"蒼き鋼"の冒険譚   作:蒼風霧花

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どもども(*^^*)
蒼風です(*´∀`)
へたっぴ初心者でのんびり更新ですw
誤字、脱字等ありましたら遠慮なく!(*^^*)
※少々改変があります。お許しくださいm(__)m
それでもよければどうぞ(*´∀`)


新たな旅立ち

横須賀海洋技術総合学院―理事長室前

 

「ここだったよな」

群像は梨子に問いかける。

「そうだよ?忘れちゃった?」

「いや、忘れちゃいないが、少し不安だった」

梨子は素直に驚いた。

「群像が不安がるって…珍しい」

「珍しいってなんだ」

群像の呆れ声が聞こえる。

「て言うか群像、入らないの?」

「わかったからお前は教室へ行け。早朝の部活動があるんだろう?」

群像は時計を見やる。

時計の針は午前5時を差していた。

「あ、本当だ。じゃあ私行くね。理事長によろしくって言っといてね!」

「何のよろしくだ」

ため息をつく。

「成績ー!」

遠くなった声が群像の耳に聞こえた。

「お前は成績悪いのか…。きっちり教えてやらないとな」

群像はため息と共に小声で呟く。

一息をつく。

「さて」

理事長室のドアをノックする。

「失礼します、本日より非常勤講師として学院で勤務させていただく、千早群像です。入室よろしいですか?」

群像の凛とした涼やかな声が廊下に響く。

少しの間をおいて返答が扉の内側から聞こえた。

「どうぞ、入室してください」

「はい。失礼します」

群像はドアを開けて入室する。

ドアをそのまま後ろ手で閉める。

「まさか―その格好で来るとはね…」

群像をみて開口一言がこれだった。

「…これが"蒼き鋼"の艦長の正装ですよ」

群像は理事長からの冗談を真面目に返す。

「あら。冗談で言ったのだけれども」

「分かりにくいです」

群像は一蹴した。

「あらあら」

理事長は群像に微笑む。

「とかいうあなたは俺が学院生時代あなたとチーム組んだときと全く変わりませんね。冗談だけは上達してますが」

「冗談だけ、ね…。千早くん、私あなたが学院から居なくなって寂しかったわ…」

「あー、はい」

適当に相槌を打つ。

「もーノリが悪いわね!401のメンタルモデルの子と二年過ごして変わったかと思ったけどそうでもなかったわ!」

「お前は理事長になってもなにも変わらん!」

とうとう群像はキレた。

「あらあら、群像、キレやすくなったわね~」

「うるさい!」

「それくらいで怒らないの。あなたは今まで自分と戦ってきたんでしょ?」

「まぁ…」

「なら大丈夫。きっと教師もできる」

「はいはい。で?俺の担当は?」

首をかしげた。

理事長は書類をだし、群像本人の資料をパラパラとめくっていく。

「…あなたは艦長だったから…戦術科の、梨子のいるクラスを頼みます。あの子、私に似て勉強が得意じゃないの。よろしくね」

「はい。彼女自身も今さっき成績ー!とか叫んでましたし」

「あらあら梨子ったら…」

「でもそれなら教え甲斐がありますね」

「でしょう?」

二人して笑った。

「まぁ、これで話は終わりね。頑張ってちょうだい?」

「はい、頑張ってきます。では、失礼します」

群像は理事長室を出る。

理事長室を出たとき、外からはやたら元気な声が聞こえる。いや、正確には一人の元気な声である。

この声は―

「梨子か」

群像はすぐに答えを見つけた。

外履きでそのまま校庭へ出る。

学校自体が広く、理事長室がある棟が教室よりも少し小高い丘の上にあるため、校庭を見下ろす形になる。

「変わらんな…」

