真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月
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第百四十二話

 

 

◆◇side詠◆◇

 

 

「秋月の様子が変?」

「……うむ」

 

 

涼州の遠征から帰ってきた華雄から、そんな話を聞いた。華琳の話では秋月は馬騰の最後を看取ったのだと言う。そして、その後から秋月の様子が変だったらしい。何処か上の空でボーッとする時間が増えていたらしい。

確かにここ数日、心此処にあらずって感じだったわね。

 

 

「アイツが能天気なのは、いつもの事だけど今回は様子が変ね……」

「ああ……桂花が話しても効果が薄かったからな。重症だ」

 

 

確かに重症だわ。でも桂花が話しても反応が薄いんじゃ僕が行っても……

 

 

「頼むぞ詠……桂花に次いで秋月の信頼を勝ち取ってるのは……お前だ」

「……華雄」

 

 

華雄は僕と肩をポンと叩くと行ってしまう。秋月の信頼を得ていると聞いて僕は頬がニヤけてしまったが、秋月の性格から皆を信頼しているのでは?と思ってしまう。

 

 

「先ずは……秋月に会わなきゃね」

 

 

僕は秋月を探しに行く事にした。城の中に居るなら自分の部屋か桂花の居る部屋か……言ってて少しイラッと来たけど探してみよう。そして部屋に居ないとなれば……彼処ね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕の予想通り秋月は部屋には居なかった。そして部屋に居ない場合、高確率で城壁に居る。そこで煙管を吸う事が多いから。

そして僕の予想通り秋月は城壁の所にいた。煙管を吸いながらボーッと空を眺めてる。華雄から聞いてたけど、本当に腑抜けになったみたい。

僕は秋月の隣に立つけど秋月はチラッと此方を見たけど直ぐに視線を空に戻した。

 

 

「………何か言いなさいよ」

「鳥が飛ぶ、ご覧のとーり……ごふっ!?」

 

 

口を開いたかと思えばくだらない冗談が聞こえたので思わず秋月の腹に拳を叩き込んでしまった。まったく……本当に腑抜けてるわね。普段とは違った意味で。華雄達が心配するのも無理無いわね。

 

 

「本当にどうしたのよ?」

「………俺がしてきたのって……何なんだろうなって思ってな」

 

 

僕の言葉に秋月は立ち上がると再び、煙管を咥える。

 

 

「ここ最近、技の開発やら装備を充実させてただろ?技は兎も角、装備の方は割りと順調だった。涼州での戦いも有利に進められる事が多かったし」

 

 

秋月の話を聞く限りじゃ問題はない。寧ろ、順調な方だと思う。

 

 

「で、な……俺は馬騰さんに会って……」

「そこまでは聞いたわ」

 

 

秋月が城の中をさ迷って偶然、馬騰の居た部屋を引き当てたと。

 

 

「いい人だったよ。大将とは違った意味で器が大きかった」

「そうね……僕も馬騰とは何度も会ってるけど将として恥じない人物よ」

 

 

秋月はそう言いながら自分の掌を見詰めた。その瞳はいつもの物ではなく悲しさや自分の力の無さを咎めている……そんな風に見えた。

 

 

「でも。馬騰さんは死を選び……俺は助ける事が出来なかった」

 

 

秋月はそう言って拳を握る。そして再び開いた時には手の中に気弾が生まれていた。

 

 

「馬騰さんの手から力が抜けた時……俺は自分の力の無さを恨んだよ。俺の手の中からスルッと命が落ちちまった」

「……秋月」

 

 

僕は……秋月が言いたい事がなんとなくわかった気がした。今、秋月は……泣きそうになっている。

 

 

「この国に来てから俺は『気』の力を得た。役職を貰って色んな人を助けた……けど俺は……」

「もう……いいわよ」

 

 

言葉を繋ごうとした秋月の手を握った。秋月は馬騰を救えなかった事を悔やんでいる。秋月は無理無茶を平然とする。失敗しても笑ってる。それは周囲を笑わせる為だ。だから皆はそんな秋月を見て、どんな時でも卑屈にならずに次を目指していけた。

そんな秋月が今回は目の前の死に耐えきれなくなっていた。秋月も戦場に出るから死を間近に見るのは初めてではない。でも……馬騰の時は、ほんの少しでも触れてしまった人の心に

秋月の心が揺らいだ。

 

 

「アンタは優しすぎるのよ……そんなんじゃ潰れるわよ」

 

 

劉備と考えが近い何て言われてる秋月だけど劉備と決定的に違う所がある。それはこの覚悟だろう。

劉備は『平和にしたい』と言っているが蜀に張り込ませている間者の話では劉備は軍備を関羽や張飛に丸投げしていて、政治も孔明に任せきりだと聞く。自身で動いて戦い悔やむ秋月とは違う。秋月は自分で動いた上で悩んで平和を望んでいる。

僕は秋月の手の感触を確かめる。掌には月の自害を止めた時の傷がまだ残っていた。

 

 

「でも……アンタは力の無さを嘆くけど僕や月はこの手に救われた。華雄も恋もねねも斗詩もそうよ」

 

 

僕は秋月の手が好きだった。戦っている者の手にしてはいつも安らぎを与えてくれる様な手が。

 

 

「だから……自分に力が無いなんて言わないで。僕達を助けた事を……嘆くような事も」

「………詠」

 

 

僕は秋月の手を握り額に押し付ける。

 

 

「力が無いと言うなら強くなってよ……いつもみたいに……笑ってよ……」

「……詠」

 

 

僕は気が付いたら涙を流していた。馬騰の事で傷付いていた秋月を慰める筈だったのに僕は泣きたいのに泣けない秋月を見ているのが辛くて泣いてしまった。

 

 

「そっか……んじゃいつもみたいに」

「え……ひゃあ!?」

 

 

一瞬、暗い声を出したかと思ったら、いつもの声に戻った秋月は僕の胸を揉み始めた。なんで!?

 

 

「あ、詠……胸が大きくなった?」

「アンタが揉むからでしょ。最近、お気に入りの下着が着れなくなって困って……じゃないわよ!!」

「おぶっ!?」

 

 

僕の胸を揉み続ける秋月の顎に狙って平手打ちを放つ。パーンと良い音が鳴ると同時に秋月が倒れた。

 

 

「なんで、いつもみたいにって言ってから胸を揉むのよ!?」

「痛ぁ……いや、いつものパターンだと俺か一刀がセクハラした疑いで殴られる事が多いから……でも、気合い入ったよ」

 

 

そう言って立ち上がった秋月の頬には僕が付けた紅葉が綺麗に出来ていた。そして、その瞳は先程までと違っていつもの秋月の瞳だった。

 

 

「ありがとな詠」

「紅葉付けた状態で格好付けられても絞まらないわよ」

 

 

秋月はいつもの笑みを浮かべていたが頬に紅葉が付いたままじゃ冗談にしか見えない。

でも、先程まで沈んでいた表情からいつもの秋月に戻っていた。

 

 

「まだ思う所はあるけど……馬騰さんの頼まれ事もあるし頑張らなきゃだな」

 

 

馬騰からの頼まれ事が何なのか気になったけど……秋月が元気になったなら良いか。僕は空を見上げる秋月を見ながらそんな事を思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇おまけ◆◇

 

 

 

「先を越されたわね、桂花」

「私は気にしてませんから」

 

 

そんな二人のやり取りを見ていた華琳と桂花が居たとかなんとか。








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