デルトラクエスト短編   作:バタバタ

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この話は、デルトラクエストIIIの「影の門」を読んでいないと理解できません。読んでいても理解できなかったらごめんなさい。


影の門 前編

デルトラ王国ーーーーー北の山脈ーーーー影の門ーー

 

 

 

 

 

 

 

「君だって良く分かってるはずさ、自分がメンヘラだってこと」

 

リーフは、蛇に埋もれた部屋から、北の歌姫の番人を見上げて言った。

 

「うるさい!!!!!わ、私は………、ちょっと一途なだけだもん………」

 

北の歌姫の番人ーーークリステンは即座に切り返した。

だが、動揺しているのは明らかだった。既に、変身が解けて、『仮面の人』から元の人間の姿に戻っている。いくら追い詰めた、と言っても『デルトラのベルト』を着けたデルトラ国王の前で、影の大王の部下が自ら無防備になるのは、正気ならあり得ないことだ。リーフは、さらに決定的な隙を作るべく、剣の向きをジリジリと変えながら、クリステンの気を反らせる言葉を考えようとした。だが、北の歌姫の力をまともに受け、また、激しい怒りに苛まれるリーフは、頭に浮かんだ言葉をそのまま投げつけることしか出来なかった。

 

「知ってるかい、クリステン?我がデルトラ王国も、少し前に、ストーカー規制法を通したんだ」

 

「私は、ストーカーじゃない‼」

 

「ストーカーの法的定義とは、相手の同意なく、待ち伏せたり、家に連れ込んだり「もう黙って!!!!」

 

「だって、あいつが…………、ファドレラが悪いのよ!私を捨てるから………、何で、マリエットなのよ⁉」

 

「そりゃ、君みたいに面倒くさくなくて、包容力があるからだろ」

 

「会ったこともないくせにぃ!!!」

 

「君に足りないものは、ここまでで、良く分かったからね」

 

「うぐぅ…………、何で言い返せないのよ……………」

 

(そろそろか…………?おさげ髪も萎れてるし………)

 

 

リーフは、怒りを通り越して呆れてしまった。こんな女々しい動機で、北の大地に住まう人々を苦しめてきたクリステンがもはや哀れにも思えた。

 

 

(バルダやジャスミン、ファドレラたちは、こんな奴に殺されたのか…………)

 

「ファドレラは、今でもマリエットの心配をしてたぞ!!自分よりもな!!!」

 

「くっ、七年も会わなかったから、まだ飽きてないだけよ!!!」

 

「君の所に来たときには、ファドレラが失踪して2ヶ月が経ってた…………意味はわかるだろ」

 

「うぅ…………ぐすっ………「今だっ!!!!」ふぇっ」

 

クリステンが顔を伏せた瞬間、リーフは、彼女のおさげ髪を掴んで、剣を突き出した。だが、魔法で守られているクリステンには通じない。それでも、リーフは何度も切りつける。

 

「この卑劣漢っ!!「お前には、言われたくない!」」

 

その最中、リーフから逃れようとしていた無数の蛇たちが、一斉にリーフに向かってきた。

 

「な、何っ!?「ふんっ!ざまあみなさい!……あれ?」」

 

 

しかし、蛇たちは、リーフを素通りして、クリステンの髪に取り付き、そのまま逃げて行く。そして、クリステンは、

 

 

「きゃああああああっ!!!わ、私は、蛇嫌いなのにぃ………ひゃっ!…………来ないでぇ………」

 

「何で、そんなトラップにしたんだ……………?」

 

「ご主人様がぁ………、ひゃっ!…………魔力で生み出した毒蛇なら、歌姫の魔力で生きるからっ、!!手入れ要らずって、あぁっ!………うぅ………」

 

「デメリットをちゃんと聞いて無かったんだな………」

 

リーフは、蛇に群がられ、悲鳴をあげるクリステンをただ見ていた。あれだけ噛まれたら、助からないだろう。

 

 

(それよりも、北の歌姫を倒さなければ!!)

 

 

だが、蛇が部屋から出ていくほど、部屋の毒気が増していく。リーフは、朦朧とする意識の中で、

 

(あの蛇まったく役に立ってないじゃないか)

 

と思ったが、それほどに北の歌姫は、強力な存在だった。今は、竜も居ない。どうすることもできない。

 

(ごめん…………、みんな……………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【諦めればそこで終わりだぞ、若き国王よ…………】

 

(すごく格好いいタイミングで来ましたね……………)

 

塔の天井が引き裂かれ、エメラルドの竜が現れた。その緑に輝く腕が伸びてきて、リーフを救い上げた。吹き込んできた風が、無数の毒蛇を吹き飛ばしていった。

 

(ありがとうございます………エメラルドの竜よ)

 

【この貸しは、高いぞ………あのチビを我が縄張りにいれたり、エメラルドを勝手に持ちだしたりしてな】

 

(でも、助けに来てくれたんでしょう?)