校庭の広さも昔とさほど変わらず、学生が校庭を走る姿も変わらなかった。

彼は近くの柱にもたれ掛かり、練習風景をみていた。

でもそんな彼に後ろから近寄る女性の影。

彼が自分の後ろを警戒していないのは珍しかった。

その隙を突かれたようだ。

「許すまじ!」

この声が響いた瞬間、群像は振り向き、驚愕の表情を見せながらも的確に教科書の角を降り下ろす攻撃を無力化した。

「なにが許すまじだ…お前は」

またも群像は呆れた。

「だって…あなた…」

「何だ」

「裏切り者じゃないの!」

その言葉を聞いた瞬間―

群像の胸はズキズキと痛んだ。

「俺は…裏切り者じゃない…。俺はイオナと、仲間と一緒に人類を救った。なのになぜ、裏切り者扱いにされる?」

「千早群像、私はあなたを許さない」

「俺にはそう言われる筋合いはない!」

群像もとうとう怒りを露にした。

「イオナだってお前に責められる筋合いはない」

「…まぁいいかな。私の名前を呼んでくれたし」

黒髪の女性教師はぼそりと呟く。

群像の耳にはきこえなかった。

「そ、そうね。あなたがこういう誹謗中傷に強い人だって知れて良かったわ。でもあなたを怒らせてしまったのは…私―龍ヶ崎春の失態です。すみません。同僚になるんですよね?」

「はい」

「そうですか。もしかすると―一ヶ月後、本当の私と会えるかもしれません。とにかくよろしくお願いします」

「よろしくお願いします。もしかして出張ですかね?」

春の手には大量の荷物がある。

「ええ、呉海洋技術総合学院へ臨時講師として授業をしに行きます」

「いきなりですね…」

「群像くん、お仕事。これお願いね?」

問答無用とばかりに書類の束を群像に押し付ける。

「だから押し付けんな!」

またもや怒る。

「とにかくよろしくねー」

理事長は足早に去っていく。

それを呆然と見る彼に対し春は一言問う。

「もしかして、理事長とお知り合いで?」

「学院時代の―同級生です」

「あら、同級生!」

「まぁ、変わってませんけどね…」

群像はため息をまたついて、テラスに立つ。

いつの間にか校庭には誰もいなくなっていた。

「さて、私は仕事に戻りますね。お仕事、頑張ってください」

春はペコリと頭を下げて荷物を抱えていった。

そこにただひとり残された群像は。

「俺はどうするかな。まだ時間はあるし、これを終わらせるか」

群像はため息をもう一度こぼし、職員室へ向かっていった。

 

 

横須賀海洋技術総合学院―実技棟屋上

春は寝そべっていた。私服のまま。

「はぁ、群像は全く気づいてくれないし、寂しいなぁ…」

とため息と共にこぼしながらもとの姿へと戻っていく。

銀色の砂が体の表面から剥がれ落ち、銀色の砂だけが足元に落ちる。

変化が収まるとそこに立っていたのは―

「群像、あなたは私の艦長。迎えに来たよ」

青みがかった銀色のロングヘアに、白を基調としたセーラー服、青いライン。胸元にはピンクの大きなリボン。

そう。かつて群像が失ったイオナ本人が春の居たところに立っていた。

 

 

横須賀海洋技術総合学院―職員室

 

群像は自席を探していた。

「ああ、千早先生だね?」

「はい」

「人類を霧から救った英雄がここにいるのか。あー、こほん。僕は諏訪秋人。戦術科の教師だよ」

「俺は千早群像。同じく戦術科教師。だが非常勤だ」

「非常勤かぁ…。でも君は通ってたことあるからわかるかも知れないが、一応忠告な。ここは軍下の学校、昔みたいに自由に行動することは許されないからね」

「分かっていますよ。でも彼女たちのお迎えが来た場合…遠慮なくここを離れますから。俺は非常勤です。学院には俺を引き留める理由はありませんよ?その上での理事長との契約ですから」

