真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第百三十九話

 

 

俺と真桜、沙和、霞は夜の見張りをしていた。涼州に来てから毎日奇襲を受ける日々……夜くらいは寝たいと思うがほぼ毎日夜襲を受けていた。ぶっちゃけ昼間の方が寝れる気がする。なんて思いながら欠伸をしていたら一刀が起きてきた。

 

 

「おはよー」

「何や、眠そうやねぇ。隊長」

「おはよう一刀。少しは寝れたか?」

 

 

真桜と俺が話しかけると一刀は眠そうに口を開いた。

 

 

「ああ、大丈夫。でも最近、眠りが浅くて……地面に布を敷いただけで寝苦しいのに、ようやく寝られたと思ったら、襲撃があるし……」

「せやねぇ……昨日はめずらしゅう夜襲がなかったけど、ここの所ほとんど毎日やったもんね」

 

 

真桜の言葉通り昨日は夜襲が無かった。正直ありがたかったよ。なんちゃってシルバースキン(攻)は重大な欠陥が見つかったから。

 

 

「真桜は元気だな」

「元気なもんかい。単に夜明け前から起きとったから眠う見えんだけや」

「むしろ徹夜明けのテンションだな」

 

 

一刀の言葉にツッコミを入れる真桜。話し相手が増えるだけでも眠気は多少飛ぶからありがたい。

 

 

「夜の見張りだったのか、お疲れ様。純一さんもですか?」

「ああ、これから一眠り……出来たら良いなぁ……」

 

 

俺は煙管に火を灯す。眠さと疲れからか肺に染み渡る煙が深く感じられた。

 

 

「うー……眠たいのー……」

「沙和も夜の番だったのか?」

「ウチもやで」

「霞もか。おはよう」

 

 

沙和と霞も夜の番明けで順次、顔を出す。人の事言えないが眠そうだねぇ。

 

 

「夜起きてるのはお肌に悪いの……真桜ちゃーん。そばかす、ひどくなってないー?」

「大丈夫やと思うけどなぁ……隊長、どない思う?」

 

 

沙和の質問を真桜がニヤリと笑みを浮かべてから一刀に振る。ああ、弄る気満々だな。

 

 

「たいちょー、この辺とかひどくなってないのー?」

「お、おい。ちょっと、そんなに顔を近付けるなって!」

 

 

沙和に体を寄せられて、どぎまぎしている一刀。沙和も寝惚けているのか無防備に一刀に体を寄せている。もうキスする距離だよね、これ。

 

 

「近寄らないと分からないのー」

「だ、大丈夫だからっ!」

 

 

一刀は沙和の肩を掴んでひっぺがした。普段、それ以上の事をしてるだろうに。

 

 

「んもぅ!二人とも、適当に言ってるの!ふくちょー、どうかな?」

「……見た目はそんな悪くなってなさそうだぞ」

「そやね、あんまり変わっとらん様に見えるわ」

 

 

一刀と真桜の意見は宛になら無いと思ったのか俺に聞いてくる沙和。スマン、ぶっちゃけわからんのだ。霞も同様のようだ。

 

 

「おはようございます」

「おはようッス」

 

 

なんて話をしていたら凪と大河が起きてきた。二人とも目がパッチリ開いて完全に目が覚めてる感じだ。

 

 

「おはよう、凪、大河」

「凪も大河も早いなぁ」

「この時間は普通、皆起きているのでは?」

「自分も朝日が昇ったら起きてるッスよ?」

 

 

俺と一刀の言葉に首を傾げる凪と大河。素で真面目なコンビは朝も異常に早起きなのだと判明した。

 

 

「凪ちゃーん、大河ー。私のそばかす、ひどくなってないー?見て見てー」

「……すまん、沙和。こういうのは良く分からなくてな……皆に聞いてくれ」

「じ、自分も同じッス……」

「も、もう皆なんて知らないのー!」

 

 

沙和は最後の望みと凪と大河に詰め寄るが返ってきた答えは沙和の望むものでは無かった。プルプルと震えた沙和はその場を後に走っていってしまう。

 

 

「あーあ、行ってもうた。隊長のせいやで?あそこで沙和の腰くらいこう、グッと抱いて見せてやな……」

「お、おい真桜!?」

 

 

真桜は一刀をジト目で見た後に凪を抱き寄せ腰に手を回した。スルリと凪の細い腰に真桜の指がかかる。

 

 

「『沙和。お前の美しさは、そばかすくらいで損なわれるものじゃないよ』……くらい言わなアカンで」

「離してくれ……真桜。と言うか揉むな」

 

 

芝居染みた演技と言葉を凪に囁く真桜。凪は少し慌てた様だが今は呆れていた。更にオマケとばかりに真桜は凪の胸を揉んでいる。

 

 

「いや、俺がやったら駄目だろ……それは」

「そやね、それに一刀がそんな台詞を吐くとは思わんなぁ……」

「だ、大胆ッス……」

「………フゥー」

 

 

一刀、霞、大河の順にコメントを出す中、俺は煙管の火を消して立ち上がる。

 

 

「真桜、夜の番お疲れ様……疲れ、取ってやろうか?」

「え、ひゃっ!?ふ、ふくちょ……」

 

 

俺は真桜から凪を引き離すと真桜の腰に手を回して抱き寄せる。突然の事態に真桜は慌て始めた。

 

 

「ほら、逃げないで……」

「あ、ちょ……待ち……あ、あかん……」

 

 

腰から背中に手を回して真桜の体が少し浮く位に抱き寄せる。真桜は爪先立になりながらも俺にしがみついた。

 

 

「ふ、ふわわ……」

「見たらアカンでー」

「だ、大胆……」

「こ、これが大人のやり方か……」

 

 

顔を真っ赤にした大河の目を霞が手で覆い、凪は俺の行動に顔を赤くしている。一刀は俺の動きに感心していた。

 

 

「……って言ってやれば良いんだとさ」

「へ……あ……」

 

 

俺が真桜から手を離すと真桜は残念そうな声を出す。

 

 

「人をからかうなら、それ相応の事は……ってな」

「うぅー……ズルいわ大人って……」

 

 

俺にからかわれた事を悟った真桜が俺を睨む。俺はスッと真桜の耳元に顔を寄せる。

 

 

「人を呪わば穴二つってな。少しは反省しろ……それとも本当にこれから仮眠も出来ない様にしてやろうか?」

「~~~~~っ!?」

 

 

俺が耳元で囁きながら髪を少し撫でてやると言葉の意味を察した真桜は顔を真っ赤にして天幕の中に逃げ込んだ。俺も徹夜明けで少しテンションが変になってるらしい。

 

 

「ふ、副長……大河の様に小さな子も居るのですから、もう少し自重を……」

「……そうだな。俺も少し軽率だったかもしれんな」

 

 

顔を赤くしたままの凪に咎められる。少しやり過ぎたかな。

しかし、まあ……夜襲ばかり続くと身が持たんな実際。兵士達も疲れが見えるし………何かしらの対策は必要だよな。

なんて思っていたのだが、この日の数日後を境に夜襲の数は少しずつ減っていくのだった。

 


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