 

 

 最近さらに言動に自由さが出てきた井塚をそっと記憶から追い出し、とんでもない事態を知ってしまったギルバートは考える。

 いや、確かに様子がおかしかったから気になっていたのはギルバートも同じだ。だからといって、藪をつついたらこんな大物が出てくるとは思わないじゃないか。

 どうすればいいのか、どう答えるべきかを考えているギルバートを他所に、白哉は静かに続ける。

「やはり、兄も反対するか?」

 そう呟く彼は恐らく、親戚筋に反対されているのだろう。体裁を考えるなら当然の意見である。彼の父である蒼純は既に亡く、後継ぎは白哉のみ。他の貴族も彼に娘を引き合わせようと考えていたに違いない。

 死後の世界であっても貴族関係は嫌なものである。自分達が生きていた時代でもそういうのがあったというのは、特権階級だったエミールやエリナから聞いていた。

 事情を鑑みれば反対するのが一番無難だろうが。

「覚悟は、あるんですよね」

 立場の違いから、愛する人同士が離れ離れになるなんて、嫌だと思った。

 真面目一辺倒な性格だと思われていたからか瞠目する白哉に、ギルバートは苦笑する。

「その選択をして、後悔しないのなら……先の未来で後悔するより、俺はいいと思いますが」

 ただ、そのぶん様々な苦労が白哉と、その恋人に襲い掛かるのだろう。周囲からの心無い声はきっと、彼らを苦しめるし、同時に未だ存命の銀嶺は庇わないだろう。けれど、離れてしまえばきっと、彼はずっと後悔する。なら今すべきは、彼の背中を押すことだ。

 その場でできる最善を尽くす。それは何も戦場に限ったことではないのだから。

 

 

 

 

「まぁ、そんな感じでしたね。ビャクヤさんの悩み事は」

「わー思ってた以上に重い悩みじゃん。私じゃなくてよかったよ」

「ミクイさん……」

 数日後、ギルバートは井塚に報告を兼ねて一杯誘っていた。そこで出てきたリアクションがこれである。

 ごめんごめん、と軽く謝罪する彼女も今では四席にまで来ている。三席に収まってもいいくらいの実績は積んできているのだが、始解の形態が形態なだけあって未だ浅打のままだと誤解されており、それ以上の昇進が出来ないでいた。(寧ろほぼ浅打のままここまで昇れたのも異例である)

 そうでなくとも、いくらか前に海燕と結婚した志波都三席や志波海燕副隊長が上にいる。彼女自身もこれ以上は昇進したくないようだ。

 ギルバートもまた副隊長となった白哉の後を継ぐように三席に収まっており、順当にいけば白哉が隊長になった暁には副隊長になるのではないかと目されていた。

「でもさ、ほんと私じゃなくてよかったと思うよ?恋愛とか面倒だしさ」

「そうですか」

 いまいち納得のいかない答えにモヤモヤしながら、ギルバートは盃を煽る。恋愛なんて自分も苦手である。生前、先輩の婚約者を慕っていたこともあったがそれとこれとは別。

 恋愛の一つだってしたことがない。無論どう……これ以上はやめておこう。

 だが内心で驚いていた。井塚が恋愛事が苦手だったとは。

「てっきり、ミクイさんはソーマさんが好きだったのかと」

「ぶふぅっ!?」

 久しぶりに聞いた名前に井塚が噴き出す。

「な、何言ってるのさ!」

「いやだって、“前”の時もコウタさん達から二人の距離の近さは聞いてましたし、確か賭けをしてるんでしたよね、二人」

「うぐ」

 最期の日のことを引き合いに出されて答えに窮する。誤魔化すように井塚は盃を煽った。

「……ただのちっぽけな賭けだよ」

――生きていたなら、また会おう

 ありふれた、そんなちっぽけな賭け事。絶望的な状況に立ち向かうために作り上げた、口先だけの希望。

 彼は、彼らはいるのだろうか。今まで尸魂界でも、現世でも何度か任務にあたったことがあるが、未だに誰も見つけることが出来ないでいた。

「それに、ソーマと私はそういう関係じゃないし」

 恋愛感情があったかと言われたら否と答えられる。傍目から見ればそのくらいの距離感だったのは否定しないが、お互いに相棒や戦友としてしかみていなかった。

「そうっすか」

 その言葉で会話が途切れ、辺りの賑やかさが聞こえるようになる。視界に入る右手首に巻かれた包帯がふと煩わしく思えた。

 

 

 

 

 

――それから数ヶ月後、朽木 白哉が流魂街の女性、緋真を嫁に迎えたという一報が尸魂界を駆け巡った

 

 

 

 