「理事長とそういう約束だったのか。あの人なにも言わないから何もわからん!」

「ははは…」

流石の群像も苦笑いを隠せなかった。

この人には素の自分を隠せないとも思った。

「あ、そうだった。自席だよね」

ふと思い出したかのように聞いてくる。

「ええ」

「千早先生の席はここですよ。戦術科の教師は皆ここです。非常勤も関係なく」

「へえ。学院時代職員室にはあまり用は無かったですから知らなかったです」

「知らなかったとは意外だったよ」

「学院生でも用なければ来ませんよ…」

群像の苦笑いに秋人も苦笑する。

群像は秋人と話しながら荷物を自席に置く。

「荷物スッキリしてるね」

「俺の荷物は少ないんで」

「艦長の頃も少なかったのかい?」

「そうですね…、401の艦長室には書籍と艦内備品、俺の服と海図しか無かったですね」

「随分と質素だなぁ」

「当時に比べて今は増えた方です」

「えー…」

「あー、諏訪先生お聞きしたいんですが」

「どうした?」

「これなんですが…」

群像はある一枚の書類を指差す。

「これは…!」

秋人も驚愕を示す。

その書類は群像が今日から担当する教室の生徒一覧であった。

その名簿の中に―

《蒼樹タカオ》の名前があった。

「タカオ…何故学院に…?」

「タカオ。かつて千早先生たちと共闘した艦隊の仲間か…。学院に潜入調査か?」

「潜入調査?」

「霧が紛れ込んであの"第四施設事件"のことを調べようとしてるのかもしれない。それだけは絶対に不味い」

「あぁ…あの"第四施設事件"…」

群像はため息をつく。

「またここでもあの事件に関わることになるとは」

「千早先生、あなたを信じると今回のこれには関わっていないようですが、本当ですか?」

「ええ。イオナが消えてから、連絡が取り合えてませんからね」

「まぁ、今回は接触が無さそうですのでそのまま授業を行います。千早先生、よろしくお願いしますねー」

秋人はとてもいい笑顔を群像に向ける。

その笑顔を向けられた群像は―どんな顔をしていいかわからなかった。

「ええ、はい」

 

午前8時

沢山の学院生が登校してくる。

群像は職員室前の廊下からその様子を眺めている。

その様子をみた春は群像に話しかける。

「千早先生、この光景凄いですよね」

「そうですね。俺も昔この中にいたと思うとちょっと引けますね…」

群像は苦笑いする。

「私もこういうのは苦手です」

春も苦笑いで返す。

「ん…?」

その苦笑いの仕方に見覚えがあった。

「どうしました?」

と首をかしげて聞いてくる。

これにも見覚えがある。

誰がやってた?イオナだ。でも彼女がイオナってことはない。彼女は俺の目の前で本当に消えてしまったのだから。

「あ、私これから授業あるので行きますね。お互い頑張りましょう」

春は去っていった。

 

廊下―

群像の前から去ったあと、廊下の角を曲がり、そこでデータ環を展開する。

そのデータ環の色は白。

グラフィックが投影される。

それをみた春は呟く。

「全く、探知するタイミングが悪いなぁ。私の予想探知時刻より五時間も早い…。人類側の索敵網は無効化してないから捉えてるはずだけど…」

霧の艦隊が持つ、戦術ネットワークにアップロードされた新しい情報。それは…<敵艦隊の出現>とあった。

「タカオ」

概念伝達で呼び出されたタカオは返答する。

【何よ、401】

「あなたにある1つの命令を与えるよ。一ヶ月後に群像を海に連れ出すこと。お願い」

【旗艦命令?】

「そうなる。あなたは今横須賀組の艦隊旗艦超戦艦ヤマトの貴下で…逆らうなら―」

同時に海底に沈めてある超戦艦ヤマトの機関銃の全門を重巡洋艦タカオに向ける。

【…わかったからそれはやめて】

タカオはすぐに白旗をあげた。

「よろしい。なら一ヶ月後に行動を起こして」

【て言うかあんたが動けばいいんじゃないの?】

「不審持たれたからムリ」

【あんたの演技力に問題が…】

額に筋を立てた春は無言で元に戻していた機関銃をまたタカオに向けた。

【わー!ごめんってば!やるからやるから!】

「よろしい。じゃあそろそろ生徒くるから切るね」

【はいはい】

素っ気ない返事が聞こえてきたがスルー。

そのまま概念伝達を別の相手に繋げてしまった。

「コンゴウ…」

【401!?帰ってきていたのか!?なぜ姿を見せない!?】

「えっ!?コンゴウ!?コンゴウなの!?」

【そうだろうが。私以外の誰と勘違いする】

「ごめんなさい、コンゴウ。あなたに会いに行く前に群像を連れ出さなきゃならないから…」

【そうか、お前は何よりも大切な艦長を連れ出すのが一番最初か。友達たる私にはあとなのか!?】

「だからごめんなさい…」

【まぁ、いい。401の無事が分かったことだからな。…401、お前はいつ霧の艦隊に戻るのだ?】

「まだ、分からない」

【そうか。分かったら連絡をしろ】

「うん、分かった」

概念伝達が絶たれる。

「連絡しなかったのは不味かったなぁ」

ぼやきながらも、ゆっくりと教室へ向かっていった。

 

