「貴方、リッチになりますよ」   作:あなからー

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ふと思いついたので書いてみました。多分続かないんじゃないかな。


俺、リッチになるってよ

『  ○月☓日 △曜日

 

 なんか変な占い師のねーちゃんに将来リッチになれるって言われた。いきなり話しかけられての第一声がそれだったのでかなり怪しかったのだが、特に害があるわけでもなかったので適当に相槌うって帰ってきた。やっぱ家は最高だな。新しい社員としての生活も楽しいっちゃ楽しいし、何よりホワイト企業なのが最高だ。残業しないボーナスとかいうのを他の会社で実施して効率が上がったのを知った社長が去年から導入したらしいけど、ウチでもそれが成功して中々高い業績を残せている。やっぱモチベーションって大事だな。うん。

 

 あと、変と言えば最近金縛りにあったと書いたのだが、今日も5分位その時間があった。回数があるから慣れるとかそんなんありえないし普通に怖いからそろそろご退場願いたいのだが、こういうのはお祓い師に頼むのが正解なんだろうか?別にワケあり物件でもない普通のアパートだしそもそも幽霊とかってあんまり信じてないんだけど、金縛りの原因が分からない事にはどうしようもないしな。

 

 ともかく今日も1日を過ごせた。明日雨が降らない事を祈っている。

 

 

 

 

 

 

   ○月□日 ◇曜日

 

 はたらくのたのちいいいいいいいい

 

 早速日記が荒ぶってしまったが、今日は給料日だったのだから仕方ない。残業しないボーナスは全額……とはいかなくとも、8割程度もらえたので充分だろう。そしてこの給料日に行くラーメン屋は美味いのだ。今月もよく頑張った、濃厚なトンコツスープがそう労ってくれている錯覚まで覚える程度には美味い。上司にも先輩にも殆ど嫌いな人がいないし同輩の女の子が可愛いしマジで人生勝ち組なのではないだろうか。ただし何時までたっても彼女は出来ないが。でも別に一人でも楽しめるのなら彼女や妻を作る必要もないだろう。この言葉だけ聞いたら凄く童貞臭いが、そういう事はちゃんと風俗でやっているし気にしなくてもいいだろう。幸い顔は自分から見ても……って何故俺は自分の日記で顔について書かねばならんのだ。

 

 それにしても、寒い。最近余計に冷え症が悪化してきた気がする。まだ20代だぞ大丈夫なのか俺。冷え症に効く入浴剤の季節が早速やってきたという訳だ。……いやはや、1年とは実に短い。日記を見返すと、ああ、あったなぁと懐かしむような出来事や墓場まで持っていくような黒歴史など、沢山の事が書いてある。高校からおふざけ半分で始めたのだが案外続くものだな。視力が悪くなったりするまでは出来るだけ毎日続けていきたいものだ。

 

 今日も1日を楽しく過ごせた。 明日は電車が空いていますように。

 

 

 

 

 

 

 

   ○月●日 ◎曜日

 

 落とし物を拾った。

 

 

 自分で言うのもアレだし将来黒歴史の一つにランクインしそうではあるが、俺は善良な一般市民だ。税を収め、働き、物を買い、社会に金を回している一人だ。そんな俺がその落とし物を拾わないことがあるだろうか?いや、ない。

 

 というわけで交番に届けて、落ちた場所とか時間とか色々話して帰ってきたらいつの間にか夜も遅い。今から飯を作るのも面倒なので今晩はカップ焼きそばでいいだろう。冷蔵庫にレタスが残っていたし、ポン酢で食えばバランス的にもなんとかセーフなのではないか。

 

 

 話が全く違った。修正テープなんぞ持つ気はないしぐしゃぐしゃと線を引くのも面白くないのでこういうときは放置するのだ。落としていたものは女性物だと思われるポーチ。どんなシチュエーションで落ちたのか気になる所ではあるし、警官のお兄さんも初めは「本当ですか?」と私に聞いていた。持ち主はドジか、それか不運だったのであろう。早く気づくといいのだが。

 

 今日も一日を過ごせた。 明日は風が弱くなりますように。

 

 

 

 

 

   ○月▲日 ∴曜日

 

 

 友人に誘われ、テキトーに買った宝くじが当たった。何を言ってるかわからねーと思うがいや普通に分かる。宝くじが当たった。それだけだ。

 

 別に一等や二等ではないのだが、それでもいい金額が懐に入ってきた。友人はとても悔しがっていたが、こういうのは物欲センサーがあると絶対に当たらない、そんな風潮があるのだ。恨むなら自分の欲深さを恨むのだなフハハハハ

 

 

 

 この日の日記は絶対他のやつに見せないでおこう。書いてて後悔してきた。……だが、その後悔もまた日記の楽しみの一つではある。起こった出来事をちゃんと書くのは大切なことなのである。

 

 宝くじだけの話題というのもつまらないのだが、日記を見返して思い出したことがあった。何時ぞやのヘンテコな占い師に言われたリッチになれるとかいうやつ。もしかしてあれは宝くじが当たるソレを予言していたのではないだろうか。ということは、だ。物欲センサーに負けずに宝くじを買えば一等が当たっても可笑しくないということにならないか。勿論期待しすぎるのはよろしくない。当たるも八卦当たらぬも八卦と言うように、というか大体ああいう手のやつは当てずっぽうで当たったら凄いやろ、みたいな手口を使うのだ。汚いな流石占い師汚い

 

 ま、このお金に関しては素直に感謝を彼女に伝えようと思う。明日の夜に同じところにいたら一言伝えておこう。

 

