月明かりが闇夜を照らす、静まり返った真夜中。
意識のないぐったりとした二人を尻目に僕たちは話を始めた。
『で、何処から話そうか…』
「とりあえず、あの人って?」
『あぁ…』
そう、嫌そうに視線を地に落とすと彼は話始めた。
『簡潔に話そうか…彼は名もなき神の1人で生前は哲学者だった』
「…うん」
『しかし、ある日を境にその学を異端呼ばわりされて殺されたんだが…後世にその学を評価されて只の魂が神に昇華したんだ』
「へぇ~、神様ってなれるんだ」
『まぁ、殆どは生まれ変わり新たな運命をたどるんだけどね』
別枠だったんだよ、彼は…そう言うと、徐に後ろ足で顔を数回洗った。
『とある出来事があってね…僕はこの通り片目をやられ、組織から追われる身になり…』
「う、うん…(って、シリアス的な展開ですか!!)」
『必死で追っ手を振り切って、まぁ、気付いたら彼の居場所に辿り着いた訳だ。漸く、ここに辿り着いたな褒めて使わそうとね…そこで僕らはある契約を結んだ』
「契約?」
僕ときゅうべーが交わした様なものだろうか?
疑問げに首を傾げると共にそう呟いた。
『僕は君を助ける。彼は僕を追っ手の届かない所に送る。簡単な事さ』
「そこにどんなメリットが…」
『弱賛成だね』
泡立ちがすごく良さそうですね、と凄味を込めていってみたがあまり効果はないようだ。
『とりあえず、この話はここまでとしよう。必要があれば呼ぶといい僕は君を義務として助けないといけないからね』
「そうだね、おやすみ。きゅうべー」
『よい、夜を涙』
彼はそう言い残してこの場を去っていった。
冬も終わりを告げようとしていたこの季節。僅かに肌寒さがゾクりと全身を駆け巡る。
「ん…2人も運べるかな?」
とりあえず、魔法で腕部を強化して久藤さんは車イスで狙井さんは担いで病室に戻ることにした。
ピキッ……
この時、僕は自分のソウルジェムに変化が起きているなんて気にも止めなかった。
そう、この時までは……
――――――――
それから、少し時間が経ち。
『彼がどんな、人物を助けるのか。とても面白い研究対象を選んだね……
「そう思うかい?」
全身赤のローブで口元以外を隠した男をそう呼んだ。
『君ことだから、予測できているんだろう』
「どうかな……神様もひまじゃないだ」
『そうかい』
きゅうべーは男を素通りして先の見えない路地の奥へと停滞していた歩を進める
「どこへ?行くんだい、きゅうべー」
『君も分かりきった事を聞くものだね……
「彼女?あぁ~、放って置いてもいいじゃないかな。いつかは巡り合う運命だ…手出しは厳禁だ」
きゅうべーは、はぁ~と溜め息をついてこう答える。
『現場確認は怠らないのがボクの性分なんだけどな』
「組織から追っ手もなく、生きていけるのは誰のおかげかな」
『……』
まっ、それはそれでそそる展開になることは分かっているんだけどね……
そう言った赤ローブは風のように姿を消した。
『ホント、困った主だ……』