C.E転生   作:asterism

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鉄血が終わりましたね。想像できていたとは言え、少しもやっとする終わりではありましたが、物語として見るのであればこんな結末もアリだろうと思います。何が悪いかといえば鉄華団の皆があのような生き方しかできなかったという事実なのではないでしょうか。…もちろん、ハッピーエンドは好きですし、彼らには幸せになってほしかったですけどね。


phase11 次の作戦に向けて

2月20日 アジアオセオニア共同体 スラバヤ 大統領府。

 

さて…私はなぜこの宗教家をここに引き入れたのだろうか…確かに評価の高い人物であるが、原作を知っていれば『危険人物』だの『要注意人物』だと思えてしまう。

 

目の前でご高説を垂れ流す盲目の宗教家を眺めるタクシンの心境はこんなところだろうか。

 

「マルキオ導師、あなたの戦争を厭うお気持ちは良くわかりました。しかし、残念ながら、我々には取れる手段がありません。」

 

「いえ…そういうことを望んでいるのではありません。ただ、時代を任せることのできる人のため…」

 

「ですから、それが無理だと言っているのです。わが国では思想信条の自由が保障されています。当然、あなたの新興宗教が何を言おうが自由です。しかし、我々が武力や資金を貸すわけにはいかんのです。国家が一宗教と結託して武力や金を融通してしまったら我が国の建国の精神に悖る可能性があります。要約すれば、『私の思う救世主のために力を貸せ』。確かに救世主とは聞こえがいいですが、宗教にとっての救世主とは他の宗教にとっては悪魔と同義になることがあります。そのような目的のために我が国の力を貸すことはできません。それが、我々が我々の力に対して負う責任です。」

 

 

まぁあんな荒んだ世界ではこのような人物の耳障りの良い言葉がウケるのだろう。それは仕方のないことだ。我が国は「多様性の容認」が国是だ。アホみたいにカオスな地域をまとめているのでそれが当然なのだが、そのおかげというかそのせいというか、非理事国との関係もほかの理事国より比較的良好である。もちろん「比較的」なので、関係の悪い国は存在するのだが。

 

「そうですか…ではクライン議長の積極的中立勧告には…」

 

「聞かないようにしていたのですが…あなたはプラントの特使かスパイですか?あのような一方的な宣言、乗る乗らない以前の話でしょう。あんなものに乗らずとも、我々は我々に不利益がない限り厳正中立を貫きますよ。それに、我々にとってプラントは必要ない。そうなるように国を作ってきたのですから。お引き取り願えますか?これ以上執務がたまっては国の運営に差し支える。」

 

嘘だ、私が二週間ほど休んだところでこの国は何の問題もなく回り続けるだろう。平時ならば私が裁可しなければならない書類というのは意外と少ない。そうでなければこのような巨大な国は回らない。ただ嘘でもなんでも、この宗教家と同じ空間から離れたかっただけだ。まぁ、「我が国に不利益がない」限りは中立でいてやる、戦略というものをよく考えるのだな。いや、戦術レベルでもマズいことがわかるか、アレは。通信能力の喪失など悪いことしか起こらない。占領地のインフラ利用すらできなくなるだろうに。

 

「あぁ、一つ言っておきますが、SEEDなるものが人類に存在するとして、話を聞く限りでは、とても世の中を導く程のものとは思えませんな、大体」

 

 

『そんな古の英雄のようなものが現代に生まれてたまるか』

 

 

これは、我々会合の総意である。キラやアスラン、シンのような人材の戦闘能力「は」素晴らしいしラクスやアスハのもはや洗脳クラスのカリスマも素晴らしいだろう。が、そんなものは国家運営に必要ないのだ。幾多の秀才、凡人によって運営され、万が一誰かが欠けても替えが効く国家。もちろん、命自体はかけがえのない、代わりの利かないものであるのは当然だ。しかし、国家元首や指揮官は代わりがいなければならないのだ。一個人に依存する社会など恐ろしくてたまらない。…そういえばなんか冊子置いてったけど何が書いてあるんだ…?新興宗教に有りがちなヤツだな、ハードカバーのきっちりした本だが。まぁ、笑い話にできるだろうし読んで…ん?

