真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月
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第百二十一話

 

 

 

 

「……暇だ」

「碁を打つのにも飽きたのですか?」

 

 

最早、何度目になるか分からないボヤキが口から発せられ、向かい側に座るねねが応えた。とも言うのも俺は部屋で暇をもて余しているからだ。

時を少し遡り、ぎっくり腰になった俺は仕事を休まざるを得ない状態となってしまった。しかし、その腰痛も一週間ほど安静にしたのでほぼ回復。

さて、体も治ったので仕事をしようかと思ったのだが、そこで桂花が待ったを掛けた。

 

 

「中途半端な治し方だとまた再発するわよ。休みなさい」

 

 

と俺に仕事をさせない動きに出たのだ。いや、流石に大将が止めるかと思えば

 

 

「そうね……この先、やる事が増えるから純一に倒れられても困るわ」

 

 

と桂花の案に乗ってきたのだ。マトモな理由のようにも思えたが一瞬見せた笑みがなんとも嫌な予感を感じさせる。

そんな訳で既に三日程経過したが未だに城から出られない日々を送っていた。

そして監視役として初日は桂花が俺の部屋に書類を持ち込んで仕事。二日目に詠が俺の部屋に。三日目には月が付き添う形となっていた。

そして四日目となる今日はねねが俺の相手をしてくれているのだが朝から碁ばかりしていたので流石に飽きてきた。朝は大河が警邏の前に顔を出しに来たが、挨拶くらいで言ってしまったので結局は退屈なのだ。

今までの心配事もあるからなんだろうけど、流石に体が鈍りそうだ。

 

 

「うーむ……体を動かさないのが却って悪影響になりそうだ」

「だったら、ねねに良い考えが有るのですぞ!」

 

 

肩をゴキッと鳴らした俺にねねが良い笑顔を向けてきた。ほほぅならば聞かせてもらおうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇side桂花◆◇

 

 

 

 

あの馬鹿が腰を痛めてから11日が経過した。放っておくと勝手に自滅していくあの馬鹿を止める為に私は華琳様に進言したところ受け入れてくださった。詠や月も賛同したのが大きかった。でも華琳様には私達の考えが見通されていたらしく……

 

 

「早く体を治して貰わないと逢い引きも出来ないもの……ね?」

 

 

私達だけに聞こえるようにコソッと告げられた言葉に私達は顔を赤らめた。華琳様にはバッチリとバレていたのだから。

そして秋月が7日ほどで治ったと言っていたが私達は結託してアイツを城から出さないようにした。常に誰かがアイツに付き添っていれば無理もしない筈と踏んでいたのだ。

 

 

「今日はねねに任せたけど……大丈夫かしら?」

 

 

私は秋月の部屋に向かいながら考える。朝から秋月の傍に居れる事を喜んでいたけど……少し不安だった。

ねねも大人ぶってるけど子供なのよね……時折、秋月を『とーさま』って呼んでるし。

私が考え事をしてる間に秋月の部屋の前まで来ていた。私が戸を開けようとしたけど、戸が少し開いていて中から声が聞こえてきた。

 

 

「ありがとう、ねね。気持ちいいぞ」

「なによりなのです」

 

 

な、何してるのよアイツ等!?私は思わず息を飲んで声を沈めた。今の声は間違いなく秋月とねね。私はそのまま聞き耳を立てた。

 

 

「意外だったな、ねねがこんな特技を持ってるのは」

「なら、もっと気持ちよくしてあげるのです」

 

 

ねねの特技で秋月が気持ち良く……え、ちょっと……まさか。私は頬が熱を持つ感覚を感じながら部屋から聞こえてくる声を聞いていた。

 

 

「秋月、カチカチなのです」

「最近忙しかったからな……腰痛で大人しくしてたけど自分じゃ出来ないからな」

 

 

私は耳を済まして扉の影に張り付き、会話を聞き逃さないようにする。

 

 

「ほら、此処を押すと気持ち良くなるのですぞ」

「くはぁ……効くぅ……」

 

 

この会話……そう……アイツ、ねねにまで手を出したのね……

 

 

「秋月の背中……暖かいのです」

「そうか?そう言うねねは指がふにふにしててちょっとくすぐったいかな?」

「むぅ……ねねは子供じゃないのです」

 

 

私が気遣っていたにも関わらず他の娘と……

 

 

「もういいぞ。ねねも、してばっかりじゃ疲れるだろ?」

「大丈夫なのです。その……とーさまはちゃんと気持ち良くなれたのですか?」

 

 

私のイライラは頂点に達した。

 

 

「ああ、ねねが頑張ってくれたからな」

「えへへ……だったら、もっと頑張るです」

 

 

もう我慢できない!私は扉に手を掛けた。

 

 

「ちょっとアンタ達!何して……る……の」

 

 

部屋に入って見た光景に私は言葉を失った。

 

 

 

 

 

◆◇side桂花end◆◇

 

 

 

 

 

寝台にうつ伏せになって、ねねにマッサージをしてもらっていたら桂花が勢い良く部屋に入ってきた。いや、何事よ?

