真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月
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第百四十六話

◇◆side秋蘭◇◆

 

 

私は魏の領土に現れる不審な者達の調査で定軍山に向かっていた。恐らく劉備の手の者だろうがいつもの間者の類いの者だろうと話し合い私は流琉と秋月を連れて調査に来ていた。

 

何故か、秋月の体調が悪くなっていたが秋月の為に行軍の速度を落とすわけにはいかない。最早、所定の位置と化した馬車の荷台で寝転がる秋月。

 

 

「あー……超ダルい……」

「情けないぞ、秋月」

「そうですよ、純一さん」

 

 

秋月の発言に私と流琉は溜め息を吐いた。これが当たり前になっているな。

 

 

「なんでこうなるかねー」

「その体勢が当たり前になってきてるな」

 

 

秋月の呟きに私は思わず笑ってしまう。遠征等に行った際には行きも帰りも馬車の荷台に揺られている事が多い。北郷よりも多いのではないか?

 

 

「いっその事、俺専用の荷台を用意するか……」

「その計画は既に華琳様と桂花で話し合われていたな」

 

 

秋月の発言に思い出すのは先日話し合われていた秋月の移送計画。最早、怪我をする事を前提で話が進められていた。

 

 

「とりあえず暫く寝るわ……定軍山に着いたら起こして」

「……やれやれだな」

 

 

秋月はそのまま寝てしまう。流琉は秋月に毛布を掛けている。その姿は情けない父親か兄の世話を焼く娘か妹に見えた。

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

あれから数日かけて定軍山に到着し、偵察任務を開始しようとしたのだが秋月の体調は優れないままだった。

 

 

「まだ体調が悪いのか秋月?」

「ああ……」

 

 

私が声を掛けてもフラフラとしている。城を出てから体調を崩しているが大丈夫なのだろうか。

 

 

「まあ、今回は偵察任務だ。無事に帰ろうではないか」

「そうですよ、それに帰ったら季衣が用意してた、お肉が食べ頃ですよ」

「そりゃあ楽しみだ。早く元気にならなきゃな」

 

 

私の発言に流琉が加わる出立前に季衣が肉を買ってきていたな。偵察任務が終わる頃には食べ頃になってるか。私も手伝うとしよう。姉者も楽しみにしているだろうからな。

 

 

「では、各自散開して周囲の偵察を……」

 

 

そして私が兵達に指示を出そうとした、その瞬間だった。複数の弓矢が飛んできて兵士達を貫いた。

 

 

「なっ!?」

「敵襲だ、散開しろ!」

「楽な偵察任務……って訳にはいかなくなったか……」

 

 

流琉が驚愕し、私が兵達に指示を出す。秋月は腹を決めたのか先程までの体調の悪さを振り切って覚悟を決めた顔になっていた。

 

 

「ちっ、逃げるぞ!」

「し、しかし……」

「え……」

「秋月の言う通りだ!散開しながら距離を取れ!」

 

 

秋月の叫びに兵士達は慌てた様子だが私の一声で一斉に動き出す。秋月は機転が利くな……この一瞬で状況を読んだか。

 

 

「走れ走れっ!」

「純一さん、さっきよりも元気じゃないですか!?」

 

 

秋月は兵達の前を走る。偶然なのかもしれんが理想的な形だ。秋月と流琉が前衛で私が後衛となる。

 

 

「前にも敵が!」

「舐めんなっ!」

「ぎゃっ!?」

 

 

前を走っていた兵が叫ぶと同時に秋月は飛び蹴りで前方の敵を蹴り飛ばす。ふむ、何気に姉者や華雄に似てきたな。だが、これなら……

 

 

「秋月、前を頼む!」

「おう、任せ……どわっ!?」

 

 

戦いやすさを受け入れて秋月に前衛を頼もうとした瞬間、山の斜面近くに立った秋月の足場が崩れ足を踏み外してしまう。

 

 

「秋月!?」

「純一さん!?」

「俺に構うな!生き残る事を考えろっ!」

 

 

高さとしては斜面と言うよりも崖から落ちる秋月に私と流琉が手を伸ばそうとしたが秋月は拒んだ。それどころか我等を気遣う。

 

 

「秋蘭様、純一さんが!?」

「………前を見ろ流琉。秋月の事は気掛かりだが先ずは我等が生き残る事を目的としろ」

 

 

流琉は不安そうに私に話しかけるが私は少し思案した後に秋月を探さない事にした。秋月を探す事で不利になる可能性が高い上に兵達の統率を崩すわけにはいかない。

 

 

「追っ手を振り切ってから回り道をして秋月を探すぞ……それに私にはアイツが簡単に死ぬとは思っていない。なんせ桂花がお気に入りの『あの馬鹿』だからな」

「ぷっ……そうですね。早く探してあげないと私達が知らない間に怪我が増えそうですし」

 

 

私の発言に流琉は笑った。そして秋月の怪我の心配をしつつも先程よりも安心はした様だ。死ぬなよ秋月……お前が死んだら私は桂花に会わせる顔がない。

 

 

◇◆◇◆

 

 

あれから一晩経過したが状況は悪くなる一方だった。連れてきていた兵達の数は半分以下になり、私も流琉も満身創痍の状態となっていた。我等を追っている連中は狩りをするように我等を追い立てていた。

最早、これまでと思い山よりも広い平原に出て敵の確認をしようとすると山を出た瞬間に浴びせられる雨のような矢が降ってくる。待ち伏せされた!私が流琉に指示を出そうとするが私の前には黄忠を名乗る将が立ちはだかる。

私は黄忠に流琉は馬岱に阻まれてしまい兵達が蹂躙されていく。このままでは……!そう思った瞬間だった。

黄忠の立っていた位置の近くに一本の丸太が飛んできたのだ。

 

 

「なっ!?……くっ!」

 

 

その光景に黄忠は素早く避ける。飛んできた丸太がズズンと音を立て地面に斜めに突き刺さる異常事態に周囲の者も動きを止めて見入ってしまう。

そして、その丸太の上には人が乗っていた。その人物は丸太の上に立ちながら腕を組み此方を見下ろしている。

 

 

「なんとか間に合ったらしいな」

「秋月、無事だったか!」

「貴方が天の御使いの片割れ……」

 

 

先日離れてしまった秋月が現れたのだ。私も黄忠も驚く中、秋月はニヤリと笑みを浮かべた。

 

 

「落ちた崖の先で会いたくなかった奴と会っちまったがお陰で包囲網を崩せそうだぞ」

「何を……なっ!?」

「な、なんだあれは……」

 

 

秋月の言葉と指差した先に視線を移した黄忠が驚愕の声を上げ、私は言葉を失ってしまう。そこには額に三日月の模様を持つ巨大な熊が蜀の兵士達を襲っていた。

 








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