 

「宇宙空間に適応した人類進化の可能性…ニュータイプ論とイノベイター論?著者ジオン・ズム・ダイクン、イオリア・シュヘンベルグって…大先輩じゃねぇか!?」

 

たしか中身はニュータイプとイノベイターを混ぜたような話が展開されていたはずだ。こいつらは確かC.E初期の航空宇宙学者と文化人類学者兼心理学者だったはずだ…まさかコレやるためにそんな職業に就いたのか!?…考えないようにしよう、そして次の会合ではっちゃけてるバカをどう抑制するか話し合おう。マジで。どんな錆が出るかわからない。西村大佐みたいなのならまだマシだが。…なんだかんだで、MS運用論に多大な影響を与えているらしいし。

 

 

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2月23日、アジアオセオニア共同体 チャンタブーン 宇宙軍月艦隊司令部

 

 

「世界樹は崩壊…どうすんのこれ…」

 

「どうするって言われてもなぁ…まぁ中継点は中継点だったが無くてもかまわんだろう。完全にとは言わんがランカーで代用も効く」

 

「そのことなのですが、他の理事国から民間船のランカー使用許可要請が…」

 

「民間のことは文民に任せとけ、外務省あたりの領分だろ。中立国に、他国の艦船が入港することに何の問題もないんだがな。それにあの辺の守備は第10艦隊の領分だ」

 

阿部月艦隊司令が言う。ここでは先日起こった世界樹攻防戦の対応について話し合われていた。会合ではないので転生者でないものもいる。

 

「しかしMSでしたっけ?ここまで強力なものだとは…」

 

「オイオイ…訓練で使っといてそりゃないんじゃないの?」

 

「いやぁ…まぁ強力な兵器だってのはわかってたけどさ…ここまで一方的になるようなもんでもないと思ってたんだよ。」

 

「おそらくは戦術だろうね、なんだい、みんな好き勝手ドッグファイトやりやがって。MSの真価は無重力環境下での機動性にあるのだから、悪手にもほどがあるだろう。」

 

「対応策がまだ確立されてないからな、こっちも運用法が確立できてないせいでいろいろ煩雑になってるけど、とりあえず対MS戦術研究のレポートを大西洋に送っといた。早いとこ戦争終わらせてほしいし。」

 

まぁあの書き方だとカッカきてそうだけど、と笑いながら一人が言う。

 

「同感、さすがに偶発的な戦闘は望まんな、この戦争、敵の落としどころが不明瞭だ。現にZAFTに大規模作戦の兆候あり…、攻め込む先はどこだか分らんがな。」

 

奴らの言を信じるのなら独立だが、連中宇宙の確保狙ってそうだぞと、誰かが呟く。

 

「順当に行くなら新星だろう、もしくはプトレマイオスか…」

 

「まぁその辺が順当だろうな」

 

「いや地球侵攻という事もあり得るぞ、親プラント国家、アフリカ共同体に基地を建造する可能性だってある。もしかしたらウチに来るかもしれんぞ」

 

正確には次はヴィクトリア侵攻なので正解は地球侵攻である。

 

「…あのコロニー群でそこまでは無理だろ?正直、というか連中を「普通の軍隊」として考えるのなら国防でギリだぞ…、どうもそうじゃないらしいが」

 

「わからんぞ…世界樹ぶち壊した時点でな。あれじゃ無秩序に戦線拡大することもあり得る。月の自治都市群とウチ、あとスカンジナビア連名で抗議文書を送ったみたいだ。あそこを利用しているのはプラントと戦争している国だけじゃないからな。」

 

世界樹を利用しているのは理事国だけではないのだ、軍こそ駐留していたが、基本的に自由都市扱いであったのだ。特に月の自治都市郡はある意味死活問題だ、物資の輸入が大変になるのだから。

 

「あぁ、そういやそうか、まぁ中立化してなかったのが悪いといえばそこまでだが、まぁ、せめて崩壊は勘弁してほしかったな。」

 

「まったくだ、使いようがあるだろうに。」

 

「孫少佐、周辺警戒はどうなっている?」

 

