真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月
<< 前の話 次の話 >>

13 / 201
第十三話

 

 

 

沙和の手伝いにでも行こうかと思えば大将に引き留められた。なんでも一刀とは違う視点での天の国。つまりは未来の話が聞きたいらしい。

ただし曹操の歴史の話を除いてとの事だ。なんでも自身の未来の歴史を知ると視野が狭まるからいらない、との事。

とは言ってもなぁ……俺もしがない社畜なんですが……

 

 

「一刀の話だと……確か『殺羅理萬』だっけ?」

「……サラリーマンな」

 

 

覇王様、それは何処のアサシンですか?訂正を入れつつ、サラリーマンの事や俺自身の話をした。んで、少し悩みを打ち明ける。

 

 

「気の量が急に増えた?」

「俺はただの一般人だったんで気の量は増えにくいと思ってたんですよ……鍛えても中々、成果が出なかったんで」

 

 

そう、この街に来てから戦闘に参加してから俺の気の量は格段に増えていた。たった一発のかめはめ波で体力を使い果たした最初の頃とは違い、昨日から数発、放ったのだが未だに体力に余裕があった。とは言っても後、二発が限度か。

 

 

「気の量が増えたのは街での戦闘を経験してからなのね?」

「ん……まあ、そうなるかな?正しくはその前だな。街で子供が泣いていて、子供が泣く切っ掛けになった黄巾の連中に頭にきたんだが……」

 

 

ふむ、と考える仕草の大将。

 

 

「なら、それね。アナタは戦う意思に目覚めたからよ」

「戦う……意思」

 

 

ロトの勇者みたいなもんですか?あ、違いますよね。

 

 

「アナタは今まで天の国から来てから戦そのものが未知のものだった。何処か、遠いこと……悪く言えば他人事として無関心だったのよ。それが自ら戦うと決めた事で闘志が沸き、気の量も増えた……って事よ」

「………つまりは気の持ち様ってか?」

 

 

そんな都合の良い…….

 

 

「やる気のない人間に相応の実力が備わると思って?」

「………ぐうの音も出ません」

 

 

どんだけ人を見る目があるんだよ。何者……あ、魏の曹孟徳様でした。

俺の悩みも聞き終えた辺りで春蘭が敵の本陣を見つけたと報告しに来た。さて、本陣を見つけたが敵は移動の準備の真っ最中。早くしなければ敵は逃げてしまうとの事だった。

 

 

「この馬鹿!」

「……すまん」

 

 

大慌てで出発準備となった所で荀彧の怒号が聞こえてきた。その前には一刀が申し訳ないと項垂れている。

 

 

「おいおい、何事?」

「秋月……アンタの上司は予備の糧食を3日どころか全部配っちゃったのよ!」

 

 

俺が大将と共に現場に駆けつけると荀彧から事情説明。なぁにしとるか学生君よ。

 

 

「つい……張り切りすぎちゃって……ごめんなさい」

「………まあ、今回はすぐに移動しなくちゃいけないし、撤収準備や引き継ぎの手間が省けたから特別に私の指示だった事にしてあげる。でも次に同じ事をしたら……わかってるわね?」

 

 

素直に謝る一刀に大将は笑みと威圧のダブルパンチ……恐っ!

 

 

「純一、アナタも一刀の補佐なら……今後は手綱を握りなさい」

「………肝に命じます」

 

 

去り際に飛んでもねー、一言残したよ覇王様。いや、見てれば別だけどさっきまで話をしてたから止めようもないっての。いや、今後はこうならないようにフォローしろって事だよな。

 

 

「一刀……まあ、一度失敗したなら次に活かせ。学生は学ぶのも仕事の内だ」

「純一さん……はい!」

 

 

ポンと頭を叩いて気持ちを入れ換えさせる。反省も良いが気持ちを切り替えないと同じことを繰り返すぞ。返事もしっかりとしていたから大丈夫だろう。

 

 

全部隊が出発し終えてから数刻後、普通に行軍すれば、半日はかかるところを強行軍でわずか数刻で目的地まで駆け抜けた。そこは、山奥にポツンと立っている古ぼけた砦だった。