その頃廊下

突然群像のズボンのポケットに入っていた携帯端末がブルブル震える。

「?」

ポケットから携帯端末を取り出す。

その画面に表示された情報を見。

「霧じゃない別の艦隊が捕捉された…?でも、まだ俺には招集命令は来ていないから教師としていろと言うことか。で、一応これは本部からの情報共有か」

「千早先生!そろそろHRです、行きましょう!」

諏訪先生の声が聞こえる。

「はい!」

端末のバックライトを消し、ポケットへ落とし込む。

そして、廊下の先に立つ諏訪先生の方へ走っていく。

 

横須賀海洋技術総合学院―教室

「諏訪先生、おはようございます」

「おはよう」

笑顔で返していく。

だが、あちこちからひそひそ話が聞こえる。

《諏訪先生の後ろにいる人…もしかして千早先輩?》

《でも千早先輩は裏切り者だとか聞いたことあるけど》

《それ確か千早先輩と同級生の人がいってたよね》

「…多分アイツだな…」

「千早先生?どうしました?」

「あー、ひそひそ話が聞こえたもんで。俺の噂だったようですがね」

群像は苦笑いした。

「着きましたよ。…ほら、HR始まるから教室入れ!」

秋人は声を発す。

生徒たちはぞろぞろと担当教室へ入っていく。そして着席する。

「皆さんおはようございます。今日から非常勤講師として、あの霧を相手に戦った千早群像先生が授業を行います。霧のこととかは我々常勤教師より知識や対霧戦術を構築する力を持っています。千早先生、挨拶をお願いします」

隣をみて頷く。

「はい。私は―本日より横須賀海洋技術総合学院非常勤戦術科講師として皆さんに授業をする千早群像です。聞きたいことあればいつでも聞いてくださいね」

ワッ!っと歓声が上がる。

「千早先生!千早先生!霧ってどんな材質から出来ているんですか!?」

生徒たちから質問の嵐。

「千早先生、どうします?」

「俺に振らないで下さいよ…」

「ははは」

「とにかく、今日の私の授業で全部説明しますから、楽しみにしていてくださいね」

「生徒たちが興奮してますね。あれ?梨子さんは…」

「あー、梨子ねー、また理事長にパシられてる」

「またか!」

秋人は頭を抱えた。

「また?」

「ここ最近理事長にパシられてるようで。そのぶんの単位は与えてるようですけど、彼女のためになりませんよ」

「そりゃあ。この学院に所属している以上、軍関係に入るのは決定してるんですから、それをさせないとは…それほど理事長は軍に梨子を渡したくないのか」

「…その通りよ、群像くん。私は梨子にここの理事長を継いで欲しいのよ。だから軍部に渡したくないの」

「理事長…」

「わかりました。でもそれは理事長の意見。梨子さん本人の意見は聞いたのですか?」

秋人は追及する。

「まだ聞いてないわ」

「それでは、親の言いなりです!子供にも人格があります。自分の人生を選ぶ権利があります。あなたはこれでも教育に関わるもの。それなりの節度を持ってください!」

この事に関してだけは理事長と教師の立場が逆転していた。

「とにかく俺は、梨子を探してきます。授業はお願いします!」

「わ、分かった…!」

秋人は少々ビックリした顔をしながらもうなずいた。

 

