無課金のドライヤーには厳しいものです。
この話は遠坂凛目線です
私は学生のころ、第5次聖杯戦争というものに参戦した。お目当てのセイバーのサーヴァントを召喚することはできなかったが、アーチャーのサーヴァントを召喚することに成功する。そして聖杯戦争の序盤、色々あって士郎と同盟関係を結ぶことになる。最初はとことん利用してやろうと、士郎とはあくまで魔術師としての関係だけで接すると決めたのである。利用価値が無くては切り捨てる、なぜならばこれは戦争であり戦うかもしれないかもしれない相手と馴れ馴れしくし過ぎるのは後にも影響が出るかもしれないからだ。
だが士郎と関わっていく内に自身も気づかぬ内にある情を抱く事になる。しかし士郎の精神は徐々に消耗していった。士郎の大切な人達が聖杯戦争によって死んでいく。士郎の精神に止めを刺したのは桜を士郎自らの手で殺した時だった。私が「この世全ての悪」に魅入られ止める事が出来なくなった桜を殺そう、それが姉としての最後の務めだと思っていた。しかし桜の攻撃を受けてしまいそのまま意識を手放した。幸いにもアーチャーが身を呈して守ってくれたおかげで気絶程度で済んだのだが、目覚めた時には全てが終わっていた。士郎の心はすでに摩耗しており、何かを理由にしないと動けない状態まで追いやられていた。
これで士郎との同盟関係は終わり。利用価値のなくなった相手との馴れ合いは無駄な事だと、そう思っていた。
しかし、私の中で士郎はもう同盟関係有無の問題では無くなっていた。こんな彼を見たくない。そう思った私は士郎にこう言った。
「士郎、今は塞ぎ込んでいる暇はないわ。私たちが為すべきことをするのよ。死んでいったみんなのためにも」
これが私の甘い所であり、心の贅肉でもあるんだろう。私はこの言葉をその程度のものだとしか考えていなかった。
しかしこの言葉が全ての始まりであったのだ。もしこの言葉を士郎にかけなければ、士郎が二度と戻れぬ修羅の道へと身を堕とすことはなかったのだろう。
そうして私と士郎は全ての元凶である「この世全ての悪」に汚染された大聖杯を破壊するべく大空洞に向かったのである。事は順調に進んでいたのだが、突如溢れ出したのだ。私は逃げる最中、足元にあった小さな石ころを踏んでしまい足をくじいてしまう。士郎が私をおぶって逃げたが、このままでは間に合わないとふんだ士郎は私だけを大空洞の外へ放り出し、そのまま泥に取り込まれてしまう。すぐに助けに行きたかったが私まで泥に取り込まれてしまっては士郎の行為が無駄になると思い。泥が引くまで大空洞の外で待ち続けた。
泥が引いた後、急いで士郎を探した。意識を失っている士郎をすぐに見つけることができ、身体に異常はなかったので安心した私は士郎を武家屋敷まで運び、そこで1週間惜しむことなく士郎の療養に務めた。しかし8日目の朝、士郎が寝ている部屋まで行くがそこには寝ているはずの士郎の姿はなかった。街中を歩き回り士郎の姿を探したがついには見つけることは叶わなかった。
そして3年たったある日、士郎は突然姿を現した。それは私の前ではない。テレビの放送でだ。その男はとある国を1ヶ月で滅ぼした悪魔だ、といった内容でだ。
私には到底信じられないことだった。というのも士郎が正義の味方を目指してことを私は士郎の口から耳にしたことがあったからだ。
だが、実際に士郎は士郎らしからぬ事をしている。理由を問いただしくたくなった私は家に伝わるとある剣の設計図を手にする。その設計図で作られる剣の名は宝石剣キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグ、通称宝石剣ゼルレッチ。この設計図は遠坂家の家宝の様なもので、遠坂の魔術師がたどり着かなければならないゼルレッチからの宿題。今、馬鹿げた強さをもつ士郎と渡り合うためにはこの剣を作るしかない、そう感じた私は剣を作る事に専念するのだった。
そして数ヶ月かけ、奇跡的に宝石剣ゼルレッチを作り出す事に成功した私は少し性能を確認した後すぐに士郎のもとに向かった。
士郎は何千何万といった軍隊に囲まれており、それでもなお倒れる事はなく蹂躙を続けている。私は士郎とどうしても対話がしたいので軍隊の間をするりと抜け私は前にでていく。周りは私がここにいる事に唖然としていたが、軍隊の1人の男性に声をかけられる。
「どうして一般人がここにいるんだ!早く安全な場所まで退避しろ!」
確かにそうだ。何の意味もなく今の士郎の前に出て行く事は自殺行為に等しい。建前が必要だと思った私は声をかけてくれた男性に一言告げる。
「彼は私が倒しましょう」
そして誰にも聞こえないように独り言をつぶやく。