 

 

「既に廃棄された砦ね……良い場所を見つけたものだわ」

「敵の本隊は近くに現れた官軍を迎撃しに行っているようです。残る兵力は一万がせいぜいかと」

 

 

大将は砦を見ると呟く。確かに立派な城……いや、砦か。凪の補足説明から敵は大した量はいないらしい。

 

 

「軍が来たから砦を捨てるのか?勿体無いなぁ」

「きっと華琳様のご威光に恐れをなしたからに決まっているわ。だから、わざわざ砦まで捨てようとしているのだろう」

 

 

一刀の言葉に春蘭が反応する。いや、いくら曹操が来たからってそんなに過敏にはならんだろう。

 

 

「連中は捨ててある物を使っているだけだからな。そういう感覚が薄いのだろう。多分、あと一日遅れてたらここももぬけの殻だった筈だ」

「全く。厄介極まりない連中ね……それで秋蘭。こちらの兵力は?」

「義勇軍と併せて、八千と少々です。向こうはこちらに気付いていませんし、荷物の搬出で手一杯のようです。今が絶好の機会かと」

「ええ。ならば、一気に攻め落としましょう」

 

 

大将と秋蘭の会話で次々に話が決まる。これだけの武将が揃ってれば兵力差はあまり関係ないか?

 

 

「華琳様。一つ、提案が」

「何?」

 

 

と、話が決まり掛けた時、荀彧が話に加わる。

 

 

「戦闘終了後、全ての隊は手持ちの軍旗を全て砦に立ててから帰らせてください」

「え?どういうことですか?」

 

 

荀彧の意見に首を傾げる一同。それを代表するかの様に季衣が荀彧に訪ねる。

 

 

「この砦を落としたのが、我々と示すためよ」

「なるほど。黄巾の本隊と戦っているという官軍も、本当の狙いはこの砦。ならば、敵を一掃したこの城に曹旗が翻っていれば……」

「……面白いわね。その案、採用しましょう。軍旗を持って帰った隊は、厳罰よ」

 

 

なるほどね、曹操の軍の威光を分かりやすく表現するのか。そんで通りすがりが旗を見れば噂も一層広まるって事か。

 

 

「なら、誰が一番高いところに旗を立てられるか、競争やね!」

「こら、真桜。不謹慎だぞ」

「ふん。新入り共に負けるものか。季衣、お前も負けるんじゃないぞ!」

「はいっ!」

「姉者…….大人気ないぞ」

 

 

旗刺し競争となり、それぞれが張り切り始める。主旨が変わってねーか?俺は旗無いから関係ないけど。

 

 

「そうね。一番高いところに旗を立てられた隊は、何か褒美を考えておきましょう。あくまで狙うのは敵の守備隊の全滅と、糧食を一つ残らず焼き尽くすことよ。いいわね」

「あの……華琳様?」

 

 

大将の言葉に話は終わりとなり掛けたのだがそこで沙和が口を挟んだ。

 

 

「何?沙和」

「その食料って……さっきの街に持って行っちゃダメなの?」

 

 

その質問は先程まで配給作業をしていた沙和らしいものだった。優しいんだな。

 

 

「ダメよ。糧食は全て焼き尽くしなさい」

「どうしてなの?」

「一つは華琳様の風評は上がるどころか傷付く事になるの糧食も足りないのに戦に出た曹操軍は、下賎な賊から食料を強奪して食べましたと」

 

 

大将の言葉に不満の沙和は食い下がろうとするが荀彧が引き継いで説明をする。風評や噂ってのは馬鹿に出来ないからな。俺も会社にクレームの電話が来るだけで冷々したもんだ。

 

 

「かと言って奪った糧食を街に持っていけば、今度はその街が復讐の対象になる。今より、もっとね」

「あっ」

 

 

大将の言葉に沙和は、ハッとなった。そう、ここで糧食を焼かずに回収すれば曹操軍の風評は最悪のものとなる。そして、それを街に持っていけば黄巾党の復讐の対象になる。それで街が襲われでもすれば、本末転倒って事だ。

 

 