群像は教室を抜け、学院の廊下に出る。左右を見回し、校門のある右へ走る。

それを見る、春の姿があった。

「予定より断然早いけど…群像を阻んで!」

一瞬で指令を発する。

その指令を受けてタカオが教室を飛び出す。

「止まりなさい、千早群像」

走っていた群像は足を止め振り返る。

「霧の重巡洋艦タカオ。何故貴艦がここにいる?」

「総旗艦からの命令よ」

「命令…なんと言う命令だ?」

「それは…あなたであっても言えないわ。総旗艦との約束だもの」

「総旗艦との約束か」

「で、総旗艦、あんたの命令通り千早群像を阻んだわよ?」

「ありがとうタカオ。あなたは下がっていて」

「分かったわ」

タカオは無言で下がる。

「千早先生…いえ、群像」

群像は振り返る。振り返った先にいたのは、春だった。

「…!?春先生?春先生はこれから授業では?」

「ねぇ、群像。"イオナ"が戻ってきてると信じてる?」

「何を唐突に…!」

「タカオ、話していいよ」

群像の向ける視線を避けながら話し始める。

「401は帰ってきているわ。正しい彼女として」

「イオナが!?なんの音沙汰もなかったが」

後ろから声がかけられる。

「それは出来なかったの。群像のことを探していたら学院の教師になってるって聞いてしまったんだもの…」

「…それは」

タカオから春の声に変わる。

「分かるでしょ?この声。とても懐かしい声。でも群像は振り返れない。振り返ってしまえば、学院の教師ではなくなるから」

「…」

「また裏切者になってしまうんだから…」

「俺たちは裏切り者じゃない」

「でしょ?群像、振り返る覚悟はできた?」

「出来たとも。振り返るぞ」

群像はからだごと振り返る。

「あぁ…!イオナ…!」

群像の視界に映るは、あのかつての姿だった。

「群像、泣きそう…」

「なんか言ってくれよ!俺は、ずっと空しかった。お前がいなくなってからずっと俺は…!」

「もう大丈夫。ずっと一緒に行こう?」

「…あぁ。あの海に…!」

群像はイオナとタカオを伴い学院の外に出た。

 

学院正門前―

 

「梨子を探したい。そのあと俺の最初で最後の授業だ」

「仕方ないなぁ。それが全部終わったら、横須賀からまた出奔ね」

「あぁ」

そして群像のそばにイオナ、タカオ、と分かれ、探すことに決めた。

「タカオ、ここで合流だ」

「了解」

「イオナ、行くぞ」

「うん」

それぞれの方向へ捜索しに走り去っていった。

 

横須賀海岸倉庫―

 

「んと、これとこれだね。なんでこれが必要なんだろう?」

梨子の背後に立つ青年と少女。

「…それは、霧を感知するための装置。何故それがここにあったのかな」

「駆逐艦隊にここの砲撃を許可する。だが、クラインフィールドで隠ぺいしろ」

「了解」

すぐに砲弾が飛んでくる。高い命中率で倉庫は炎に包まれた。

それに驚いた梨子は振り返る。

「…群像!どうして?」

「秋人先生に探してこいと。帰るぞ」

「…なんか、群像雰囲気変わった…」

「?」

「なんでも、ない…」

梨子は的確に指示をこなし、燃え盛る炎の前に立つ群像に少しだけ恐れをなした。

 