「私の心の贅肉によって生まれた彼をね」
そして士郎の前に立つ。聞きたいことはたくさんある。なぜ突然姿を消したのよ!どうして何も言ってくれなかったのよ!なぜこんな事をしているの!など他にも言いたいことがあったがぐっと堪え私は私らしく士郎に問いかける事にした。
「久しぶりね、士郎。私が見ない間に随分と変わっちゃったんじゃない?」
士郎はピクリと眉を動かした。てっきり罵詈雑言を浴びせられるのだろうと思っていたのだろう。そして彼がゆっくりと口を開く。
「やれやれ遠坂は随分と綺麗でお淑やかになったものだ。時の歳月というものを感じさせられるよまったく」
「そーゆー士郎は随分アーチャーの言葉遣いに似てきているのね」
「あいつとどうしても似てしまうのは仕方のない事だ。なにせ、同一人物なのだから」
そう言った士郎は双剣を構える。まるでこれ以上の対話は無駄だと言わんばかりに。
「どうしても戦わなくちゃいけないの?」
「ああ、こちらとしてもここで遠坂と戦うのは好都合だ」
そして戦闘が開始された。その戦いは3日間にも及んだ。士郎がどうしてこれほどの魔力供給を受けているかはわからないが、私の剣は並行世界からの魔力を無限に受け取ることのできる宝石剣。持久戦になってしまっては私の勝利はほぼ揺るぎないものだったのだ。
そして士郎は地面に伏した。これでようやく士郎と対話ができると思った私は士郎に声をかけようとした。その時だった、士郎から予想だにしない言葉が口から出たのだった。
「最後まで迷惑をかけてすまなかった」と、
この時、私は初めて士郎のしようとしていることがわかったのだ。持っていた宝石剣を無意識に手放し、口を押さえ目に涙を溜めてしまう。この戦いは間違いなく世界に放送されている。世界が士郎の処刑を望んでいる。ここで士郎を断罪してしまわないと士郎のしてきたことが無駄になってしまう。助けてあげたいが世界はそれを許さない。
私は落ちた宝石剣を拾い士郎に向ける。士郎は既に瀕死。せめて、せめてもの救いを士郎に、士郎に痛みを感じさせないように、士郎の遺体が晒し者にならないように、どうか士郎が安らかに眠れますように。そう思いながら士郎を跡形もなく火葬した。
そして私は宝石剣を高々に上げる。遠くから歓声が聞こえる。恐らくずっとあの軍隊が見ていたのだろう。そうして世界は平和に戻り、士郎はどこの出身かもわからない突如現れた世界最大の悪人として歴史に名を刻み、私は世界を救った女神として名を刻む。
あれから10年たった私は日記に「彼がまた現れるのであれば私は彼を止めるだろう」と書き留め、私という物語を終了させた。
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「…夢か」
目が覚めるとそこはかつてあの頃に見慣れたはずの部屋だった。ふわぁ〜、と欠伸をした後あたりを見渡す。
「立香達には聖杯を破壊しに行ってもらってたんだっけ」
そう呟いて夢で見た事を思い出す。もし、私の甘さ、心の贅肉などなければ士郎はこのような事にはならなかったのか。そう生きている時も今も何度も何度も自問自答を繰り返す。だがいつも答えはIFなどない、で帰結してしまうのだ。時間は止まる事なく進んでいく。それは不変であり、過去は紛れもない事実なのだからと。
「んー私らしくもない!」
頬を二回叩き、なんとかぽーっとしている頭を呼び覚ます。
「さあ立香達が帰ってくるまで、ご飯でも作って上げますか!」
いくら考えても仕方のないことは頭の隅に置いておこう。今は任務を終えた者たちへの労いをしなければ、とりあえずご飯を準備しようかなと思った時だった。
「その必要には及ばんよ」
後ろから声が聞こえる。私は宝石剣を取り出し、声が聞こえてくる方へとむけた。だがその姿を見た瞬間に目を見開いてしまう。
「そんなに驚いてしまっては淑女の名泣くぞ凛」
やれやれと首を振り降参だと両手を少しあげる人物はそれはもう見た事のある男だった。褐色の肌、逆立った白い髪、赤い外套を纏った男は私が第5次聖杯戦争で呼び出したサーヴァントであったのだから。
「どうしてここにいるのよ!アーチャー!」
「久しぶりだな凛、といっても君と共に戦ったのは私であり私ではないのだがな」
となぜか得意げに笑うアーチャー、いやエミヤがいた。
はい!ここで3人目のエミヤさんですね。どんだけ好きなんだよと言われても構いません。ええ、なぜならfate作品で1番好きなキャラクターです。
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ちなみにこの話は30話で目処をつけたいと思っています。