Fate/Grand Order~農民は人理修復を成し得るのか?~ 作:汰華盧顧
「ふぅ…………」
よし、止められたな。
令呪ブーストの掛かったバルムンクを止められるかは博打だったけど、何とかなって良かった。
だけど、切り札の一つを使うことになるとは思わなかったな。
『熾天覆う七枚の椎茸』はボクの防御系の奥義の中ではトップクラスの性能を誇るが、代償としてボクの宝具『農民の食料庫』に貯蔵してある菌類を消費する。
一枚二枚なら大して痛手じゃないけど、今回は最大展開の七枚だ。消費量も洒落にならない。次に出せるのはギリギリ一枚って所だろう。戻ったら何処かで栽培しないと。
(問題は帰れるかどうか………)
脳きn……負けず嫌いの節があるオルタが二度目の撤退を許してくれるかどうかだけど───
「マスター、状況も悪いですし、ここは撤退したほうが…………」
「────────」
「マスター?」
「────────────きゅう…」
「………………」
背中に何か柔らかいものがぶつかる。横目で様子を見てみると、そこには目を回して気絶したオルタが寄りかかっていた。
………バルムンクの迫力に耐えきれなかったのか?変なところでヘタレだな……。
まあこうなったら仕方ない。オルタには悪いけど、勝手に撤退するとしよう。
「ファヴニール、今から根っこを斬るから、そしたら城に向かって飛んでくれないか?報酬として何か旨いものでも作るからさ。なあ、どうだ?」
「…………グルル」
「よっし、交渉成立だ」
オルタを背負い、さつま芋の蔓で縛って固定する。
これで落っこちる心配は無くなったな。
それじゃあ次は……………
「『約束された勝利の剣』を封じる!
──野菜真拳奥義──『ダイナミック差し入れ』!さあ召し上がれ!」
おやつにと作っておいた特大どら焼きをアルトリアの頭上に放り投げる。詠唱中だったアルトリアは一瞬目を見開くもすぐに目をそらす。……が、本能には逆らえなかったらしい。ボクが瞬きをした瞬間、アルトリアはどら焼きに飛び付いていた。
「なにやってんだセイバー!?」
「ぐむぎゅ!?(しまった!?)」
予想通り、アルトリアなら食いつくと思っていた。
特大どら焼きならアルトリアでも食べきるのに30秒は掛かる。それだけあれば十分だ。
「──野菜真拳奥義──『木綿ドー召喚』!!」
空中に放られた木綿豆腐は自動的に分割、ブロックの一つ一つがグチュグチュと音をたてて膨張していく。
やがてそれは人型に、いや、コマンドーへと姿を変え、荒ぶる鷹のポーズで地面に降り立つ。
そうして出来たのは、全身真っ白無表情の筋肉モリモリマッチョマンの集団。どこから見ても異様な集団だった。
「作戦開始!」
ボクの号令で一斉に動き始める木綿ドー達。半数はチェーンソーでファヴニールに絡み付く根の伐採を、残りの半分はカルデア組の妨害をし始める。
最初の犠牲者はジークフリートだった。
膝をつく彼を囲み、瞬時に仕事を終わらせ次の獲物へ向かう。残されたのは、首から下を地面に埋められ晒し首にされ、顔に〈竜殺し(笑)〉と落書きされた無惨な姿のジークフリート。
彼は虚ろな瞳で「すまない………竜殺し(笑)ですまない………」と呟き続けていた。
次の獲物はジャンヌだった。
果敢に木綿ドーに挑むも、旗を奪われ、それを自慢するように振り回される。
「ああっ!?そ、それは私の旗です!か、返してください~~~!!」
旗を取り戻そうとぴょんぴょん跳ねるが、身長差があって届かない。目にうっすらと涙を浮かべたジャンヌは完全に弄ばれていた。
「まあ!これもくださるの?ふふっ、ありがとう♪」
「マリー!そんなもの後にし「これ持っててくださる?」ふがッ!?」
それを助けに行こうとするマリーとアマデウス。だがそれは花束を大量に渡しに来る一部の木綿ドーによって阻まれる。
満更でもないマリーもわざわざ一つずつお礼をいいながら受け取るためにいっこうに先に進めない。いつもは嗜めるアマデウスも荷物持ちにされて顔が見えない状態だ。
残りの面子も、アルトリアはいつのまにか席に着かされ、熱いお茶と大量のどら焼きによる接待で蕩けているし、クー・フーリンは顔面に激辛麻婆豆腐でノックアウト。
ぐだ男はなぜか木綿ドー達に胴上げされて顔面蒼白、口を押さえて助けを求め、マシュが「待っててください!今すぐバケツを持ってきます!」と、パニックのあまり謎の珍行動。
残るエミヤは一体の木綿ドーを『壊れた幻想』で粉々にしたのだが、「ふざけやがって!!」とぶちギレた木綿ドー達にラディッシュランチャーによる集中爆撃の迎撃で手一杯。
─────一番の脅威であるファヴニールが放置されてるってどういうことなの。
しかも何このカオスな状況。やった張本人が言うのもなんだけどさ。
「─────!」
「よし、総員!足止めに専念‼ファヴニール、飛んで!」
「グルオオォオ!」
角にしがみついた所で飛び立ち、空中の魔法陣を砕いて一気に上昇。オルレアンへと進路を変えた。
◇=====◇
「───さて、色々と考えを改める必要が出てきたな………」
ボクはオルタの護衛としての仕事をしつつも、シナリオには出来る限り手を出さないつもりでいた。下手に手を出せばぐだ男達の成長を妨げたりするかもしれないならだ。
だけどもう、そんなことを言ってる場合じゃなくなってきた。
オルタは真っ正面から圧倒的な力で叩き潰すやり方を好む。この脳筋チックなやり方は原作では通用していた。だけどそれは相手の戦力がショボかったからだ。戦力が揃ってからは通用せず、ファヴニールを討ち取られてオルレアンに逃げ帰ることになっていたし。
別にここまではシナリオ通りだからいい。だけど今回は相手側の戦力が最初から整っていて、オルタは原作のような残虐さを無くしてギャグキャラと化している。
おまけに慢心もしているときた!
……まずい………非常にまずい…………………。
今回助かったのは彼らがボクを脅威と見なさずに油断したから助かっただけ。このままだと次の会合で確実に殺られるだろう。
それは非常に宜しくない。
もしオルタが倒され、聖杯が彼らの手に渡ればその地点で終了。シナリオよりも早く終わってしまうことで彼らが経験を積めず、現地サーヴァント達とも深い絆を結ぶことが出来なくなってしまう。そうなったら最悪だ。
採集……じゃない、最終決戦の時に支障が出るかもしれない。
それにだ。ここでの戦いや経験はオルタの成長にも影響がある。だからその辺でアッサリ殺られる訳にはいかないのだ。
「────戻ったらジル・ド・レェさんと相談しなきゃなぁ……」
「グルルルルルル……」
「ああ、その前に報酬だったね。ちゃんと用意するから」
帰ったら忙しくなるな。
ジル・ド・レェとの今後の相談にファヴニールのご飯の用意。ああそれと茸の栽培もしとかないと。オルタに頼んで城の一角を使わせてもらおう。