□月A日 雨
恐ろしい速さのフラグ回収だった。ここまで迅速だと俺は実はフラグ建築家の持ち主なのではないかと勘違いしてしまう。勿論そんなモノにはなりたくないので勘違いであってほしいものだが。
さ て、こうして文体こそ落ち着いているように見えるが、よく見ると文字が震えまくっているのが分かるだろうか。あの親御さんの言っていた事はどうやら本当だったようだ……というか、彼女に霊感があるというのが本当だった、というほうが正しいか。「さ」と「て」の間が少しばかり離れてしまった。因みに仕事上使っていたキーボードの話をすると、PCの日本語入力「さ」と「て」の間は「と」なのである。「さてと」という言葉は「さ」と「て」の間を取る「と」、のような繋がりで出来たのではないだろうか、とここに妄言を綴っておく。
取り敢えず今大事なのはこれからどうするか。少なくとも、ここには住み着く事は出来ないだろう。一度バレてしまったのに同じところに住むほど俺には度胸があるわけでもない。兎に角空いてそうな家を探すことから始めるとしよう。幸いココらへんは住宅地が多いしもしかしたら廃屋もあるかもしれない、日記を書きながら平和に成仏まで暮らせるような所を見つけられたら良いのだが。
□月G日 雨のち晴
俺の覚えた「まほう」の有効な活用法が一応見つかってホッとしたことをまずは報告しておく。なんて物騒なものだとは思ったのだがこの活用法なら恐らく悪いようにはならないだろう。
本題の住居探しについて。
この周りだけを見てみたが、そもそも此処ら辺は一軒家が多いために廃屋や空いている部屋そのものがなかった。余り遠くならなければいいので次からはもう少し範囲を広げようと思う。
目先の問題を解決し終えた後は物資の問題だ。まあ、ノートとペンなのだが。この調子で日記を書いていくと分かるのだが、ページが埋まるのがかなり早い。新しいノートを引っ張り出して2週間しか経っていないのだが。これは由々しき問題である。新しい住処を決める上で「ノートとペンを購入できる所が近い場所」というのを参考にするのがよいのかもしれない。資金の方はタンスに仕舞っているものがある。1セット300円だとしてもあと100セットくらいは買えるだろう。100円貯金、500円貯金さまさまだ。
後、何故か娘さんがまた来た。相変わらず私が話しても聞こえないようなので筆談になってしまうのだが、彼女が声を出さず携帯のメモ帳に文字を打てるのはお互いにとって幸いだっただろう。彼女は変な目で見られることはなくなるし、私にしてもワケあり物件やら何やらで祓われるのはまだ勘弁したいのである。それは兎も角として、私の日記を覗こうとするのは止めてほしい。プライベートな話題を書いてこその日記なのではなかろうか。そういうのをプライバシーの侵害というのだ……ということを慌ててノートに書いたおかげで事なきを得た。思春期の行動力、恐ろしい。
□月K日 晴れ
そういえば占い師に文句を言うのを忘れていた。何がリッチだ、あの性悪女め。霊体のリッチだと先に言ってくれれば――いや、先に言われても何のことか分からないだろうが――ともかく、まどろっこしいのだ。占い師と言うからには俺の姿も見えるに違いない。早速出撃しようと思う。
何故だ、何故あの占い師は私が見えないのだ。しかも何故驚かないのだ!!
見えないなら見えないで早速驚かせてやろうと水晶玉を浮かせてみたり椅子を揺らしたりしてみたのに奴は全く驚く素振りを見せなかった。挙句の果てに「お暇なのですね」と手元の紙に書かれる始末である。どこか頭がおかしいのではないだろうか。一度彼女は病院に行くことをお薦めしておく。
□月M日 気分は曇りだ畜生、晴れるな
昨日からの怒りが収まらない。このストレスをどう発散させてくれようか。だが、善良な市民に当たるのは私のプライド(安いプライドだが)が許さないだろうし、だからといってモノに当たってしまえばそれこそポルターガイスト現象の例そのものだ、人に見られればお祓師を呼ばれる可能性がある。未だにたんと未練は残っているのだ、ある程度減るまで成仏などしてやるものか。
後、アパートの周りの下水道に住み着く黒いGを20匹程始末しておいた。築年数こそそれなりでもう他の部屋に巣を作っている可能性が在るため気休め程度にしかならないだろうがないよりマシだろう。大学生の頃から世話になったアパートだ、それなりに愛着もあるしそれ以上に大家さんが人格者であったため、出来ることから少しずつ恩を返していく事にするか。
……家を探すのを忘れていた。
追記
毎日のように彼女はここに遊びに来る。友人がいないのかと不安になるが、別にそんな事はないらしくホッとしている。幽霊なんぞと仲良くするよりも生身の人間と親交を深めたほうがいいに決まっているのだ、余り挙動不審な事をさせるべきではないな。
後これも今日聞いた話なのだが、どうやら大家さん一家は俺の葬式に出席してくれていたようだ。その頃の俺は自暴自棄になっていた頃だからその場にはいなかったのだが、成程。有り難い事だ。
というか、勝手に彼女はここに入ってきても大丈夫なのだろうか?色々と疑問が絶えないのだが、明日また来るようであれば聞くしかない。
□月∪日 曇ったり晴れたり
家探しから帰ってくると既に娘さんが元私の部屋に来ていた。なんで日記を持ち歩いてるんですかと怒られたが意味がわからない。勝手に読もうとするな。日々の出来事を直ぐに書き留められるようにという目的があって持ち歩いているのだ。
彼女が私の部屋に入れる理由だが、掃除しに来てくれるのは彼女だったらしい。物が殆ど動いていない事や詮索の手が入っていないのは喜ばしい(というかそんなことをしてはいけないので当たり前なのだが)が、じゃあ何故俺の日記は見ようとするのか、これがわからない。
折角なので彼女が何故私と話そうとするのかについても聞いてみた。
そしてどうやら、俺のように理性をキチンと持って対話の出来る幽霊というのは希少であるようだ、というのが分かった。所謂成仏出来ない魂というのはまず未練があるのだが、その未練を晴らすためだけに霊となって行動している者の殆どはそれしか頭にない。事故で死ぬまで彼氏・彼女が出来なかった霊は死んでから延々と若い男女に話しかけていたという話を聞いたときは流石に引いた。俺が彼女いない歴=年齢でなくて本当に良かったと思う。
以前から俺は自分や他の幽霊の事を怨霊やら死霊やら霊やらと表現を変えまくっているが、それは俺以外の幽霊のジャンルがイマイチ不明な為だ。俺でいえば「怨霊」というジャンルが確定されているらしい(ステータス表参照)のだが、相手がどんな霊なのかを見分ける事は出来ないようで。
ともかく彼女には俺の目的やこれからの行動予定などを伝えてさっさと出てもらう必要がある。認めたくは無いがいざ死んでみると生身の人間との会話が楽しく感じられてしまう。が、彼女にも生活があるのだ。もう死んだ人間に突き合わせてはいけないだろう(彼女が勝手に話しかけて来るのだがこれもまた解決しなければならない)。
忙しすぎてマトモにかけない
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