祝MG TR-1ヘイルズ!!いやもう…、待望というかなんというか…。
俺の名前はショーン・ミタデラ…、義手ではないが、本名だ。というわけで、こっちにきたときはだいぶ驚いた。光れェッ!!されるのか?それとも砂鼠か?砂鼠にならにゃいかんのか?と考えもしたが、当時は医学生だったので、医者になって、たまたま受けて採用されてしまった赤十字に入社したわけだ…が。
「それでジャンク屋ギルドに出向とか…人生わからんもんだな」
現在、ジャンク屋ギルドの管轄するラグランジュ4の小拠点、「ジャンク1」において医務室の番をしている。あぁ、MSには乗れない、小型宇宙船免許と小型無重力空間作業機械免許は取ったけどそれじゃMAすら動かせない。…何をトチ狂ったのか宇宙空間救命救急士免許という、レンジャーになる方が簡単なんじゃね?という免許を取らされかけたが、主に体力的な面でそんなものがとれるわけがないので全力でお断りさせていただいた。そもそも、一応コーディネイターではあるが、遺伝子疾患治療のためのものなのだから、多くを望むのは無理という話だ。
「しかしまぁ…よくも、こんな古い物をここまで復旧できたもんだ」
ジャンク1はAOCがムーアコロニー群を建設する際に作った、工員たちの生活施設だ。一定のレクリエーション施設や、緑地なども含んでいるため、民間企業製の浮きドックを近くに付ければ、それなりの拠点にはなるのだ。…港湾設備の許容量を超えた船舶の係留こそ、ワイヤーでつないでいるのみだが。
「医療設備は、最新とまでいかなくとも優良、…時々起こる患者同士のケンカの仲裁は警備の人に任せている。まぁ、いい職場だろうな。これで、コーヒー好きな医者の同僚がいれば面白いが…さすがにいたらビビるな」
とつぶやき、ZAFTへ送還する負傷者のカルテを入れたディスクを梱包して、コーラ缶を呷る。…このレトロフューチャーじみたコーラ缶はどうにかならなかったのだろうか?いくらなんでも、1985年に初めて宇宙で飲まれた缶そのままというのはどうなんだ。って、「復刻缶」と印字されてる。妙に高いと思ったらこれ缶の値段か…、輸送費だと思ってた。それにしても謎の企画である。
「しかし、最近ZAFT兵の患者増えたな…」
カルテに目を通しながら呟く。最近ZAFTの怪我人が増えた、怪我人は、完治とまでいかないにしろ、移動に耐えるようになったら所属国へ送還されることになっている。まぁ宇宙で拾った奴が重症のことの方が珍しいので、骨折の処置や、軽い酸欠などの治療を施して早々にお帰り願うのだが、ZAFT兵の相手は疲れる。コーディネイター至上主義…ではないな、プラント至上主義とでも言えばいいのだろうか?こちらがコーディネイターと知っても罵倒してくる。こちらとしても、仲間意識など持っていないし、的外れな罵倒など煩いだけで大したダメージはないのだが。
さて、仕事も終わったことだし、と傭兵への依頼が纏められたサイトのページを開く。登録をしていなくとも依頼だけを見る事ができ、暇潰しになる。たまに手の込んだムービーまで準備している依頼主がいて面白い。…もしかして同類がいるのでは?と思うようなムービーもあるが。
依頼:旧キサラギ特殊生物・遺伝子研究所探索
依頼主:キサラギ
報酬:120万E$(備考:全額先払い)
突っ込むのはダメなんだろうな…、いきなりヒデェのを引いた。と思いながら見なかったことにして長々と書かれている説明文には目を通さずにページを閉じる。なんだか
「おーい、飯だぞ~」
食事を買いに行っていた同僚が帰ってきた。大西洋資本のチャイニーズデリか…。ジャンク屋のステーションには、各国資本の外食産業の店が入っている。料理とかする方が珍しいので毎日賑わっている。
「何を買ってきたんだ?」
「ほれ、ジャンクまん」
「またかよ…」
最近、ジャンク屋の連中が名物を作ろうとして作っていた料理が出てきて溜息を吐く。安物菓子にでも使われていそうな謎のしつこいクリームの入った中華まんだ。…間違っても食事という感じではない。売り上げは芳しくないようだ。当然である。ジャンクと銘打つからと言って中身をジャンクフードにする必要はないのだ。…というか中身ジャンクフードでもほかに何かあっただろ…。
「あの店まで行ったんならもっとほかのあっただろ?上海風あんかけ焼きそばとか…エビチリ、排骨飯もいいな…」
大西洋資本だからなのか、それともその企業がとんでもなく節操なしなのか、台湾料理や日本生まれの中華料理なども取り入れている店なので天津飯などもある。中国生まれの人からすると物凄く邪道な店なんだろうな…。
「出てくるの早いし、安いからな」
確かに、カウンター横の蒸篭風保温ケースに入れられた中華まんは出てくるのが速い…。でも中華まんなら肉まんでもカレーまんでも変わらんじゃないか…。
「飯にはならん…」
「それもそうだな、でも俺トゥインキーとか好きだから」
「それはこれを買う理由になんねーよ」
笑いながら同僚が席に着くのを見ながら、ジャンクまんにかぶりつく。取り敢えず食材に罪はないし、無駄遣いはしたくない、メニューを指定しなかった自分の責任もある。
「そういえば港のほうが騒がしかったがなんかあったのか?」
怪我人がいたのなら今頃飯なんか食ってる場合じゃないのだから、何かすごい物でも見つかったのだろう。と思いながら、大体飯屋の類は港方面にあるので、何か知っているのではないかと同僚に聞く。
「あぁ、えっと…ホームだったか?の連中が、オーブだかの新型MSを拾ったらしいぞ」
「マジか?」
レッドフレームか…関わることはないと思っていたが、存外近くにいるものだな。と思いながら食事を終える。
「…そういやそろそろ交代時間じゃねーの?」
別にレッドフレームが見たいとかそういうんじゃない、時間外労働が嫌なだけだ。そう、さっさと帰りたいだけなのだ。居住区画へ行くのに少し港側を通って買い食いしていきたい気分だが気分なので仕方ないだろう。
「あー…、まぁ時間通り引継ぎが終わることのほうが珍しいし、待ってやろうぜ」
「ケッ!!時間にルーズな連中が多くて困るぜ」
「お前が細かすぎるんだ」
いや、せめてシフトは守れよ…。と思いながらも、グダグダなここの生活を心地いいものに感じている自分がいることに気づき苦笑する。集まった連中が連中だからか、堅苦しい枠が作られても中でみんな好き勝手に動いているのだ。「自由が減った」と不満に思う連中はいるが。今だって十分に自由だ。ついた
因みにショーンが転生者であることは、会合に気づかれていません。うまくやったというより、網が張られた場所通らなかっただけですが。