C.E転生   作:asterism

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phase8 戦争に向けて

C.E68年年末 アジアオセオニア共同体、会合

 

「んで…どうするんです?」

 

「どうするも何もだな…、付き合いでもなんでもやるしかなかろう。」

 

少し間の抜けたような問いにタクシンが答える。

 

「ですよねぇ…」

 

現在の会合ではマンデルブロー号事件の後、ついに独立の姿勢を明確にしてきたプラントへの対応が話し合われている。

 

「必要最低限以外の食料の輸出制限でいいか…、向こうもユニウス7~10を食糧生産プラントに変えている最中だから人道上も問題はないだろ。どうせ一基減るがな。」

 

タクシンの意見に反対する人はいない。

 

「そもそも戦争中に海鮮鍋が流行ってたなんて話もあるくらいだ、さぞ食糧生産には余裕があるだろうさ。」

 

「待て待て…確かプラントに海産物養殖設備はないだろう。そもそも食料生産に大分制限かけられてただろ?作れてチョコバーだ。」

 

「淡水魚化とか使ったんじゃないの?」

 

「それ海鮮って言っていいのかなぁ…」

 

「どちらにせよ大洋州連合からの食糧輸入が初期からないのだから苦しいことに変わりはないだろう、特に怖いのが水だな。原作と比較してアフリカ共同体がプラント寄りの姿勢を見せているが、アフリカ共同体に水を期待するのは筋違いだしな。」

 

商務大臣を務めている男が言う。確かにプラントは地球から水などを輸入していたはずだ。

 

「そりゃ怖いな人が生きる上で重要なもんだし、あ、そういえば、同じL4にあるコロニーのメンデルでバイオハザードだとさ」

 

厚生労働省に務める官僚の一人が報告する。

 

「…あぁ、あそこか周回軌道が違うから心配はないだろう?」

 

「放置で構いませんよね、もともとムーアってそこそこ入る基準厳しいですし。」

 

「そりゃコロニーみたいな閉鎖空間でバイオハザードとか地獄だからな。」

 

ムーアに限らずアジアオセオニア共同体の宇宙施設に移住したい際には厳しい審査がかけられており、ある程度の思想審査もされる…のだが、入ったあとで何かに感化されるものもいるので完全に危険思想はシャットアウトできていない。だからまれにブルーコスモスのテロがあるのだ。日本みたいな銃器規制があってもそのあたりは変わらない。もとは領域内の増えすぎた人口対策だが、別に棄民がしたいわけでもない。ムーアの1バンチ、『ヴィシュヌ』には副首都機能もあるし、コロニーの居留民の権利は地球に住まう人と同じだし、移動だって自由だ、地球観光も船のグレードさえ拘らなければ格安でできる。もちろん地球に住まう人々だって同じだ。残念ながらプラントに関してはいろいろ法的に複雑な部分があってそうではないが、その辺を協議しようという話にはならないし、仕事以外でこちらからプラントに移住する人が少ないので問題として扱うには弱いのだ。

 

「そういやキラがヘリオポリスに移住するのも今年だったな…。」

 

「あー…まぁ関係なくね?オーブ国民だし」

 

「そうなんだがな…ほら、原作に対する感慨というか…」

 

「ありもしない国家ぶち上げといてそりゃないだろ」

 

「返す言葉もございません…。」

 

「そういう話題は後でだ、さて次に起こることといえばL5事変…と一応呼んでいる小規模衝突なんだが、どうする?」

 

「どうするも何もだな…宇宙軍としてはプラントにはそこまで大規模な戦力はなくて、具体的には第二七護衛戦隊しかおいていないわけで…。何もできないよりマシだが、退避する理事国民と、弁務官および総督の避難しか責任が持てんぞ。」

 

古賀参謀総長がタクシンの問いに答える。

 

「一応買ったアガメムノン級は?第二七護衛戦隊は護衛戦隊としては重装備気味なはずだが。」

 

「大西洋製MAしか運用できない完全な員数外装備だ、オッゴですら戦術を考えねばMSに対抗すらできず狩られるのにそれ以下のミストラルでどうなる相手でもないだろ?」

 

あれを買わなきゃもっと他にいい装備をそろえられたのにとでも言いたげに古賀参謀総長が言う。

 

「まぁその辺は仕方ないとしてだ、行動方針としては退避でいいんだな?」

 

「それしかできん、…そうだな、でも一応の備えだ、第3巡航戦隊をコンペイトウ守備艦隊から回航させるか…」

 

「まだアチェ級と青葉級が主力の艦隊だったな…旧式とはいえ少々過剰じゃないか?」

 

