ep.0
「人間、いつ死ぬかってわからないものじゃん?」
「……ああ、そうだな。いつ死ぬか、なんて分からない」
「それでもって、どう死ぬのかも分からない」
「当たり前のことだな」
「死後の世界、ってあると思う?」
「突然だな」
「いいからいいから!これが最期なんだから、こういう時位素直に話しておくれよ」
「さぁな、死んだら分かるだろ」
「まったく、そういう夢もくそもないこと、何で言っちゃうかな」
「今がその
「……」
「……」
「……終わっちゃったねぇ」
「ああ」
「ブラッドの―—極致化技術開発局の特殊部隊の皆も、頑張っただろうにねぇ」
「そうだな」
「奇跡は2度は起きないんだねぇ」
「……」
「……シオのこと、置いてっちゃうね」
「……」
「あの子、1人で寂しくないかな。約束、破ることになっちゃったし」
「――あいつなら、うまくやっていけるさ」
「でも、独りぼっちだ」
「……そうだな」
「いやだなぁ。あの子、きっと今ないてるよ」
「もう、月も見えないけどな」
「全部、覆われちゃったからね」
「クラウディウス……だったか、いつになったら終わらせてくれるんだ」
「あれ、ソーマったら死にたがりに転向?あと、今回の特異点はヴィスコンティさんじゃなかったっけ」
「細かいのは知らん。あと死にたがりになった覚えはない」
「それもそうだね。未だに手も休めてないし」
「それをお前が言うか」
「だって人間生きてたら何とかなる、ってリンドウさんが言ってたもん」
「さっき俺が《死ぬとき》っつったら黙ったくせに、まだ戦うのか」
「ソーマ、それ君にも言えるやつ」
「……」
「いやぁ、でもさぁ?死に方くらい自分で決めたいじゃん」
「……」
「だから、さ」
「――全力で、足掻きたいのさ」
「いつも通りの馬鹿だな、お前は」
「そんなのに律儀に付き合ってるソーマも馬鹿だね。やーいやーい」
「はったおすぞ」
「だが断る」
「はぁ……」
「ま、恐らくばっかみたいな奇跡が起きない限り、ハッピーエンドは来ないだろうし……最後に1つ、賭けをしない?」
「こんな時にか」
「こんな時だからさ」
「……聞くだけ聞いてやる」
「ふふん、思い切り笑え!それは―—」
「……やっぱり馬鹿だなお前」
「何さ!死後の世界があったら、未来があるなら十二分に有りうる賭けだろ!?」
「確かにそうかもな。無かったら意味もないが」
「うっさいなーもう!んで、賭けにのるの?乗らないの?」
「どうせ返事はイェスしか受け付けてないだろ……乗った」
「待ってました!んじゃ私はソーマに賭ける」
「そこは自分じゃないのか」
「なんだかんだで私、目の前のことにしか集中できないことが多いからさ、ソーマのほうが絶対先に見つけると思う」
「……そうか」
「そうだ!」
「じゃあ、俺はお前に賭ける」
「なんでさ!」
「同じ奴に賭けても意味ないだろ」
「それもそうか」
「……」
「そろそろかなぁ」
「だろうな、だいぶ狭まってきた」
「……あの世があるなら、皆にまた会えるのかな」
「さあな」
「いつまでたってもドライだな貴様」
「うるさい……いくぞ」
「了解、賭けのこと、忘れないでよ」
「たぶん、な」
「またね、ソーマ・シックザール」
「またな、ミクイ・イツカ」
「――さて、勝敗はどっちになるんだろ」