正門前―

「タカオ、戻ろう」

「…もう戻っても意味ないんじゃないの?」

「まぁね。私の本性はバレてると思う」

「なら、なぜ?」

「出立前の最後の仕事が残ってる。あなたも最後の授業を受けるべき」

「分かったわよ」

タカオは渋々校内へと戻っていく。

群像はイオナと梨子を伴い教室へ戻ろうとする。

「群像、私は"春"として職員室にいるよ。終わったら声、掛けて?」

「分かった」

イオナはすぐに春の姿へ戻り、職員室へ戻る。

群像はそれを見届けたあと、梨子を連れて教室へ向かう。

ちら、と群像は梨子をみやる。

梨子は少しだけ怯えていた。

自分が信頼していた講師が霧で、ましてや群像の見せたあの艦長として的確な指示、自分にはない実力に怯えていた。

梨子の知る千早群像とはかけ離れていた。

「梨子?どうしたんだ。顔が真っ青だが…。保健室行くか?」

「…ううん、大丈夫。ただ今さっきの炎の恐怖を思い出しちゃっただけだよ」

群像には彼女が必死に霧への恐怖を隠そうとしているのが分かった。それは当然、かつて霧の艦長を務めたことのある群像の前、だからである。

それでも梨子は気丈に振る舞う。それが彼女の取り柄のように。

群像は無理があるとも思った。だが絶対に口には出さない。

「いや、少し休むべきだ」

「だから大丈夫だってば!」

梨子の強気な口調に群像は圧されて説得は諦めた。

「本当に大丈夫なんだろうな?」

「うん、大丈夫!」

「なら俺はお前を信じるからな。体調悪くなったらすぐに言えよ?」

「分かった」

群像は頷いて教室へはいる。

ドアを開けた瞬間、爆音となって耳を叩く拍手。

「な、なんだ?」

「驚かないでよねー。新任の先生はこうやってお迎えするのがこのクラスの掟」

「掟ってなんだよ…」

流石の群像も呆れた。

だがすぐに気持ちを切り替え、教室へと足を踏み入れる。

群像が教壇に立つまでずっと拍手が鳴り響いていた。

梨子はすぐに自席へと移動、着席していた。

「さ、授業を始めようか」

「気を付け、礼!」

「「よろしくお願いします!」」

「よろしくな」

群像は軽く会釈をした。

「じゃあまずは自己紹介だな」

生徒たちは首肯く。

「ちょっと待ってくれ。表示するから」

「表示?なにやるの?」

教室がざわざわとしだす。

そして、黒板に映像が投影される。

「映像!?」

「ああ。…みんな知ってると思うが、俺は千早群像。かつてこの学院に所属し、出奔して蒼き鋼、潜水艦イ401の艦長として指揮を執っていた。今は、横須賀海軍対霧課所属で霧の艦隊とともに行動していた。一昔前、横須賀港に俺たちを追って霧の大戦艦2隻、キリシマ・ハルナが襲撃したのを覚えているかい?…で、この映像はそのときの戦闘の様子だ。口で説明するよりもこちらで説明した方が早いだろう?」

生徒は頷く。

「で俺たちはこれを何とか撃沈して追撃の手が来ないうちに横須賀を離れることを決めたのだが、ある兵器の受け渡しがあった」

「振動弾頭」

「その通りだ。その振動弾頭を受け取るために来たのにこれは酷いだろう?」

また生徒は頷く。

「本来霧は、至上命令とも言えるアドミラリティ・コードの名の下に統制されてきた。その命令は単純明快で、"人類を海から駆逐"、"海洋封鎖"、"外に出ようとする船舶、航空機の撃墜"だ。それらの命令から離れることをアドミラリティ・コードからの逸脱と呼ばれ、たくさんの霧が苦しめられた。でも今は…」

「今は?」

「たくさんの霧のメンタルモデル達が日本社会に混じっている。あれが現実だ。霧は、アドミラリティ・コードからの命令から解き放たれて自身の自由を謳歌している」

一人の青年が手を上げる。

「はい」

「なんだ?」

「千早先生は、結局何を望んでここを去り、霧と出会い、旅をすることに決めたのか、これを知りたいです」

「いいよ、教えよう。俺は、この閉塞した世界に風穴を開けたい、この思いひとつでここを離れた。俺は確かにこの望みを叶えた。でもその先にあるのはまた遥かな高い壁。これを破ることで、霧も、人間も対等になり、同じ立場で話し合うことだって出来ると俺は信じた。それをイオナは叶えてくれた。俺の実力じゃない。皆の願いが奇跡を起こしたんだ。君たちだってそれを起こすだけの力がある。俺はきっと君たちが大人になったとき、君たちの壁になるだろう。でも君たちはそれをきっと乗り越える。柔軟な思考、確かな戦術、もっとも大切な仲間との絆。これを理解したとき君たちは越えられる。どんなに大きな壁だってな」