「一応事前通告も済ますし、迅速に退避する予定だが向こうの純粋培養されたコーディネイター至上主義者が何をしでかすかわからん。いや、大体向こうからすれば軍艦を攻撃するのに良いも悪いもないさ。」

 

武装解除して白旗揚げても撃沈されそうだしなと古賀は言う。

 

「大体向こうの士官学校って何を教えてるんだ…?ザフト兵はみな卒業生らしいが…原作ではひいき目に見ても国際条約その他を理解しているとは思えんぞ…」

 

それは連合もだがと続けながら古賀は頭を抱える。

 

「戦いの技能だけなんじゃないか?」

 

「おいおい…ウチからも何人か若手の佐官クラスが移住してたりするんだぞ…その辺みっちり叩き込んだつもりだったんだが…あまりやりすぎるとこちらも連中のことを『民兵組織(ゲリラ)』として扱わなきゃならなくなる、それは戦後を考えるとよろしくないんだが…」

 

どうせスーパーコーディーWith単機で戦略を左右するモビルスーツと愉快な仲間達のせいで勝敗うやむやになるし。と誰かが愚痴る、画面越しに見ている分にはカッコいいが、自分達が敵対せねばならない可能性を考えると傍迷惑な存在である。

 

「えー…まぁうちもブルーコスモスの活動許してたからなぁ…」

 

「思想信条の自由とか主義主張の自由は重要だからな、言動と行動に相応の責任は取ってもらうが」

 

「プラント独立もホントなぁ…金払えばいいと言っておろうに…」

 

「他が許してねーじゃん、まぁ工業コロニーが独立とか叫ぶなんて思えないし、というかなぁ…あのコロニーが素晴らしいとは思えんのよ俺。大きさの割に居住可能範囲狭すぎじゃね?環境はいいらしいけど。」

 

「まぁ無重力地帯があるから無重力下で精製される合金の生産量はなかなかだぞ」

 

「それうちのインダストリアルタイプのコロニーの前でもいえんの?」

 

早い話がユニコーンに出てきたインダストリアル7の完成型のようなものである。無重力工業地帯では宇宙でのみ精製できる合金が大量に精製されている。

 

「…すまん」

 

「はいはい…今日は話がよく脱線するなぁ…とにかく、戦力に関しては宇宙軍に任せる。それと核融合炉への移行率だが…」

 

タクシンがまたそれた話題を元に戻す。今回の会合はどこか危機感なく続いていくのであった。

 

 

/////////

そのころ…

 

「アジアオセオニア共同体に新兵器開発の兆候あり…ですか?」

 

執務室でアズラエルは産業スパイの仕入れた資料に目を通す。

 

「はい、アズラエル様」

 

「彼らはこんなワークローダー擬きが本当に役に立つと?」

 

写真に写っているのはモビルスーツ…のフレームである。どうやら動いているところを記録した映像もあるようだ。

 

「手に入れた映像を見る限りでは様々な検証を繰り返しているようです。」

 

「…あぁ、そういえば似たよなものを空のバケモノ共が作っていましたね。彼らなりに真似てどのような特性を持つものか検証しているのでしょう、彼ららしいといえばらしいですね。」

 

ついでに旧世紀に流行っていたカートゥーンやゲームの真似事でもするんじゃないか。とアズラエルは考えもしたが関係のないことだと頭からその考えを消す。

 

「うーん…まぁ彼らはプラントへの出資は消極的ですし、ZAFTとかいう連中と積極的に交流しているという話も聞きませんから、空のバケモノ共とは関係ないでしょうね。できればデータがほしいところですが…」

 

ロゴスにいるアジアオセオニア共同体のメンバーたちを思い出し首を振る。彼らとの交渉などという「心の折れそうな仕事」をこんなもののためにしたくはない。

 

「やめておきましょう…」

 

これ以上仕事が増えては倒れてしまう、もともと「労働基準法?なにそれおいしいの?」レベルで激務をこなしているのに、さらに厄介な交渉事など増やせない。父はいまだに健在だが事業に関してはノータッチだ、引き継ぎもなしに私が倒れてはいけない。

 

/////////

 

L4コロニー群『ムーア』食糧海洋生物養殖試験プラントコロニー『君手磨』

 

「で…なんであなたがここにいるんです?」

 

「そんな露骨に嫌な顔しなくても…」

 

ムーアに存在する食糧生産プラント『君手磨』、地球の海とほぼ同じ環境を再現し宇宙での海洋生物の養殖実験をしているという、「そこまでして新鮮な魚介が食いたいのか…」と他国からは狂気の産物扱いされている代物だ、ちなみに深海の環境を再現したカプセルがコロニー外縁に存在しており、深海に生息する食用魚の養殖研究もおこなっている。まぁ、今回使用するのはそのコロニー内の大きな養殖用大規模海水貯蔵池、通称『海』だ、何のひねりもないがこんなものの名称をいちいちかっこつける必要もないだろう。まぁそんなことは問題はない、どうして会計監査役の財務省の役人、伊沢がここにいるのだ…。