阿部指令が黒髪の女性士官に聞く。

 

「問題はないさ、最新兵器を与えてくれたもの感謝してるよ。ただウチの荒くれ共に警戒任務なんか任せて大丈夫なのかい?」

 

孫少佐、軍人なんかより女海賊の首領のほうがよほど似合いそうな人だ、優秀ではあるが。シーマみたいなもんか。

 

「海兵ってのは動かしてこそ海兵だ、尤も宇宙で海兵というのもおかしな話だが」

 

「違いないね、まぁ名前なんてどうでもいいのさ。じゃ、私は任務に戻らせてもらうよ」

 

「あぁ、頼んだ。」

 

孫少佐が退出すると次の議題に移る。基本的に彼女は現場第一でこういう会議には出たがらない、なんで少佐にまで上がったんだろうか?

 

「問題は世界樹で使用された誘導兵器を無効化する装備だ。尤も完全な無効化とまではいかないらしいが」

 

「まぁ、近接信管で構わんだろうさ。要は損害を与えればいいのだ。それで帰ってくれるならラッキー、向かってくるならバカが冥土に行くだけだ。」

 

「そういえばコンペイトウのボース提督からムーアへのザフトの偵察行動が活発化しているとの報告がありますね…。」

 

「まぁ、あそこは、プラントに足りん物が多いからなぁ…、食糧生産コロニーに人口、取られたら厄介だな。だがそのためのコンペイトウだ。それにあそこのMS配備数はうちより多い、大丈夫だろう」

 

「しかしまぁ…なんとも挑発的なもんだ。ウチがMSを出していないせいもあるのか、割と我が物顔で警戒圏に入ってきやがる。」

 

「出せばいいのか?と言われると微妙だがな。プラント撤退戦の時の連中の行動からして、どうもZAFTという組織は独断専行の多いきらいがある。ヘタに対応すれば即戦闘じゃないか?」

 

独断専行は厳にこれを戒めるべき。AOCの軍人は独断専行をとても嫌う。人命最優先ではあるが。

 

「かかってくるのなら対応するだけの話だ。連中の寿命を縮めるだけだがな。こちらの防衛部隊の訓練は?」

 

「月全体で疾風3個大隊に迅雷3個中隊、銭がめの一個旅団が配備されている。各種自走砲や固定砲台も充実しているな。弾薬も規定通りなら五会戦分は確保できてるぞ」

 

「各都市MS一個大隊と一個中隊にMTの二個大隊か…弾薬はまぁ…3会戦と考えておけば間違いはないか?MS相手では消費が増えそうだ。月面ならば宇宙ほどではないにしろさぞ高速で動くことだろう。まぁもっとあればいいのだが贅沢は言えんな。」

 

まぁ、そう何回も同じような突撃を短期間で繰り返せるようなものでもないだろう。砲弾を浴びせ掛けることはできるし、既存の自走砲や砲台でも用は足りるのだ。気分的に新型があったほうがいいなとは思うが、戦争とは気分でやるものではない。一番危険なのはかぐやだな、グリマルディ戦線で巻き込まれかねない。と思いながら阿部指令は会議を続けるのであった。

 

 

/////////

3月9日

 

プラント アプリリウス1 評議会

 

「ヴィクトリア攻略は失敗、降下部隊の殆どは上空で迎撃され、降下に成功した部隊も攻略には至らず大損害を被りました。残存兵力はアフリカ共同体のアディスアベバへと撤退しました。」

 

レイ・ユウキはほら見ろ、言った通りじゃないか。と思いながらも感情を押し殺して発言する。

 

「敵にも大損害を与えられたのが救いだな。補給物資は?」

 

「アディスアベバ近郊へ投下しましたが連合により迎撃されすべて撃墜されました」

 