「あの街には警護の部隊と糧食を送っているわ。それで復興の準備は整うはず。華琳様はちゃんと考えているから……安心なさい」

「そういうこと。糧食は全て焼くのよ。米一粒たりとも持ち帰ることは許さない。それがあの街を守るためだと知りなさい。いいわね?」

「そうそう。それに敵から奪ってきましたって言って渡すのも沙和も嫌だろ?ちゃんと胸を張ってやれる事をしようや」

「あ……うん、なの」

 

 

荀彧や大将の言葉と共に俺はタバコを吸いながら沙和に話しかける。うん、素直で良い子だ。なんとなく頭を撫でてやると戸惑いながらも笑ってくれた。

 

 

「………女ったらし」

「………え?」

 

 

え……今、誰かは分からなかったけどエラく不名誉な事をボソッと誰かが言われた。

 

 

「なら、これで軍議は解散とします。先鋒は春蘭に任せるわ。いいわね?春蘭」

 

 

いや、俺としては終わりにしたくない。さっきの一言、誰が言いやがった!?

 

 

「はっ!お任せ下さい!」

「この戦をもって、大陸の全てに曹孟徳の名を響き渡らせるわよ。我が覇道はここより始まる!各員、奮励努力せよ!」

 

 

軍議も終わり、部隊の配置の段階に入ったのだが義勇軍で構成された部隊は凪達三人がやってくれるので俺と一刀はそれを見ているだけだった。ぶっちゃけ俺や一刀が口出ししても役には立たない。俺としては先程の『女ったらし』発言は誰だったのか探りたい次第であります。

その後、凪達が戻ってきてから何故か俺と一刀の金で凪達の歓迎会をする事になった。いや、俺も新人なんだから歓迎される側なんだけど……

まあ、年上の意地もあるし……仕方ないか。

 

そうこうしている内に曹操軍は黄巾党の物資集積地点を強襲した。とは言っても俺は部隊を持っている訳じゃないので一刀と共に少し後方で戦いを眺めていた。

 

 

「どうした!この夏侯元譲に挑む者はおらんのか!?この腰抜け共が!」

「せいやぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「はあああああああっ!」

 

 

城のあちこちから聞こえる気合いの入った声。頑張っている様でなによりだ。さて、俺も一発かましとくか。

 

 

「かぁ…めぇ…はぁ….めぇ…」

 

 

俺が構えると一刀は「まさか……」って顔になった。うん、気持ちは分かる。俺も初めての時はそんな顔をしてたから。

 

 

「波ぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 

俺のかめはめ波は黄巾の一団を纏めてぶっ飛ばした。今のが最後の一団だったのかな?なんかバタバタと兵士の皆さんが確認に来てるし。

 

 

「目的は果たしたぞ!総員、旗を目立つところに刺して、即座に帰投せよ!帰投、帰投ーっ!」

 

 

春蘭の声が城の中、全体に響いてる。どんだけ大声なんだか……さて、俺はここから暇だな。だって旗無いし。

俺はタバコに火を灯すと適当な所に腰を下ろす。

 

 

「どこに旗を刺そうかなー?」

「ん……季衣か」

 

 

フゥーと煙を吐いていると旗を持ってウロウロとしている季衣。

 

 

「あ、オジ……純一さん」

「はーい、純一さんですよー」

 

 

フゥーと再び吐く、煙。今、『オジさん』って言おうとしたな?言ったら気で強化した拳でゲンコツ落としてやる。

 

 

「何してんだ?」

「うん、旗刺すのに高い場所探してるんだー」

 

 

ふむ、俺は旗が無いし……手伝うくらいはするか。

 

 

「だったら季衣、あの塔が一番高いと思うぞ」

「あの塔?」

 

 

俺が指差したのは砦の中でも一番高い塔。ただアホみたいに高い為に他の誰も旗を刺しに行ってない。

 

 

「確かに高いね。じゃあ、行ってくるねー!」

「おーう。気を付けろよ」

 

 

嬉しそうに旗を持ったまま走っていく季衣。元気だねぇ……

 








※この小説はログインせずに感想を書き込むことが可能です。ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。