真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月
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第百四十一話

 

 

 

涼州の兵士達の奇襲率を落としてから俺達は馬騰の構える城へと向かっていた。途中で馬超や馬岱とも戦う事になった。

大将は馬騰と対峙する事を楽しみにしてたのか出てきたのが馬超で残念そうにしていた。

へぇ……あれが馬超か、可愛いな。なんて思っていたら腹部に鋭い痛みが走った。

 

 

「ふぐっ!?」

「何、鼻の下伸ばしてるのよ」

 

 

桂花の肘が俺の腹にめり込んでいた。いや、ちょっと見とれてただけじゃん…….

この後、舌戦で馬超を負かした大将が面白くなさそうに戻ってきた。なんで負かしたのに不満そうなんだか。

 

 

「麗羽よりも弱かったわ」

 

 

袁紹よりも舌戦が弱いって……かなり致命的だよなぁ。なんて思う間もなく戦が始まる。相手は当然のごとく騎馬主体の部隊だったが大将の発案で真桜率いる工兵隊が地面を掘り水を流して泥濘に変えた。こうする事で騎馬の機動力を完全に奪った。

馬超や馬岱が騎馬から降りて戦いを挑んできたが霞や春蘭達に任せて大将や俺達は城へと向かった。

 

 

「あ、待て!」

「あーばよ、とっつぁーん」

 

 

馬超達が後を追おうとしたけど俺はこの手のお決まりの台詞を残して城を目指した。

 

 

「何なの、『とっつぁん』っんて?」

「世界的に有名な犯罪者を捕まえる人の事」

 

 

大将の疑問に俺は煙管を吸いながら答えた。

そして俺達は馬騰の城へと到着。当然の事ながら護衛の兵達も居たが秋蘭や華雄も同行していたので相手をしてもらう事に。いつもの事ながら俺も一刀も何もしてないな。

 

 

「馬騰を探しなさい!抵抗しない城の者は傷つけては駄目よ」

「了解」

 

 

城の中へ入ると大将からの指示を受けて俺や兵達は馬騰を探す。と言うか……馬騰を探し当てたとしても俺なんかじゃ返り討ちの確率が高い。とは言っても探さない訳にはいかんが。

 

 

「ま、部屋の一つ一つを見ていくしか……あ?」

 

 

俺が気まぐれに部屋を開けたら寝台に体を半分起こしている女性にその周囲に数人の侍女が居る。

 

 

「ま、まさか……もう来るとはな」

「あー……もしかして、馬騰さん?」

 

 

なんでこう……妙な所で当たりを引くかな俺も。馬騰は馬超の髪をセミロングにした感じで少し痩せていた。

 

 

「去りな……私は曹操に膝を折る気はない」

「取り敢えず話を聞いてもらえませんかね?」

 

 

ハッキリ言って怖ぇーよ。この人の一睨みでこっちは萎縮しちまったってのに。眼光だけで人を殺せそうだよ。

 

 

「ん……お前もしかして噂の天の御使いか?」

「そりゃ俺じゃねーよ。もう一人の方だ」

 

 

大将の所に居る男で武将みたいなのは俺か一刀くらいだからな。そりゃ勘違いされるか。

 

 

「そうか……なら、お前が種馬兄か」

「涼州にまで来て、その名で呼ばれるとは思わなかったなぁ……」

 

 

……もしかして大陸全土に噂が広まったんじゃなかろうな。

 

 

「ふ……くくっ……まさか最後に天の御使いの片割れに会えるとはね……」

「ん……ちょっと待った最後って……」

 

 

馬騰の言葉に違和感を感じた俺が歩み寄ろうとした瞬間。馬騰が血を吐いた。

 

 

「なっ!?」

「私は曹操に屈しない……地獄まで逃げ切ってやるよ」

 

 

驚いている俺を尻目に馬騰は笑みを浮かべた。まさか死ぬ気か!?

 

 

「おい、アンタ!?」

「毒さ……私はもう戦えそうにないんでね。さっき飲ませてもらったよ」

 

 

毒っ!?なんでこんなにアッサリと死のうとすんだよ!?

 

 

「馬鹿か!」

「アンタ……気の使い手か?無駄だよ毒を飲んだのはアンタが来る前だ。もうとっくに体に回ってる……」

 

 

俺は自身の気を馬騰に送り込もうとするが効果が薄そうだ。くそっ!もっと医療気功の事を学んどくべきだった。

 

 

「何を……悔しそうにしてるんだい?私は……敵だぞ」

「敵だろうが味方だろうが……人の死は嫌だ……」

 

 

今まで散々戦いの中で人の死を見てきたが嫌なものは嫌だ。甘いと言われても構わない。人の死に慣れる事はいけない事だと思うから。

 

 

「参ったね……最後の最後でアンタみたいのに会っちまうとは……アンタ、名前は?」

「秋月純一……字と真名は無い」

 

 

馬騰は震える手で俺の手を掴んだ。なんとなく察してしまう。この人はもう……

 

 

「そうかい……覚えとくよ。それと最後に頼みたい……アタシの娘に……遺言を……」

 

 

俺は馬騰の言葉に無言で頷く。俺は自然と握る手に力を込めた。

 

 

「アンタはアンタの道を……行き……な……」

 

 

その言葉を最後に馬騰の手からスッと力が抜けた。それと同時に大将が部屋に入ってきた。

 

 

「純一?……馬騰!?」

 

 

その光景に大将は目を見開いた。俺は馬騰さんの手を離すとソッと布団の上に乗せてから離れる。

 

 

「馬騰さんは毒を飲んで自害した。『私は曹操に屈しない……地獄まで逃げ切ってやるよ』だとよ」

「そう……他には?」

 

 

大将は毅然とした態度をしているが、その肩は震えていた。

 

 

「俺の名を教えて……馬超宛の遺言を託された」

「そう……下がりなさい。他の誰もこの部屋に入る事を禁ずるわ」

 

 

大将の言葉に頷いた俺は部屋を出た。途中で一刀とすれ違ったから部屋に入らない方が良いと伝えてから俺は城の城壁へ向かった。

 

 

「………線香の代わりがこんなんで悪いけど」

 

 

俺は煙草に火を灯して城壁の上に立てる。煙が空に向かって登って行くのを見届け、俺は手を合わせた。

 

 

「さよなら……馬騰さん」

 

 

最後にほんの少ししか話さなかったけど……良い人だと感じた。

俺は空に向かって登り消えていく煙に目を伏せて馬騰さんに別れを告げた。








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