ここまで群像が語り終えたとき、チャイムが鳴る。

「ここまでか」

「千早先生、授業ありがとうございます。梨子から聞きました。千早先生はまた霧のメンタルモデルとともにここを立つんでしょう?」

「梨子、話したのか?」

「うん」

「仕方ない。皆に言っておく。俺は、今は霧の艦隊の立場の者、いずれ壁になるだろう人だ。大人になった君たちとまた合間見えることを期待している」

群像はそのままドアへと歩み寄り、ノブに手を掛ける。

「梨子、後で倉庫埠頭に来い」

「…え、分かった…」

群像はその言葉だけを残してドアの向こうへといってしまった。

 

 

海洋技術総合学院―教室前廊下

 

「あんな授業の終わりかたで問題はなかったのか?」

「あんな感じでもいいのよ」

理事長がそこに立っていた。

「群像、行くのね?」

「あぁ。決めたことだ」

「あなたは止めたって行く。もう分かってるわ。あなたがそういう人だってことは」

「なら…」

「でも、ここはあなたの母校であって、仕事場。来れるときは顔出して?」

「分かってる」

群像は頷く。そのとなりにはイオナの姿がすでにあった。

「群像、行くよ」

「ああ。ところでタカオは?」

「また捕まってる。倉庫埠頭で待とう」

「分かった。行こう」

群像はイオナを伴い、学院を出た。

 

横須賀・倉庫埠頭―

夕方に群像は黄昏ていた。

夕日を眺め、イオナをみやる。

「群像、そろそろ艦内へ入って」

その言葉と同時に薄く青みがかった紋様を出現させた白い巨艦が海を裂いて浮上する。水しぶきが群像に掛かる。

「分かった。ところでヤマト型として復活したのか。…ん?」

ここで群像は気づく。

自分の端末が長時間震えていたことに。

「すまん、電話だ。…もしもし、千早群像です。…なっ…。はい、はい、了解しました。こちらから霧の艦隊に通達します。はい、わざわざ連絡ありがとうございます。では失礼します」

群像は耳から端末を離し、イオナに声をかける。

「長崎県沖の海域に集団で航行する霧じゃない艦隊が捕捉された。霧の艦隊に警戒するように通達。イオナ、こちらも警戒を怠るな」

「了解。東洋方面艦隊旗艦命令?」

「ああ。頼む」

「海上にいる霧はすぐにアクティブソナーを作動させて。ソナーセンサーによる探知を一層厳とします」

【こちらタカオ、了解】

【コンゴウ貴下、了解】

【ナガト貴下、了解】

「全貴下了解を確認。通達終了」

「ありがとうな」

「あなたの艦として当然」

「はは…」

群像は苦笑いする。

「イオナ、タラップを」

「あ、ごめん。完璧に忘れてた」

すぐにクラインフィールドの即席の階段が作られる。

それを上り、ヤマトに乗艦した。そして3連装の主砲の先の甲板に立ち、横須賀の町を眺める。そこから梨子が走ってくるのを確認した。

「来たか」

そして、群像はそこから声をかける。

「梨子、俺はここだ」

「群像!どうして!?」

「これは本職だ。彼女が戻ってきた以上、ここにいる必要性はない。俺は霧とともにある」

「…私を連れていってくれないの?」

「つれていけない。大切な妹分だから」

「恥ずかしい。でも群像がこの世界を愛していて守りたいのはわかる。だから、私も頑張る。いつか、群像に認められて蒼き鋼の一員になってみせる!」

「その覚悟を胸に刻んで生きていけ。これは君の夢なんだからな」

「うん、じゃあ群像、気を付けて行ってきて」

「ああ、そっちも健康に気を付けろよ?」

別れだと言うのに、軽い挨拶だった。

きっともう一度出会えると信じていた。

そして群像は海軍式の敬礼をした。

梨子もそれにならって敬礼をした。

「イオナ、出航」

「了解」

すぐに艦が後進しだす。

群像は身を翻し、艦橋へと向かった。

 




いかがでしたでしょうか。
とうとう群像が動き出します。次は霧の艦隊。
上手く日本政府と梨子、霧の艦隊をミックスできればいいなぁと思っております。
まぁ、こんな作品でもお気に召してくださる方がいれば作者は嬉しがります。
次も不定期更新、早めの更新目指して頑張りますm(__)m
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