真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第百二十五話

 

 

 

「この件は大将に確認してからだな」

「了解です」

 

 

俺は書類に目を通してから凪に渡す。暫く休んでたから確認する書類が多い。

 

 

「ん……この南通りの怪しい店ってのは?」

「最近、開店した様なのですが……ぼったくりの疑惑が出てます」

 

 

どの時代でも、ぼったくりってあったのね。こっちは後々、店に赴いて確認しなきゃだな。

 

 

「それと副長、真桜の部屋の近隣の方々から苦情が……」

「またか……真桜にはなんか言った?」

 

 

凪がとてつもなく言いづらそうに俺に真桜の事を告げに来る。おおよその予想が付いた。

 

 

「一応、話はしたのですが……」

「いや、いいわ……」

 

 

凪が言いづらそうにしてるのが既に答えだ。まったくアイツは……

 

 

「ちょっと行ってくる」

「お願いします。私では怒っても最近、効果が薄いので」

 

 

部屋を出る俺に凪は頭を下げる。本当に苦労してんな。今度、飯でも奢ってやろう。

さて、真桜には拳骨をくれてやろう。

 

そもそも以前から真桜の部屋の周辺から苦情が殺到していたのだ。今回の件は良い機会だ。たっぷり説教してくれよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「う~む……やっぱりこの部分は……いや、あかんあかん!妥協したら一流の職人は名乗れんで……ぴぎゃ!?」

「一流なら作業場で仕事しろ。何回注意させる気だ」

 

 

俺は自室で一人言を繰り返しながら作業に没頭している真桜の頭に拳骨を落とした。

 

 

「な、何すんねん副長!」

「何すんねんじゃないだろ。作業なら作業場でしろと何度言わせる気だ」

 

 

そう、これは初めての事じゃない。真桜は作業場で仕事をせずに自室でやってしまう。そして作業場でする作業を自室でやれば当然近隣に音が鳴り響き五月蝿い。そしてその五月蝿さから苦情が出て俺や凪の所に報告が来る。その度に怒りに行くのだが中々改善されないので毎回の事となっていた。

 

 

「そんなん言うたかて、その場で浮かんだ閃きは逃したくないねん!」

「だったら、それを書き残してから作業場でしろ。真桜の工兵としての仕事は認めるがそれ以上に苦情が来てるんだよ」

 

 

いや、真桜の気持ちもわかるんだよ?アイディアって一瞬だからね生まれるのも通りすぎるのも。

 

 

「うぅ~……ウチかて毎度叩かれたくないねん」

「俺だって毎回、拳骨落としたい訳じゃないぞ」

 

 

ジト目で睨んでくる真桜だが俺だって好きで拳骨してる訳じゃないぞ。やれやれ、飴と鞭な訳じゃないけど少しは甘やかしてやるか。

俺は真桜を抱き締めてやる。

 

 

「うひゃあ!?ふ、ふくちょ……」

「真桜……いつも真桜の工兵としての技術には助けられてる。でも、その事で周囲に迷惑が掛かってるのも事実なんだ」

 

 

俺は真桜の耳元で囁く。いつも悪ノリが過ぎる真桜だがこう言う時は大人しい……と言うか乙女だ。

 

 

「俺も真桜を叱るのは頼りにしてるし可愛いと思ってるからなんだ。少しは……解ってくれよ?」

「副長……うん」

 

 

俺が真桜を抱き締めながら髪を撫でてやる。真桜は気持ち良さそうに撫でられ続け体を俺に預けてる。

まったく……普段からこれくらい素直に……ん?

 

 

「………………………ふーん」

「………………………OH」

「ふくちょ?……あ」

 

 

何故か視線を感じて振り返れば部屋の戸が開いており、そこには書類を持った桂花が立っていた。その視線は凍てつく波動を放っているかのように冷たい。

 

 

「真桜の部屋が五月蝿いって苦情が私の所まで報告書が上がってきたから真桜に注意しようかと思ってきたんだけど……そう。そう言う事なの」

「あ、あの……桂花さん?」

 

 

ヤバい……とてつもなくヤバい。今までの経験上この流れはマズい。と思っていたら桂花がズンズンと近づいてくる。あ、超怒ってるな。

 

 

「……離れなさいよ!」

「とっ!?」

「ひゃっ!?」

 

 

互いに抱き合っていた俺と真桜だったが桂花が俺の襟首を掴んで引き剥がされる。突然の事態に俺と真桜は悲鳴を上げた。

 

 

「ほら、行くわよ!真桜は部屋の片付けをして五月蝿くしないようにしなさい!」

「は、はい!了解や!」

「お、おい桂花!?」

 

 

桂花は何処にこんなパワーがあるのか俺をズルズルと引きずったまま部屋を出ていく。真桜も勢いに押されて桂花に敬礼で返した。

 

 

「おい桂花、少し強引だったんじゃ……」

「………アンタが他の娘と抱き合ってんのは見たくなかったのよ」

 

 

引きずられたまま桂花に先程の事を聞こうとしたら桂花は振り返らずに答えた。よく見りゃ耳まで真っ赤になっている。

 

 

「そうかい……」

「……馬鹿」

 

 

桂花の態度に少し嬉しい思いをしていたのだが、桂花は不満そうに口を開く。焼き餅焼く位には素直になってくれた訳ね。

 

 

因みにこの日以降、真桜は作業場で仕事をする様になってくれた。時おり、まだ自室で作業する為に俺が怒りに行くのだが……それを待っているかの様に真桜はいつも悪戯な笑い方をしていた。

 

 

 




『凍てつく波動』
ドラクエシリーズの特技で効果は相手パーティーにかかっている補助魔法等の特殊効果をすべて消す。主にボスキャラが使用してくるのでボス戦では苦労させられるプレイヤーが多かった。

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