もとより高々二個大隊規模の戦力で落とせる重要拠点などないのだ。MSというのは無重力下では起動性の高く汎用性の高い兵器だが、重力下では現状機動性が足りないのだ。軌道降下という奇策も、MSという新兵器も、地上では現状大部隊の火力に押しつぶされるだろう。だから反対したのだ。攻め込むならばプトレマイオスだったであろう。そして、月のマスドライバーから敵対勢力のマスドライバー施設を飛翔体で高速爆撃すればよかったのだ。そして悠々と、補給の切れた敵の拠点を落とせばいい。AOCのムーアがあるが、連中は中立状態だから食料などは『人道的見地』から送るかもしれないが、武器弾薬の類は送らないだろう。世界樹では彼らの艦隊が接収されたらしいし、他の理事国に持っている感情もいいものではないのではないだろうか。

 

「アフリカ共同体も不甲斐ない…どうして自国の主要都市上空を他国に抑えられているのか…」

 

「弾道弾迎撃システムとはそういうものです。第一、艦隊が展開すれば良いのですから、特に位置など関係ないのですよ。これでも、安全に投下できる可能性の高い内陸部の都市を選んだのですが、やはりスエズを押えられているのはいろいろな意味で辛いですね。」

 

「ならばスエズを攻略すればよかろう、ナチュラルの兵器など物の数ではあるまい?弾薬さえあれば可能ではないか?」

 

好き勝手言ってくれる…、というか、その弾薬を十分に届ける手段がないのにどうするんだ。大体なんで私がここに説明に来ているんだ。私は特務隊の隊長だ、本部のスタッフは何をしているんだ?重力下でのMSの運用試験は不十分だろう。プラントでは十分な試験など不可能だし、そうそう地球であんなものをばれずに試験する方法もない。

 

「無理です、ヴィクトリア降下作戦でも問題点が分かったように、連合の迎撃能力は非常に高いです。降下時の損耗率が50%などという作戦は兵を殺すようなものです」

 

「ではどうすればいいのだね?」

 

「高機動な地上戦用兵器の開発を…そうですね、バクゥの開発を急がせてください、あとは目標の変更を考えるべきですね」

 

現状地上で役に立つのはあれくらいだろう。ザウートだって使い方を間違わなければ有用である…間違った使い方をするやつしかいないが。ディンは正直考えたやつの気が知れない。一般書籍に載っている理事国が運用している戦闘機のスペックを叩きつけてきたがそれで学習しただろうか。それでもどうやって下すのか?という問題が付きまとうが。しかしバクゥだって我が国…プラントの生産能力では厳しいものがあるが…全力でバクゥの生産に振り向けて月産70機…。万全の状況ならば100機は作れただろうがあいにくとそうではない。もとよりギリギリまで効率化していたところから、一定数作業員を入れ替えたのだから効率の向上など不可能なのだ。まぁ、全生産をバクゥに振り分けるなど不可能だ。宇宙でも戦いは続いている。これでは十分な兵力が揃うまで半年はかかる。その間に地上の友軍は駆逐されているだろうな。

 

「ふむ…ユウキ君、その迎撃システムとやらを麻痺させれば問題はないのかね?」

 

シーゲル・クライン議長がおもむろに問う、確かにそうではあるが…。

 

「は…それはそうですが…まさかニュートロンジャマーを!?」

 

それこそ悪手だ、下手をすれば中立国の対プラント参戦を助長する。

 

「正気かシーゲル!!」

 

ザラ国防委員長が声を荒らげる。

 

「正気だとも、もとより連中は核を使ってきたのだ、今はそれを再び我が国へと撃たれることを阻止せねば…」

 

と、事も無げな顔で言う。『大丈夫かコイツ…』その瞬間に抱いた感情は間違っていないと思う。

 

「ではこれより、本部より立案されていた対地球侵攻作戦、『オペレーション・ウロボロス』を発動する。」

 

おい、本部、出てこねぇクセになんてもんを提出してたんだ…終わった、本格的に、もとよりこの戦争はどう負けるかであったのに下手をすれば生存競争になりかねないところまで来てしまった。と。クライン議長を称賛する評議員たちを見ながらユウキは絶望する。

 

「ユウキ、こっちへ来い」

 

ザラ国防委員長が私を出口から連れ出す。

 

「端的に言ってどうなる?」

 

もはや何もかもわかりきっているような顔で聞いてくる。

 

「どうなるも何も、敵が増えるだけですよ。最悪、AOCの参戦も予想されます。ついでに、ただでさえよくなかった我々への感情が氷点下、いや絶対零度まで冷え込みますね。最悪は降伏すら受け入れるか怪しいでしょう」

