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○月A日 Z曜日
【朗報】霊体でも日記が書ける
何が何やらサッパリなのだが、取り敢えず自分の家から新しいノートとペンを持ち出してきた。というか物体を持てている時点で驚きだったのだが、所謂ポルターガイスト現象というのはこういうことだったのだと気づく。
日付が大分空いてしまっていることから、見返した俺なら察することが出来るかもしれないが……。立ち直るまでに1週間かかった。高校生の頃先生に言われた「君は余りに想定外な出来事が起こると凄く取り乱すから」というのは事実だったのだ。目立たなかった俺の事を良く見ていたな。
一応立ち直った直後に色々と身の回りを調べ、また色々と突っ込み所もあったのでここに記しておく事にする。ノートは中々失くさないだろうがメモ用紙(ノートの端をちぎっただけだが)はふとした拍子に落としてしまうかもしれない。
さて、こうして幽霊、あのクソ占い師曰くリッチなのだろう、
・軽い物なら持つことが出来る(意志を込める必要アリ)
・殆どの動物には見えない(人間含む)
・あまり眠くならない、睡眠は一週間に一度で十分か
・食事をする必要性もない
・「すていたす」が開ける
さて、今のメリットのようなものを書いてみたワケだが……上4つは分かるだろう。
「すていたす」とは何か。これについてなのだが……実は今も開いていない。人間やめてどうしようか、という時にステイタスを開ける度胸はないのである。この日記を書き終えた後に開く努力をしてみようと思う。
次にデメリットを挙げていく。
・同じ「人間じゃないモノ」が見えるようになってクソ怖い
・することがない
・過ごす所がない
・太陽が苦手になった
・霊感のあるっぽい人間にはバレる
今挙げられるのはこれくらいだろう。することがないというのについては、一応日記が書ける事が判明したので「趣味が殆どできなくなった」としておく。それ以外は全てかなり大きいデメリットだろう。
まずひとつ目からもうマズい。今はアパートの庭の隅で書いているのだが、道路に行くと中年くらいの男性の霊や、またワケあり物件の扉の前では悪霊がいたりと、一々心臓に悪い。心臓に悪くてももう死んでいるから意味はないが。まさか「死ぬかと思った……ってもう死んでましたー!」というギャグをする羽目になるとは思っていなかったのである。
過ごす所がない、これも辛い問題である。現在俺が住んでいたアパートは全て埋まっており、近くに空き家もなさげだ。これではゆっくりと日記が書けないし寝ながら書くと字が下手くそになるので早いうちに拠点を見つける必要がある。
太陽が苦手に、というのはまさに漫画やアニメの霊や魔の生き物あるあるだと言っていいだろうが、俺もその例に外れない。霊だけに
相当参っているようだ、気がつけばガキのようなギャグに走っている。
ただ、夜に動くというのも避けたい。……他の霊も動き出すからだ。幸い、どうやら俺は昼でもなんとか動けるので大丈夫だが、一週間こうしてみても夜は目を瞑っていたい。チラホラと立つ霊に見られる感覚、これは死んでみないと、もしくは霊感が強くないと分からないだろう。
最後、霊感について。これに関しては検証、というか体験済みだ。俺が死んだ4日後くらいだろうか、何も考えられずただ道を歩いていたのだが、ある少年がこちらを見たかと思った瞬間泣き出してしまったのである。犬や猫にも鳴かれる事もあり、どうやら一部には見えるらしいという結論に達した。別にこれによって俺に被害があるわけでもないが、何もしていない、少し霊感があるだけの人間を怖がらせたりというのは良心が痛む。無害アピールを試みていくつもりではあるが、それでも初見だと驚くに決まっている。日中に歩いているリッチなど誰が考えるだろうか。そもそも俺はお金持ちのリッチになれると思っていたのだ、話が違う。今度見つけたらぶん殴ってやる。
太陽がダメになったので明日は曇りますように
○月B日 ー曜日 くもった
一行だけ、とても大事な事を書こうと思う。
どうやら俺は、相当ヤバいモノを持ってしまったらしい。
俺が昨日日記に書いた「すていたす」。今日はこれについて調べた結果を書こうと思う。
まず、開き方について。これについては簡潔に、「念じる」。頭で「すていたす」欄を開けると分かっていてもどうやって開くのかが分からなかったので「開け~。開け~」と念じてみたらなんか画面が出てきた。これゲームの世界なんじゃないだろうな、とも思ったが、よく考えてみると、たとえそうでも今俺が生きている世界は俺にとって現実なのだ。つまりこれは現実、俺が、死んだのも、現実。