 

「私も仕事ですよ、ここで開発をしているジオニスト最後の砦(水陸両用MS開発チーム)の連中、やたら部品の規格落ちやらが多くて…何かやってるんじゃないかと…」

 

監査役というのも大変なのだろう、皆から嫌われるのは当然だがな。実は水陸両用MS開発チームにはジオニスト以外存在しないのだ、そもそも地味…失敬、独特のテンポや間合いの存在する水中戦は描写が難しいのだろう、知識と文章力、表現力がなければ面白いものはかけないのだろう。主人公機が汎用型というのもあるのかもしれないが。というわけでモノアイ禁止令に最も落胆していたのがこの部署だ、X好きはGシリーズ開発かドートレスHMファイア―ワラビーモデルの『カンガルー』開発のほうに行っている。つまりドーシードを開発しているのは全員ジオニストなのだ。

 

「そもそも水陸両用MSの開発自体どうかと思いますがね私は、ドン・エスカルゴとデフ・ロックを統合したPB-4ドン・エスカルゴでいいじゃないですか、対潜兵器は」

 

「水陸両用MSの場合仮想敵は大西洋のディープフォビドゥンやフォビドゥンヴォーテクスらしいですよ、あの機体狂気の産物ですからね。今からノウハウを積んでレオパルド水中仕様やガンダムアスクプレオスを開発し、それをフィードバックした量産機をC.E72年までに開発する予定らしいです。」

 

少数量産でギリギリなのに狂っている…確かに局地戦型は量産型よりも生産数少ないだろうけど。そういえばムラサメって安くないはずなのに主力みたいな扱いだったよな…経理と整備兵の苦悩が手にとれるようにわかるんだが…。

 

「…狂気には狂気ですか…あ、ここですね。」

 

伊沢さんは呆れたようにそう言い、ある倉庫の前で止まる。結構広いな、ここが水陸両用MSの開発拠点か…。あ、一人こちらに来る、案内かな?

 

「あ、鶴野君ですね、話は聞いています。こちらです」

 

案内の人に導かれて格納庫まで行くとそこにはすでに十機近いMSが並んでいた…ドーシード、ドーシード、ドーシード、ペスカトーレ、ドーシード、アッガイ、アッガイ、アッガイ、アッガイ、アッガイ(体育座り)…

 

「…え?」

「…は?」

 

アッガイ…だと…。ついでにペスカトーレも居やがる。…誰だGガンの機体再現した奴。

 

「どうしてアッガイが…」

 

「かわいいから」

 

「は?」

 

「かわいいから」

 

うんうん、アッガイはかわいい…じゃない。

 

「あの…開発していたのはドーシードでは…?」

 

「あぁ、あるじゃないか、別に試験中なのにこんなにあったって仕方ないだろ?別の機体があっても我々は気にしない、ちなみにアッガイのパーツの費用はは我々の給料でできている、それ以外は規格落ちのパーツだ。」

 

気にしないって…完全に趣味じゃないか…というか規格落ちとはいえパーツの横領じゃ…。

 

ゾクッ

 

あ、寒気を感じる、これはニュータイプとかそういうのじゃなくても解る、この殺気と怒りの感情は…。

 

「鶴野君…ちょっと外に出ていてくれます、ハイこれ、これでおいしいコーヒーでも…、そうそう、このコロニーの名物は和風アヒバーガーです、養殖もので油の多いマグロをさっぱりとしたソースでいただくらしいです。ぜひ食べてきてください、二時間くらい帰って来ないほうがいいですよ」

 

ものすごくいい笑顔(目が笑っていない)で伊沢さんが言う、渡されたお金は一万円的な奴だ。ハンバーガーを食べるとしたらかなり余るだろう…。迷惑料かな?とにかくここにいたらよくないことが起こりそうなので逃げよう。アッガイ(体育座り)の前でテンションを上げている開発班の人々に少し黙祷してから鶴野は格納庫から逃げるのであった。

 

 




L4宙域に宇宙要塞多すぎィ!!(アルテミスもL4)一応軌道は違います。ちなみに周回軌道が一番プラントに近いのは新星、最も遠いのはアルテミスです。

大西洋にはMS開発がばれました、まぁ彼らあの英国と米国の複合体ですし油断していなければそういう方面も強い国でしょう。

プラントって海鮮ジョンゴル鍋なるものが流行っていたらしいですね。海産物は輸入品だったのかもしれませんが、それでも中々に余裕のある話ですね。

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