 

「やはり…か」

 

「まぁ、負けないための作戦計画や兵器開発計画は進めていますが、絶対ではないことを理解してください。理事国は核を撃ってしまったのだから引き金が軽くなっている、というのはおそらく違うでしょう。それなのに、あのようなものを撃ち込むことは反対ですね。ザラ委員長の心中はお察ししますが、復讐の念などに囚われてプラントの独立、という本分を見失っては元も子もありません」

 

あの、ユニウス7崩壊後の各国のちぐはぐ対応を見るに、あの核はおそらくユーラシア系の部隊の独断専行であった可能性が高い。何より『プラントの自演』とまで言い切った大西洋や、『情報が錯綜しており、判断を下す段階にない。現在ユーラシア、プラント双方により詳しい情報を求めている』と反応を保留にしたAOC、多少焦ったように『当然の報いだ』と言い切ったユーラシア。部隊単位で持ち出せるものではないのでもっと上層部が絡んでいるだろうが、少なくとも、国の総意ではないのだろう、今はもっと管理を厳重にしているはずだ。「命令にない核を撃った」という事態は軍として大問題だろう。核爆弾は、宇宙ではただの強い爆弾程度のものだが、それでも戦略兵器だ。

いまだに扱いは大きい。

 

「そうか、施政者とは辛いな、レノア…すまない。わかった、レイ、苦労を掛けると思うが頼む…」

 

「尤も、手遅れかもしれませんけどね…」

 

「そうではないと思いたいものだな…」

 

どこか遠い目をしているパトリック・ザラ国防委員長のつぶやきにユウキは何も言えなかった。

 

/////////

大西洋連邦 アズラエルグループ ムルタ・アズラエルオフィス

 

 

「ハルバートンの馬鹿野郎めぇ!!今は派閥争いなんぞやってる時か!!」

 

「アズラエル理事落ち着いてください!!」

 

アズラエルはマカボニー製の高そうな机に拳を叩きつけながら叫ぶ。それを秘書が慌てた様子で諫める。

 

「コホン…取り乱しました。しかし、予想外の事態です。どうしましょうか、アームストロング大将」

 

本当に困った、モビルスーツの開発計画に参加できない。軍産複合体を嫌う派閥が軍内にいることは知っていたが、ここまで嫌われているとは思わなかった。ジブリール並みに話が通用しない。どうして将官になれたんだ。

 

「どう…と言われましても、何もできませんな。ご丁寧に国内ではなくオーブを巻き込んでヘリオポリスで開発しています。おまけにオーブの長はあの狂犬です。どのようなオプションも『大国の圧力に屈しない』でおしまいでしょうね」

 

国民より理念の大切なあの狂犬相手に政治屋が取れる手段などありません。アームストロング大将は言う。

 

「ですよねぇ…しかし問題ですよこれ、MS開発計画を進めるのはいいのですが、見てくださいよ、この参加企業を、どこもそんなもの作れる技術はあっても量産化する体力はないじゃないですか。唯一モルゲンレーテだけですよ…これではオーブのほうが先にMSを量産化しかねないし、AOCとの規格も合わせられない…何よりOSを貰ったは良いにせよ使えない…と、まぁ控えめに言ってMSの投入が遅れそうなんですよねぇ…ここまでやられて、相応の対価を払って貰ったものをタダで差し出したくはありませんし、何よりオーブです。あいつらやらかしてくれました。」

 

非ロゴス企業のみが参加しているため、企業としての力など無きに等しいものだ、正直これらの企業が開発が完了するころにはモルゲンレーテに買収されていても驚かない、それくらいには、我が国にとって取るに足らない企業だ。国の掲げる技術協定のせいでわが社の技術が使われているのが腹立たしい。

 

「仕方がない…あまり褒められた方法ではありませんが、こちらも勝手に進めさせていただきますか」

 

 

「ハルバートンは腐っても艦隊司令です。潰れると地味に困りますから、まぁ、それが妥当でしょう。」

 