 

【ふん…………せいぜい有り難く思うことだな………私は、縄張りの中にいる邪悪を退治しにきただけだがな】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(………………あれ?……………ここは?…………)

 

「あっ!リーフ!やっと起きたの?」

 

「リーフ、お前が、北の歌姫を倒したのか?」

 

バルダとジャスミンは生きていた。聞いてみると、彼らを呑み込んだ壁は、単なるまやかしだったようだ。北の歌姫が倒されたときに魔法が解けたらしい。

 

「マリエットとファドレラも解放されたしな!リーフ、

お前に礼を言いたいらしいぞ」

 

「ああ、わかったよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんなところで、くたばってたんだ………探したよ」

 

「今さら……………何の用?…………もうほっといてくれないかしら………私、疲れたの…………」

 

「そういう訳にはいかないよ………、まだ悲劇のヒロイン気取りのようだし、なおさらだね」

 

あれから、ファドレラとマリエットと話したが、二人はまだクリステンのことを気にしているようだった。リーフとしても、二人には幸せになって貰いたい。そのことを考えながら、ジャスミンとバルダの元に戻る途中で、倒れていたクリステンを見つけて、今に至る。

 

(近くにバルダとジャスミンもいるから大丈夫かな?)

 

「これ以上は、オーバーキルだって思わない………?」

 

「思わないよ、君は、利敵行為、国家反逆罪、監禁罪2件、国王暗殺未遂、衛兵長官暗殺未遂、それから…………「わかったわよ………………もう………」」

 

「なら、良いんだ…………それなら、ファドレラとマリエットのこと、祝福してあげれるよね?」

 

「は?何で、私がそんなこと………………嫌よ!というか話、繋がってないんだけど」

 

「いいや、繋がってるさ………君はあれだけの罪を犯したんだから、最期にそれぐらいはしなきゃ」

 

「元は、と言えば、ファドレラが私を捨てたのが悪いのに………「マリエットは、自分が悪いと思っているみたいだよ」…………………当たり前でしょ?」

 

「あーあ」

 

ジャスミンがため息をついたらしい。バルダもやれやれ、と肩をすくめた。こんなに自己中心的だから、振られたのだろう。天狗になっていた、とベスに言われてたのは、あながち間違いでないのかもしれない。

 

「ファドレラから、先にマリエットに声をかけたらしいよ」

 

「それが、どうしたっていうのよ!?」

 

「それでも、君は自分が全てに置いてマリエットに勝ってる、と言えるのかい?意中の人に声をかけられても、居なくなった姉のために身を引こうとした、マリエットに」

 

「うっ、うるさいわねっ、て、また話を反らしたでしょっ!私は、ファドレラの話を…………」

 

「確かに、ファドレラも良くないね「ほら、そうでしょ!?」」

 

「でも、君は、ファドレラの心を射止める努力をしたのかい?ファドレラの恋人になって、舞い上がって、当然だと思ってた………違うかい?ファドレラが、好きなんじゃなくて………ファドレラをも魅了する自分が好きなだけに見えたんじゃないか?実際、そんな気持ちは無かったのかい?」

 

「ああああぁぁぁぁぁっ、もうっ………恋に恋する年頃の私にそんなこと分かる訳ないでしょっ!?」

 

「そんな理由で、自分の故郷を苦しめていられたのか?まさに、スイーツ(笑)だね」

 

 

良い感じに、クリステンの心がへし折られていく。そろそろ止めないと、本当に発狂してしまうかもしれない。そのまま死なれたら、ファドレラとマリエットは、一生、十字架を背負っていくことになる。リーフは続けた。

 

「でも、北の歌姫が倒されたが、君は結局、ファドレラもマリエットも殺していない…………まだ二人に情が有るんだろう?最期にやり直したくないのか?」

 

「だって、ファドレラのこと…………諦められないし、マリエット殺したら、ファドレラは自殺する、って、言うから…………」

 

「ああ、そう」

 

とことん勝手な女である。妹より男が大事らしい。いっそ止めを指したいくらいではあるが、そういう訳にもいかない。しかも、どんどん顔色が悪くなっている。

 

 

 

「(仕方ない…………)ジャスミン!二人を呼んできてくれ!」

 

「わかったわ、でも、その性悪女を説得できるの?」

 

「……………………最悪の場合は止めを指して、最期の最期で改心なされた、って、言うからさ」

 

「…………………………………わかった」

 

 

ジャスミンが走り去って行く。残された時間は少ない。だが、以外にもクリステンから口を開いた。

 

 

「随分と、好き勝手、言ってくれたわね…………でも、あなたたちの言った通りにしてあげてもいいわよ」

 

「ほぉう、殊勝だな……心変わ「おっさんは、引っ込んでなさい」」

 

 

バルダは、ムッとしたようだが後ろに下がった。代わりに、リーフが尋ねた。

 

「何が望みなんだい?場合によっては、善処してあげるけど」

 

「簡単なことよ…………私を…………、甘やかして」

 

「僕が、ファドレラに似てるからかい?虚しくならないのかな?」

 

「ほら、また、そういうこと言うじゃない…………死に逝く乙女に言う言葉じゃないわよ」

 

「…………わかったよ、ファドレラたちが来るまでだけなら…………」

 

 

何が乙女だ、という言葉を飲み込んで、リーフは、考える。クリステンは、外見だけは、リーフが今まで会ってきた女性たちの中でも、ずば抜けて美しい。初めて会ったときは、敬語が似合う、年上の魅力を全て備えたすばらしいメイドに見えた。事情を知らなければ、本性を表した後の拗ねたような言葉遣いも意地らしく感じられただろう。掛ける言葉ならいくらでも思い付く。

 

(ジャスミンも、もうすぐ来るだろうし…………急がないと…………)

 

 

 

 

 

 

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