 

 

「どうした桂花?」

「何……してるの?」

 

 

俺の質問に、質問が返ってきた。そいつはルール違反だな、と思ったが桂花は顔を俯かせている。過去の経験上この雰囲気はヤバい。正直に話した方が良さそうだ。

 

 

「ねねがマッサージ………肩揉みとか背中の指圧をしてくれるって言うんでな頼んだんだ」

「ふふん、ねねに掛かれば簡単なのです!」

 

 

ねねが俺の背中から降りたのを感じたので起き上がる。おお、スゴい楽になった。肩が軽いわ。

 

 

「そう……それは良かったわ」

「何故、そう言いながら竹筒を振りかぶる?」

 

 

桂花は答えに納得……したのか?いや、理解はしたけど納得してない感じがする。

 

 

「紛らわしいことしてんじゃないわよ!」

「え、何と勘違いしたんだ?」

 

 

今まさに投げようとした桂花だが俺の一言にピタリと動きを止めた。そしてみるみる内に顔が真っ赤になっていく。

 

 

「言えるわけ無いでしょ馬鹿!」

「ぷろぁ!?」

 

 

桂花の投げた竹筒を顔面に食らった。その後、桂花は部屋を出ていってしまう。

 

 

「……ねねが悪かったのですか?」

「しいて言うなら間が悪かったかな」

 

 

俺は痛む鼻を押さえながら答える。大方、桂花の勘違いだろう。真桜の風呂の時もそうだったし。

 

 

「さて……と」

「何をするのですか?」

 

 

俺は立ち上がると部屋の服棚から幾つかの服を取り出す。普段はスーツばかり着てるから市井の人が着る服を着るのは久し振りだ。

 

 

「何、着替えて外に行こうと思ってな。暇だし料理のひとつでもしようと考えたんだが材料を買いに行かなきゃなんだ」

「桂花や月達から外に出すな言われてるのです……って目の前で着替えるななのです!」

 

 

おっとお子様には生着替えは刺激的だったかな?ねねは俺に背を向けてる。なんてアホな事考えてないでサッサッと着替えよ。ほんでもって服屋の親父から作って貰った伊達眼鏡を装備。髪も少し崩すか。

なんせ、そのまま行って『副長が外歩いてましたよ』なんて話が出れば桂花達も更に怒りそうだし。

ま、サッと行ってサッと帰ってくれば問題ないだろう。

それに先程の詫びも含めて料理を振る舞うと決めたんだし。

 

 

「と、兎に角……そんな変装しても駄目なのですぞ」

「だったら、ねねも一緒に行こうか?俺が怪我をしないように監視してれば良い。それに、ねねにも俺の料理を味わって貰いたいからな」

 

 

フンとそっぽを向いていた、ねねだけど俺の言葉に振り返る。ふむ、あと一歩。

 

 

「そうだな……ねねも一緒に料理して恋に振る舞ってみるか?きっと喜ぶぞ」

「ぐずぐずしないで行くのですぞ!」

 

 

俺の言葉に目を輝かせ、俺の手を引くねね。まあ、待ちなさい。出掛ける前にやる事があるから。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

「うぅ~……恥ずかしいのです」

「そう言うな、似合ってるぞ」

 

 

城を抜け出した俺とねねは手を繋いで街中を歩いていた。何故、ねねが恥ずかしがってるのかと言えば、着ている服が普段と違うからだ。俺が変装したのに、ねねがそのままじゃ意味がないので、ねねにも着替えて貰った。

現在のねねは所謂フリフリな可愛い服を着ている。栄華が見たら間違いなく食いつくなコレ。そして縛っていた髪を解き、帽子を脱がせた。手を繋いで歩いているのは親子っぽく見せる為だ。

ここまでやれば俺だとは気づくまい。実際、料理の材料を買った際にも市場の人は俺に気付いてなかったし。ねねがアドリブで俺の事を『とーさま』も呼んだのも効果有り。

それに……ねねが俺の手を割りと強く握ってる。離したくないって言ってるみたいだ。

 

そんな訳で俺は左手でねねと手を繋ぎ、右手で先程買った豆腐を持っていた。

何故豆腐かと言えば俺が作る料理は麻婆豆腐と決めたからだ。厨房に器を借りに行くついでに材料を確認した所、ネギや挽き肉などは有ったのだが豆腐だけがなかった。そこでボウル状の器を借り、市場まで買いに来た。

しかし、良い豆腐が買えた。この豆腐で麻婆豆腐を作れば最高の麻婆豆腐になるだろう。

拘りの一つだが俺の麻婆豆腐は辛さは控えめで味をまろやかにする様に心掛けている。辛すぎると麻婆豆腐の味が解らなくなってしまうからだ。そこで辛味を控え目にして、旨味を引き出す。言わば味のパーフェクトハーモニー……完全調和だ。

さて、買うものも買ったしサッサッと帰るか……

 

 

「北郷警備隊の者です。暴れるのを止めなさい!」

 

 

と思ったら聞こえてきた斗詩の声。何事かと通りを見てみれば北郷警備隊の皆さんに斗詩と大河。

酔っ払い関係のトラブルかな?遠目で見てみれば酔っ払い達は料理を警備隊に投げ付けている。更に店員の女の子は殴られたのか頬が赤くなり涙目だ。

その時だった。ねねが繋いでいた手を離し、俺が持っていた器を俺から取り上げる。

 

 

「とーさまを外に出すとこうなると思ったから桂花や月達が止めてたのです。揉め事に率先して首を突っ込むのが目に見えてたのですぞ」

「うっ……」

 

 

ねねからの指摘に言葉を失う。グサリと刺さるね。

 

 

「待っててやるからサッサッと終わらせてくれば良いのです」

「………ありがとな」

 

 

豆腐が入った器を両手でしっかりと握るねね。俺はねねの頭を一撫ですると居酒屋の方へ歩き出す。

 

 

「おばあちゃんが言っていた」

 

 

警備隊の面々が居るし、正体がバレない様に俺は少し声を低くしながら声を掛ける。

 

 

「男がしてはならない事が二つある。食べ物を粗末にする事と……女の子を泣かせる事だ」

 

 

俺は天を指差しながらポーズを決めた。バレてないよね?








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