 業務終了の帰り、何やらやけに疲れた様子の白哉を見つけ、井塚は駆け寄った。

「お疲れ様です、朽木副隊長。そして結婚おめでとう朽木くん」

「ああ兄か、久しいな」

 心なしか明るくなった声色に、井塚は苦笑する。

 親族を説得し無事に例の女性、緋真を嫁に迎えたはいいものの、やはり心無い声は後を絶たないようだ。白哉自身に聞こえてくるならまだしも、そういったものは得てして隠れてされるものだから質が悪い。

 緋真自身が病弱であることも相まって、次期当主の妻としてやっていけるのかと揶揄されているのを小耳に挟んだこともあった。

 このままでは白哉自身の信も危ういだろうからか、近々当主交代が行われるとも。

 そういった事情が重なって、今の様子に繋がっているのだろうか。

「遅くなったけど、これ結婚祝い。奥方と二人で食べて」

「これは……例の店の団子か」

「そそ、限定十組の“伝説の夫婦団子”」

「済まぬ、ありがとう」

「これくらい当然だよ」

 白夜の帰る方向は貴族街だが、途中までは同じ道筋の為一緒に歩く。

「そういえば、兄はまだ始解を習得できていないのか」

「ぐ、いきなりその話題から始めるの?」

 あははは、と笑いながら浅打――にしか見えない神薙の柄を握る。未だ彼ら二人以外には知られていない自身の斬魄刀。ここ数十年での成果はあったにはあったが……それの扱いにも困っているのが現状である。

「最近では“浅打のままで初の副隊長になるのでは”と言われているとか」

「いやいや海燕先生とかがいる限り無理だって」

「他の隊に行く気はないのか?」

 四番隊や十番隊……と候補を挙げていく白哉には悪いが、自分は案外十三番隊が気に入っている。異動する気はないし、第一出世しようとも思っていない。

「私は海燕先生と、浮竹隊長の下で働けたら、それで十分だからねぇ……そう言う君は、大丈夫かい?結構大変そうだけど」

「む」

 その言葉に、白哉はここ数十年余り変わらなくなった表情を顰めた。思っていた以上に大変らしい。

「元より覚悟の上だ。この位乗り越えなければ一緒になった意味がない」

「それもそっか」

 お熱いねぇ。そうぼやく井塚に、白哉からの白い目線が刺さる。だがそうとしか言いようがないのだ。落ち着きが出始め、表情の変化が乏しくなってきた彼が、まさかここまで大胆な行動に出るとは思っていなかった。恋とは偉大なものである。

 二人の間に沈黙が流れる。妙な評判を立てられないようにという井塚の配慮から空けられた距離は、どことなく遠い。だがそれが現在の彼らの立ち位置だった。

「じゃ、私はここで」

「ああ、ではな」

 そう言葉を交わして、背を向ける。真央霊術院から始まったこの友人関係も、もう生前の人生を何度か繰り返すくらいには長い年月を重ねてきた。

 だが、それももう潮時だろう。寧ろここまで付き合いが続いたのが奇跡だ。これからは彼に関することはギルバートに任せるか。

 そう考えながら、井塚は帰路へとついた。

 

 

 

 

 

 長年住んでいたこともあり、彼女の城にもなっている自室。

 一見殺風景なほどに生活感のないその一角。唯一と言ってもいい家具の、本棚に入っている一冊を手に取った。

 壁を背もたれに座り込み、筆を片手にその本を開く。中身は一見、ありふれた日記だ。

 だがそれは暗号化された、彼女がこの数十年必死にかき集めた藍染に関する情報。合法的に集められるものよりも、ほとんどが非合法すれすれのものばかり。だがそうやって集めてもまだ一冊にも満たないわずかなものだった。

 表向きの評判はすこぶるいい。未だに総隊長や四十六室を欺いているのだから恐ろしい。本当に白なのではないかという思いが過ったことも片手では足りない。

 だが、斬魄刀の能力を偽っていること――これは井塚も同じだが――、この事実が、そうだと頷くのを止めている。

 今回の調査で得られたのは、花枯の一角での出来事。噂程度のもので、確証はいつも通り無い。何せ例の事件よりももっと前の出来事だ。調べが付いたのだって奇跡である。

「はぁ……」

 ほんの少しの文を書いて、本を閉じる。“調査”を行う時はかなりの霊力を使うから、きついなんてものではない。これでもだいぶ効率は良くなってきているのだから泣きたくなる。

 まだようやく尻尾の先を見つけられた、そんな状況。

 次に彼が行動を起こすその時までに、つかみ取れることを願って、井塚は眠りについた。




ダイジェスト形式みたいになった

緋真さんとの関りはできないかなぁ

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