 今日はラッキーな一日だった。明日不運が起こりませんように。

 

 

 

 

 

 

 

 

   ○月■日 ▽曜日

 

 なんかメチャクチャ早起きしてしまったので、一応日記に書いておこうと思う。ふとした出来事やふとした瞬間を日記に書くのも醍醐味の一つであろう、そう俺は思っている。まだ電車の時間までは余裕もあるし、今日は朝食を少し豪華にしてみよう。フレンチトーストなど面白いかもしれないな。しかも今日仕事が終わったら俺、有給取って旅行に行くんだ…………。

 

 と、こうしてウッキウキの気分を記しておく。さて、今日も一日頑張らねば。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                    ――――――脱線事故で死亡した会社員男性(2X)の日記の一部より

 

 

 

 

 

 

「…………んぁ?」

 

 目が覚める。吸う空気は暖房のお陰で冷たくはないのだが乾燥している。朝起きたときの喉の感覚は何時までたっても好きになれない。近くに置いている目覚まし時計を見ると、普段起きている時間より二時間も早く起きてしまっていた。

 

「もう少し寝……いや、起きるか」

 

 二度寝をしようと思ったがそんな気もあまりない。起きてしまったものは仕方がないのでこのまま一日を始めよう。折角なので今の気分を日記に記しておく。これで今日の朝食も決まった、とっとと作ってしまおう。

 

 本来は液に一夜浸けておくフレンチトーストだが、浸けて直ぐに焼くのでも十分美味い。卵、牛乳、砂糖を入れて混ぜる。混ざったら食パンを切って液に浸し、焼く。とても簡単で美味い料理だ。そのままでも美味いが、ここにシナモンやメープルシロップをかけるともっと美味くなる。

 

「せー……のっ」

 

 ひっくり返す時には程よく焼けているかを注意しなければならないし、返すのが下手だとフライパンに変なこびりつき方をしてしまうので少しコツがいるのだ。今回は無事成功したから安心だな。両面を焼けば完成だ。

 

「うまい」

 

 今回はシナモンで食ってみた。美味い。野菜は適当に野菜ジュースでも買えばいいだろう。

 

 

 食べ終わって洗い物を片付けたら着替える。早速早起きしたのだ、折角電車じゃない早い電車に乗る事にしよう。

 

 

 思った通り電車はそこそこ空いていた。席は全部とられてはいるが、通路にはまだ余裕がある。通勤ラッシュの時には毎回潰れるぐらいの乗客がいて降りるのにも一苦労しなければならないのだからそれを考えるととても快適な空間だと言えるだろう。

 

 ただ、気になるのが遅れているからか妙にスピードが早いことだ。遅れているならいるで仕方がないと思えないくらいに余裕がないのだろうか。変に時間に五月蝿い日本人が多いが、こういうのは慌てずに対処…………!!?

 

 

 

 

 

 ――――やけに、時間が進みを遅く感じた。視界が斜めになっている。座っていた客達の一部が宙に浮いて……宇宙にでも行っているのか?いや、違うな。銀河鉄道でもないんだから。これはきっと倒れる直前なんじゃないだろうか。あれだけスピードを出していたならあり得る。

 

 よくもまあこんな時に冷静になれるものだと自分でも思う。走馬灯というのはこういうものなのかもしれない。ああ、宝くじが当たってリッチになるってのが叶うと思っていた矢先にこれだ。カミサマと言う奴も信頼出来ないな。クソッ、リッチにはなってみたかったのに残念だ。会社も良くて、人生をエンジョイ出来ていたのだが……日記のアレが死亡フラグだったかな。

 

 朝なんかに、日記を書くんじゃなかった――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       *

 

 

 

 ん…………。

 

 

 

 

 ――――あれ、死んでない?

 

 俺は確か、事故で…………あれ、でも何故今俺には感覚がある?目を開けようと思えば開けられるし、木々が風に揺られて葉が擦れる音も聞こえる。息は少ししにくいけれど出来る。何より痛みを感じない。あれだけ派手に転んだのだ、目などの感覚があるなら痛みがあっても……あれ、いつの間にか電車の外に出ている。その電車は盛大に燃えていた。窓が破れて運良く出られたのだろうか。彼処にいたら死んでたな。

 

 ……それよりまずは確認だ確認。怪我がないかを確認しなければ。

 

 

 

 手を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 透けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……足を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 微妙に透明だった。

 

 

 

 

 

 

 

 …………ええと、次は腕だ。

 

 

 

 

 

 

 

 さっきは着てなかった黒い布みたいなものを着ているのがわかった。

 

 

 

 

 

 

 

 ………………んん?

 

 

 ……かなり嫌な予感がして近くの道路反射鏡を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 黒いフード、青い顔、黒い布のような服、透けた手足。どこからどう見ても不審者である。服焦げた?いや、普通に柔らかいし……。ん?

 

 

 

 ……思い出す少し前の出来事。そう、あれは確か二週間くらい前の夜……そうだ、街を歩いていて声を掛けられたのだった。日記に書いていたはずだ。そして……ああ、言われたのだ。

 

 

 

 

 

『もし、そこの貴方。貴方、将来リッチになりますよ。それも近いうちに』

 

『…………はぁ』

 

『色々と大変になるとは思いますが、暴走はしないように』

 

『……あ、はい』

 

 

 

 

 

 リッチ。りっち。暴走。大変になる。

 

 

 

 今の俺の格好。なんか死体っぽい。つか幽霊っぽい。

 

 

 

 

 

 

 ………………リッチってそっちかい!!!!!!先に言えよ!!!!

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