宇宙では士官がポコポコ死にすぎだ。まぁ、私のようなモグラには関係のない話ですが。とアームストロング大将が言う。

 

「デトロイトの私の企業を使いましょう、メビウス・ゼロの生産を行っている所ですが、まぁ、アレはもう十分でしょう。AOUからもたらされた設計図を我々なりにアレンジしたものは既に完成していますし、幸いにも、コネクターその他の規格は従来のものを使用していましたからね。多少新規格のものが含まれていますが、そのあたりはうまく折り合いをつけるしかないでしょう」

 

「仕事が早いですな」

 

「当然、今は戦時ですよ、エド・ハイネマンのように一晩で傑作機の線を引く天才は生憎といませんが、数週間あれば我々なりにアレンジする事位はできます。」

 

まぁ、デスマーチにはなったので相応にボーナスを支給させておきましたが、とアズラエルは続け、苦笑する。

 

「なるほど、やはり、頼りになりますな。そういえば最近甥っ子はどうですか?」

 

「元気にしていますよ、あなたに似て事務処理能力が非常に高いので重宝しています。」

 

よくあるコネ入社というやつである。アームストロング大将はコネはコネでも使える奴しか送ってこないのが救いだが。

 

「それはよかった、いやはや、軍には向かない性格だったのでどうしたものかと…」

 

「確かに、穏やかすぎますからねぇ…まぁ、あなたも軍に向いているとは思えないですが」

 

 

「ハハハ、よく言われますよ。ではこれで、開発の件についてはお願いしますよ」

 

「えぇ、こちらとしても、負けられては困るので、全力を尽くさせていただきます。」

 

アームストロング大将が部屋を出たことを確認し、アズラエルは仕事に戻るのであった。

 

 

/////////

 

 

 

「…マジかよ…」

 

「あー…因みにだが、向こうの反応は知らぬ存ぜぬだ。ある意味当然だがな。むしろこっちが逮捕した工作員どもを開放しろとさ」

 

「…こっちもこっちで公開したら恥だしなぁ…なんで入れたんだ?」

 

「オーブに理想持っちゃった連中は稀にいる。国籍離脱とかは構わない、むしろ歓迎なんだが国内で活動している連中もいるからな。迷惑なことに今回のような隠れもいる。見たところオーブへの留学経験があるみたいだ、洗脳されたか?」

 

「そんな大それたことはしてないんじゃないかなぁ…感化されたくらいじゃねぇの?で、とりあえず、大規模サイバー攻撃仕掛けといた。こんなところの脆さまで日本っぽいとか…」

 

「やめて、なんか悲しくなってくる」

 

あのスパイの飼い主は、オーブだった、なんでもアスハ家直属の影集団…の駒らしい、取り調べでも「あんな強大な力を持つ国は周囲を侵略しだすに違いない」とか「オーブ侵略の意思を見せているAOCの企みを事前に阻止しただけだ」という香ばしい発言を頂いている。まぁ、関係を洗って、オーブの諜報網の一部なりとも壊せたのはいいのだが、まさか白兎にまで根を張っているとは…というか誰がいるか、あんな扱い辛い民衆。

 

「力は力でしかないだろうに、使い道さえ間違わなきゃ良いんだよ。第一、うちの軍備って防衛特化…じゃ、なくなってたな。うん、外征の可能な軍備にはなっている、表面上はな。」

 

運用してみないと子細なところまでわからん。あと、扱う弾薬増えて補給担当者増やす羽目になったと防衛長官が言う。

 

「それでG01のデータを盗む…と?G01ってあれただの高機動型だろ?Gシリーズなら水中での戦闘を考慮したG02アスクレプオス(仮)か空戦型のG04ブラストじゃないのか?オーブ侵略するんなら、G01よりフラッグやドー…ソードフィッシュのほうが活躍するだろうさ」

 

「ツリー的に言えばムーバブルフレーム実験実証機から伸びているが、コンセプトとしては疾風を順当に高性能化しただけの機体だからな。七〇式のようなオプションもなしに空も飛べないし、海に落ちても、パイロットが整備班に恨み言吐かれながらデッキ掃除するくらいで済むだろうが…水中戦を想定しているわけでもない。やったらどんな不具合があるかわからんな。それとG02は火照(ホアカリ)に決定したぞ、詳しくは後で言う」

