真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第十五話

 

 

 

俺は掃討戦が終わると大将から馬を借りて荀家に向かっていた。最初は普通に帰ろうかと思っていたのだが許昌に寄ってからだと時間が掛かるから先に帰りなさいと言われた。

そして挨拶を済ませたら直ぐに許昌に行き、北郷警備隊に参加せよとの事だ。今までと違って忙しくなりそーだね。

 

等と考え事をしていたらアッサリと到着。流石に馬だと早いわ。因みに馬に乗る練習は俺が荀家に居候した次の日から顔不さんから習っていた。だって今まで、車か電車で移動してたんだもの。馬なんか乗った事、ねーっての。

そんな訳で武術の鍛練と共に馬上の練習も平行して行われた。数日掛かったが今は普通に乗れる様になった。

現代ではやった事のない馬術や気の扱いなどの才能があるとは何かの皮肉としか思えないな。

 

荀家に到着すると荀緄さんに怒られた。そりゃ当日に帰ってくるはずが二日と掛かれば怒りもするわ。顔不さんも何事かと聞いてくる。俺は全部を話した。荀緄さんの頼まれ事を済ませた事。そんで街で戦闘に巻き込まれた事。荀彧にも会った事。流れで曹操に仕える事になった事。

顔不さんには気の扱い方がわかった事を。戦う事の覚悟も、全部話した。

荀緄さんも顔不さんも静かに話を聞いてくれた。そして全ての話を終えてから俺は頭を下げた。世話になった人達に何も相談せずに曹操の所で働くと勝手に決めてしまってスイマセンと。

 

 

「……いいんですよ」

 

 

荀緄さんはそんな俺に優しく声を描けてくれた。そして下げた頭を撫でられた。

 

 

「元々、純一さんがこの国での習わしを学ぶ為だったんですもの。その純一さんが曹操様の所に仕えるのが決まるのは喜ばしい事だわ」

「……荀緄さん」

 

 

俺は頭を上げて荀緄さんを見た。荀緄さんは俺の頭を撫でながらも涙目になっていた。

 

 

「不思議ね……最初は桂花ちゃんを助けてくれたお礼のつもりだったのに……アナタは私の息子みたいになっていたわ」

「荀緄さん………痛っ!?」

 

 

荀緄さんの言葉に涙腺が緩み掛けた所で顔不さんが俺の背を平手で叩いた。

 

 

「辛気臭い顔をするなお主の門出だ!ワシとしても弟子が腑抜けでは困る!」

「いつから弟子認定っ!?」

 

 

バシバシと叩き続ける顔不さん。顔不さんの中では俺は弟子に認定されていたらしい。まあ、悪い気はしないが。

その後、少し宴となった。少なくとも明日、二日酔いにならない程度の飲み方だった。顔不さんにはもっと豪快に飲めと言われたけど少しやる事がある。宴を終えると俺は竹筒に幾つかの案を書いた。以前の日本酒の事もあるが僅かばかりの知恵で恩返し。中身は開けてを御覧あれってね。

 

さて、そんなこんなで次の日の朝。俺は許昌へ向けての出発となった。

荀緄さんや顔不さんに見送りをされた。少し泣きそうな顔の荀緄さんに「桂花ちゃんの事、お願いしますね」と言われた。まあ……曹操の軍で同僚になる訳だし頑張ります。

でも荀彧に「手伝うよ」と言っても「いらない」「あっち行け」とか言われそうな気も。

 

そして、いざ出発となると荀緄さんから何かを渡された。何かと開けてみたら中から銀の装飾の煙管が。

 

 

「純一さんの新たな門出に……ってね」

「受け取っとけ。故郷のタバコも残り少ないんだろ?」

「ありがとう……ございます」

 

 

荀緄さんはウインク一つ、顔不さんは不適な笑顔で俺を見送ってくれた。プレゼントまで貰って恐縮です。ああ、もう……此処に居ると泣きたくなってくる。

さて、許昌に向けて出発!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お嬢様と上手くいきますかな?」

「桂花ちゃんも満更じゃないわ。きっと大丈夫よ……うふふ、純一さんが義息子になる日が楽しみだわ」

 

 

 

旅出た後、顔不さんと荀緄さんのこんな会話がされている事を俺は知らなかった。


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