真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月
<< 前の話 次の話 >>

104 / 201
第百四話

 

 

 

 

「本陣の設営、終わりました」

「両翼もやで」

「一応……全部完了です」

「あいよー、お疲れさん」

 

 

一刀、真桜、斗詩の報告を聞きながら煙管を吸い、プカプカと煙を上げる。蜀が攻めてくる事を聞いてから俺達は街から出て近くの城へと移った。街の人達が被害を被らない様にする為とそちらの方が迎え撃ち易いからだ。

 

 

「ご苦労さま。なら、すぐに陣を展開させましょう。向こうは既にお待ちかねよ?」

「……大軍団だな」

「そーだな」

 

 

大将の言葉に一刀が平野に展開する蜀軍を見回す。一刀の言葉に俺は同意する。どんだけ戦力かき集めてきたんだか。

 

 

「そうかしら?」

「報告やったら、約五万やったっけ?」

「旗は……劉、関、張、趙……」

 

 

数もさることながら一流どころの武将揃い。本来なら籠城して明日には帰ってくるであろう春蘭達を待つのが一番なのだが……

 

 

「最初から守りに入るようでは、覇者の振る舞いとは言えないでしょう。そんな弱気な手を打っては、これから戦う敵全てに見くびられることになる」

「いや……五倍以上の兵力に対して籠城しても誰も文句言わないと思う」

 

 

俺の意見は一刀寄りだな。流石に五倍の敵とか無理すぎる。さながらフリーザに挑んだバーダック如くだよ。

 

 

「それにこの戦いで負けたら、劣勢でも相変わらず攻めに出た覇王とか、項羽の再来とかって言われるんじゃないか?」

「だからこそよ。ここで勝てば、我が曹魏の強さを一層天下に示すことが出来る。こちらを攻めようとしている連中にも、いい牽制になるでしょうよ」

「そうすりゃみんなの負担も減る……か」

 

 

ここを終点と思わずに先を見越して……か。俺みたいな一般人とはそれこそ感覚が違うんだろうな。

 

 

「その為には一刀、純一。その命、賭けてもらう必要があるわ……頼むわよ」

「へぇ……」

「……ああ」

 

 

大将の言葉に俺は感心して一刀はポカンとしていた。大将は俺達のリアクションに小首を傾げる。

 

 

「……どうしたの一刀、変な顔をして。純一もニヤニヤ笑うなんて何よ?」

「いや、そうやって面と向かって頼むなんて言われたの、そういやはじめてだなー、と思ってさ……」

「うんうん……遂に大将も素直……痛だだだだっ!?」

「そうだったかしら?」

「華琳様!出陣の準備、終わりました!いつでも城を出ての展開が可能です……って何をしてるのですか?」

 

 

会話の最中に大将がごくナチュラルに俺の右足を踏んでいる。余計な口出しはするなってか!?

 

 

「何でもないわ……桂花、流石に仕事が早いわね」

「はっ。各所の指揮はどうなさいますか?」

 

 

そのまま続けられる会話。皆、注目しよう?秋月さんが踏まれてるのよ?

 

 

「中央は私自身が率いるわ。左右は桂花と風で分担しなさい」

「俺はどうする?」

「一刀は真桜と共にで全体を見渡しておきなさい。戦場の全てを俯瞰し、何かあったらすぐに援軍を廻すこと。それが貴方の仕事よ」

「……了解。頑張ってみる」

 

 

着々と話は進むけど……俺は?

 

 

「先日の反董卓の戦で、諸葛亮と関羽の指揮の癖は把握しております。必ずや連中の虚を突いて見せましょう!」

「ええ。よろしく……それと純一、大河、斗詩は一刀と共に戦局を見なさい。そして援軍を廻す際には貴方達が率いる事」

 

 

成る程、援軍を廻すにしても各所の指揮は必要って事か。

 

 

「なあ華琳。それで……勝てるのか?」

「勝つのよ」

 

 

不安げに聞く一刀に大将は間髪入れずに答えた。ここまで来たらやるしかないってね。

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

さて、戦の前に両陣営の大将により舌戦が行われているのですが……当然の事ながら俺達に聞こえる筈がない……筈がないのだが大将が劉備を言い負かしている様にしか見えない。

 

 

「……っと……秋……」

 

 

そもそもの話をすると大将もこの状況になる事を見越してたのかもだよなぁ……

 

 

「聞い……月……」

 

 

だとすれば……痛いっ!?突如足に痛みが走る。見てみれば桂花が俺の左足を踏んでいた。さっきは大将に右を踏まれたので左右の足を踏まれちまった。

 

 

「私を無視するなんて良い度胸ね?」

「すまん……ちっと考え事してた」

 

 

足を踏まれたまま睨まれる。あ、ヤバい。近距離で桂花が俺を見上げてるって。ちょっとしたシチュみたい。

 

 

「まったく……さっきの質問だけど、ねねが何処に行ったか知らない?誰も姿を見てないそうなのよ」

「ああ、ねねなら蜀が攻めてきたって報が来たときに大将から別命受けて国を離れたよ」

 

 

蜀が来たと聞いてから大将はねねに別命を下していた。なんで俺がそれを知っているかと言えば俺もそれに少し関わっているからだ。

 

 

「……ししょー」

「ん、なんだいつもの元気はどうした大河」

 

 

桂花の疑問に答えたら今度は大河の元気がなかった。

 

 

「だって……優しそうな劉備さんが攻めてくるなんて……」

 

 

大河は前回会った時の印象で『劉備は優しい人』と言う認識をしていた。だからこそショックだったのだろう。

 

 

「大河も見ただろうけど劉備も前に大将に怒られてただろ?それで劉備も思うところがあったんだろうよ」

「………うぅー」

 

 

俺の言葉に大河はまだ不満そうだ。ポンポンと頭を叩くけど機嫌は治りそうにない。ったく……

 

 

「劉備は大将に対価の支払いの話をされていただろ?それに対して劉備は答えを出したんだ。それを受け止めるのは俺達だがな……」

 

 

そう……劉備は大将の問いに言葉ではなく態度で示した。攻めてこいと言われて迷わず攻めに来た辺り、周囲も囃し立てた可能性は高い気もするが。

 

 

「ま、大将の忠告だったんだろうな」

「忠告ッスか?」

 

 

大将なりの忠告だったのだと思う。優しさだけでは乗り切れない物があると。いつか逃げられない時が来ると……

 

 

「そ、曲がりくねった優しい忠告」

 

 

ま、大将も素直じゃないし。と、まあ…….俺等が話をしていたら舌戦を終えた大将が帰ってきた。

妙に機嫌が良さそうな辺り、前回同様に言い負かしてきたな、あれは……

 

 

「聞け!勇壮なる我が将兵よ!この戦、我が曹魏の理想と誇りを賭した試練の一戦となる!この壁を越えるためには、皆の命を預けてもらう事になるでしょう!私も皆と共に剣を振るおう!死力を尽くし、共に勝利を謳おうではないか!」

 

 

そして戻ってきた大将の鼓舞が響く。蜀陣営も同様に盛り上がり始めてる。始まるか……

 

 

「敵軍、動き出しました!」

「これより修羅道に入る!全ての敵を打ち倒し、その血で勝利を祝いましょう!全軍前進!」

 

 

大将の号令で俺達も動き出す。俺も準備しといた荷物を持ち、立ち上がる。

さぁて……行きますか。

 








※この小説はログインせずに感想を書き込むことが可能です。ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。