日記を閉じたくなってしまったが、めそめそする前に書くべき事を書かねばならない。
さて、この「すていたす」欄。この欄には俺の一定の情報と今の俺の能力値が表示され、「まほう」なる欄も発見した。
ぶんるい:あくりょう
しゅべつ:リッチ
どうやら俺は悪霊らしい。生前に特に悪いことをした覚えもないし悪いことをされた覚えもないのだが、一番許せないのは俺が人生を謳歌している時に死んでしまったこと。これさえなければ俺は直ぐにでも天国へ行っただろう。その前に、早起きなんぞしなければ。だが、覆水は盆には返らないように、時を戻す事なんぞ出来はしない。肉体も消え、皆との関わりも消え、残ったのは俺の、理不尽、不条理への恨みのみ。だからこそ俺はリッチ――悪霊になってしまったのだろう。
俺の能力値は――書く必要もないだろうが、詳しく書くと決めている以上は書かねばなるまい。
『
ひっとぽいんと:21
まじっくぽいんと:5
いかりぱわー:60
こうげきりょく 2
ぼうぎょりょく 999
ちから 1
すばやさ 10
ちりょく 42
まほうぼうぎょ 11
がっつ 29
特性:霊 物理全無効、光属性被10倍
』
俺は霊体だから切っても叩いても当然当たりはしない。だがその代わりお祓い等には弱い、こう考えてみるのが自然と言える。ぼうぎょ(俺が昔やっていたゲームではDFPと表記されていたので以下DFPと表す)が振り切れているのは霊体だからというだけの理由だ。別に意味はない。また、ちから(以下STR、平仮名では日記が読みづらくなるだろう)が1であるのも同じく霊だから。こうげきりょく(以下ATP)が2なのは恐らく今持っているペン、若しくは日記帳があるからであろう。ペン先が刺さると地味に痛いのだ。シャープペンシルを使用する場合、先の細いものだとその痛さは更に増す。学生時代の被害者が書いているのだから間違いない。
このような能力値があるということは何かしらそれを伸ばす方法もあるのだろうが、今はその方法を模索するよりも居座る場所を探すほうが優先事項だ。
そして、「まほう」。これが今一番俺の頭を悩ませている代物だ。この欄を見た時には何故俺は悪霊になってしまったのか、そう本気で(今でも思っているが)思ったのだから。決して乱用してはいけないし、他人で実験するなど以ての外だ。なので次の日、俺の住んでいたアパート、夜。適当な害虫をターゲットにしようと思う。そうだな、蝿がいいだろう。あれは生きるべきモノではない。
あしたもくもれ
○月C日  ̄曜日 曇り過ぎて雨降った
成功、した。
改めて書いておこう、万が一がない限り、この「まほう」は決して使ってはならない。これはイケナイモノだ。成功した時、ゾッとしてしまった。
もし、俺に理性が残っていなかったら。考えただけでもこうしてペンを握る手に震えが走る。
気を取り直して。現在、俺は「元俺の部屋」に来ている。日記帳が雨で濡れてしまうのは嫌だし、死んだとはいえ一応契約上はまだ俺の部屋であるらしいから問題はないだろう。俺の生前の日記は持って行かれたらしく、姿が消えていた。特に取り留めのない事を書いていたから大丈夫、だと思う。
……ああ、そういえば大家の娘さんが霊感云々と言っていたのを今思い出した。確か今は中学生だったか。親御さんの教育がキッチリしているのか、とても良い子に育っている。花に水をやっている姿を通勤ついでに見ることもあった。このまま真っ直ぐ育ってほしいものだ。ひとつ懸念があるとするならさっき書いたような霊感だ。大家さん曰く小学生になる前から、誰もいないところを指して人が立っていると言っていたのだとか。その誰もいないトコロに話しかけていた時には「一体どこで育て方を間違えたのか」等と思ってしまったらしいが、最近はめっきり聞かなくなったので霊感が弱くなったかもしれないと二人共苦笑していた。
…………ふと気づいたのだが、何故か俺の部屋にあまりホコリが溜まっていない。一週間も空けていればある程度汚くなってきていると思ったのだが、もしかして誰かが掃除にきてくれたのだろうか
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まずい ばれた ふらぐかいしゅうはやすぎ どうなってい
おれ が みえる のか
そうじは きみが ?
そうか ありがとう
そうだ おれは ――の おんりょう だ
だいじょうぶ わるいこと しない
きょう は いったん やすめ
ああ おやすみ
(死亡)