 

 

機能停止するとかそういうわけでもないが、水中戦をやらせる指揮官がいたら俺はそいつの指揮能力を疑う、と湯野教授は続ける。

 

「まぁ、専門の機体があるんだからそれに任せるさ。…で?これどうすんのさ?あまり大々的に追及するわけにもいかんし…」

 

スパイに侵入されたのは完全にこちらの落ち度だし、大々的に報道するわけにもいかない、正直手詰まりである。

 

「なんなんだろうなぁ…ホント…まぁ、向こうの要求に応えるのはナシだがな、これを機に大掃除と洒落込むか?」

 

「言われなくとも掃除中だ。というかオーブって防諜ザルな割にスパイだけ素晴らしいから謎…」

 

一人がある資料を皆に回す。

 

「オーブ・プラント秘密貿易協定…?あぁ、アレか。中立国だから表向きは交易していないことになっているけど、プラントの製品をラベル変えて売ってたとかそういう設定があったっけ…」

 

「文書にされてるんだな…そしてそれが漏れ出してるって…」

 

「秘密()」

 

「それ俺らが言ってもブーメランにしかならんぞ。まぁ、この情報は大規模サイバー攻撃仕掛けたその恩恵みたいなもんだ、取りあえずの行動だったが、まぁ、そこそこ使えそうなもんが拾えたもんだ。」

 

「…まぁ中立だし、いいんじゃねーの?兵器融通してるとかそういう話じゃないんだし。」

 

ナチに協力してたアメリカのいくつかの企業なんかよりは可愛いもんだろ、と誰かが言う。

 

「ある意味ウチも融通しているがな、ま、ほぼ強奪なんでプラント側も理解してくれているがな、むしろ向こうさんに勧誘されたぜ」

 

世界樹において兵器が接収された件について話しているのだろう。

 

「検討の価値すらないな、こちらのことを獣程度にしか思っていなくとも驚けないだけの行動をしてくれているだけに」

 

「だよなぁ…」

 

会議の面々は何とも言えないような顔でため息を吐くと、話題を切り替え、新たなGシリーズの情報でテンションを上げるのであった。




正直、宇宙線が飛び交う宇宙で核爆弾ってただの強い爆弾…まぁ、EMPは発生しますけどね。ついでに、核分裂を封じても、純粋水爆があるじゃない(据わった目)。レーザー核融合炉が実用化されているのにどうしてSF御用達のレーザー水爆が無いのか…。仮に条約などで装備が禁止されていたとしても、あの世界の振り切れた連中を見ているとニュートロンジャマーなんか投下されたら作っちゃうと思うんですけど…。小型化の問題かな…?

アームストロングさんはオリキャラです、ハルバートン准将のの対立派閥の長的な感じですね。原作では、MSの有用性を上層部が認めない云々がありましたがこちらでは半信半疑とはいえこの時期で認めているので、ちなみにアームストロング大将のイメージはゴップですw全然ストロングじゃねぇw

Gシリーズ

RX-G-02 火照(モデルはガンダムアスクレプオス)

武装
アイアンネイル
(内臓選択式武装)
90㎜機関砲
フォノンメーザー
ビームガン

ビームサーベル『小鴉丸』

ガンダムWデュアルストーリー、G-unitに登場したガンダムアスクレプオスをモデルにしたAOCのGシリーズ二番機、近接戦闘モードへの変形機構を備えており近接戦モードには水中戦闘能力もあるが、浅瀬での活動しかできない。

RX-G-04ブラスト(モデルはガンダムキュリオス)

57㎜高エネルギービームライフル『シューラ・ヴァラ』
ビームサブマシンガン『雷神』
ビームサーベル『小鴉丸』
クローシールド

各種オプションパック

ガンダム00に登場したガンダムキュリオスがモデルのGシリーズ三番機、GNドライブは再現されていない。現行の規格を採用した初の可変機であり、可変機用装備のテストヘッドとして作れらている。MS形態でも大気圏内での飛行は可能だが、推進剤を大量に消費するため推奨されない。

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