九死一生を得たら魔法少女になりました   作:夜祢亜

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九死一生を得たので部活を作りました

そして、時は過ぎ……

 

「ねぇ、かんちゃん。部活の名前決まった?」

「(いまは、それどころじゃない……)」

 

寸での所で魔獣の光線を躱し、背後現れた別の魔獣を殴る。

 

「出来るだけ、分かりにくいモノがいいよね…ティナは案とかある?」

「ハッキリとは言えないけど、オカルト研究会じゃダメなの?」

「(……)」

 

さっきから、よく言っているけども……今はそんな談笑してる暇は僕にはない。

何故なら、周りを魔獣に囲まれているからだ。

 

「って言うか、二人とも仕事してよ!!」

「ごめんごめん、うーちゃんの護衛って楽だからさ」

「私はちゃんとやってるよ、ほら」

 

丘の上ここから 2km以上離れた位置から緑の閃光が魔獣の額を貫く。

 

「ティナ、魔法ってドイツ語でなんて言うの?」

Zauber(ツオヴァ)って、なんでドイツ語?」

「かっこいいかなぁーっと」

 

続けて2射3射と、銃を撃つ……そのどれもが素早く動く魔獣の額目掛けて放たれる。

 

「狙井さんは凄いね。」

「伊達に射撃日本一じゃないからね」

 

なんか、嬉しそうだ。

この日僕らは、3時間余りで30体程の魔獣を討伐した。

役割を決めて行動すると言うのはこれが初めてでなんと言えばいいのか……心強い印象を感じたのだった。

 

~数日後~

 

「神流木さん、やつれてるけど大丈夫?」

「……へいき、へいき。何ともないよ」

 

ここの所僕は、昼は授業、夜は仕事で休める日がなく身体、精神共にボロボロに成りつつあった。

 

「神ちゃんは、気を負い過ぎよ。」

「ティ~ナァ」

 

地獄から、響かせる様な声で威圧すると彼女は少し跳ね数歩後退した。

 

「神ちゃん、取り敢えず昼休み。いつもの所ね」

「分かったよ」

 

渋々、ティナの言伝を聞いて昼休み部室へ赴く。

 

「ティナ、近頃手を抜いていません?」

「えぇ、ちゃんとしてるわよ」

「……」

 

その視線の先、机に突っ伏している僕がいた。

 

「しんでるわね、神ちゃん」

「仕方ありません。この所、毎晩の様に狩りに出かけているので」

「狙井さん達はよく寝ずに、生活できますよね。僕は無理です。」

 

ティナや狙井さんは一度、目を合わせるとポツリと言った。

 

「神流木さん(かんちゃん)、ちゃんと魔法使ってる?」

「はぁ??」

『やぁ、僕を呼んだかい?』

 

開けたはずのない窓の所に現れた白い上司の両耳を片手で掴み、勢い良く振り回した。

 

 

~数分後~

 

『うぇっぷ。君の性でグリーフストーンを吐きそうじゃないか』

「誰かさんの伝達ミスだと思うんだけど」と、ティナが言う。

「知らない」

 

と僕はそっぽを向き、狙井さんから疲労初期の魔法を教えてもらい自分にかける。

 

「ふぅ~、魔法って便利だね」

「いいままで、身体強化の魔法のみで戦ってきたことに、私はびっくりよ」

『所でボクに用事があったんだよね?』

「それなんだけど……」

 

狙井さんは、キューベーにこれからの事を相談した。

 

『ふむ、世間には隠れ、狩りをやっていく方法か……そもそも、魔法少女は群れ(チーム)で行動するのは珍しからね』

「魔法少女の先輩とかいらっしゃらないの?」

『いなくはないが、隣町だね。これは、ボクの提案なんだが……』

「?」

『人間には対価を得ずに活動を行うボランティア部と言う組織と

魔法や魔術等を研鑽するオカルト部なんて組織がある。

ボクが提案したいのはその二つの活動を一つ組織にしてしまえばいいってことだ。

魔獣は人が関わる所によく現れるからね』

「「「いいね、それ!!」」」

 

僕たちは早速用紙に必要事項を記入し、放課後職員室に行った。

 

「文芸部と天文学部、オカ研をなくして、ボランティア活動をするオカルト研究部ねぇ」

「はっはい」

 

彼女は、科学の教師 七津奈木(ななつなぎ)先生である。

 

「顧問は?」

「まだ……決まってなくて」

 

ふん~、と先生はマグカップに入っている少し冷めたコーヒーを一口含むと、

 

「分かった。私がやるわ」

「あ、え!ありがとうございます」

「任せて、部室も用意出来る様に教頭に掛け合ってみる」

 

先生は内線で少し会話をすると、あっとした顔で、こっちを見た。

 

「部活名は何だっけ」

「“ヤドリギ”です」

 

翌日、先生に呼ばれて部室棟の今は使われていない部屋を使っていくことになった。

 

 

僕たちは、先生に教えてもらった場所に向かった。

部屋は、埃にまみれ重たいカーテンを開くと少し傾いた日光が一気に部屋中に行き渡る。

窓を開けると、春と呼ぶには少し生暖かい風が吹き込んで来た。

 

「始まるんだね」

「頑張るよ、僕」

 

光に反射して煌めく透明なソウルジェムを握りしめながら、三人で空を見上げた。

 

 

 

 


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