真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第百五十五話

 

 

 

 

 

「ふ……く……はぁぁぁぁぁぁ……」

 

 

深い呼吸をしながら気を練り上げる。そしてそれを体の隅々まで行き渡らせる様にイメージしながら体内に留める。これは所謂『内気功』と言う外気から気を集めて内側に集束するもので、細胞の活性化や医療にも用いられたらしい。意識的に『治す』と念じることで傷の治りを早める事が出来るらしい。『らしい』ってのは俺にも確証が無いからなんだよね。そもそも人から伝え聞いたのを実践してるだけだし。

因みに凪から聞いた話だと春蘭や華雄も内気功が使えるらしい。ただ無意識的にやっているらしく、本人達に聞いたら『こうすると体が楽になる』との事だった。天然恐るべし。

 

 

「秋月さん、お体の調子は……って、きゃあっ!?」

「おう、斗詩」

 

 

内気功に集中しすぎていたのか斗詩が部屋に来たのに気づかなかった。斗詩は斗詩で部屋に入ってくるなり悲鳴上げるし。

 

 

「な、なんで裸なんですか!?」

「ちょっと内気功に集中したくてね。ちょっち待ってて」

 

 

 

斗詩は顔を赤くしつつ手で顔を隠してる。因みに今の俺はズボンのみを履いていて上半身裸だったりする。いや、全裸って訳じゃないんだからそこまでのリアクションせんでも。

 

 

「ごめんごめん。もういいよ」

「い、いえ……」

 

 

服を着たのに少々残念そうな斗詩。何故に?

 

 

「そ、それよりも秋月さん。そんなに動いて大丈夫なんですか?」

「もう二週間は前の話だよ」

 

 

そう……俺の怪我が悪化してから既に二週間程が経過している。その間、俺は内気功で傷を癒す事と書類整理に精を出していた。月を始めとする詠や華雄、真桜、ねね、斗詩が見舞いに来てくれていたので寂しくはなかった。

桂花に会えなかったり、タバコが吸えなかったりでマジでツラかったけど。

 

 

「鍛練とかは流石にまだだけど出歩くくらいには回復したよ」

「もう、心配したんですからね」

 

 

少し拗ねた風に話す斗詩に俺は苦笑いとなり、日々の行いを省みた。うん、日常的に心配させるの良くないね。

 

 

「ま、とりあえず歩き回るくらいなら問題ないから、ちっと散歩に行こうと思ってね」

「お散歩ですか……心配だから私も行きます」

 

 

アハハ……俺って信用ねーな。と思いつつも前回はこのタイミングで警備隊の仕事をしたので否定も出来ないが。

そんな訳で斗詩と一緒に街へ。然り気無く斗詩が腕を組んできたので左腕がとても幸せです。

 

 

「お、副長さん!怪我はもう良いのかい?」

「旦那、暫く顔見なかったけど大丈夫そうだな!」

「副長さん、女に刺されたってのは本当なのかい?」

「話に聞いてたよりも元気そうね。安心したわ」

「副長、女連れてると今度は荀彧様に刺されちまうよ」

「もう、心配しましたよ」

「復帰祝いだ、持っていきな!」

 

 

街の皆さんの声が身に染みる。途中、聞き逃したくなる発言も混ざってたけど。

 

 

「あはは……人気者ですね」

「不名誉な噂も流れてるみたいだけどね」

 

 

ハァーと溜め息を吐く。馬超との戦いはえらく曲解して伝わったみたいだ。ああ、タバコ吸いたい。

 

 

「そういや、後で桂花の所に行って煙管を回収しなきゃだな」

「暫く吸ってないと思ったら桂花ちゃんに没収されてたんですね」

 

 

俺の発言に斗詩がクスクスと笑う。正直、この二週間はキツかった……禁煙、禁酒、禁欲。全ての欲求を封印したと言っても過言ではない。マッチは既に尽きているので今後はジッポを使うか。手の中でパチンとジッポを鳴らすと斗詩は不思議そうにジッポを眺める。あ、三国志時代にはライターなんか無いから珍しいか。

 

 

「秋月さんって銀色が好きなんですか?」

「ん……まあ、好きな色かな」

 

 

斗詩の急な質問に答えると斗詩はやっぱりそうなんですねと笑った。

 

 

「だって秋月さんの吸ってる煙管は銀の装飾が施されてて、その手に握られているのも銀色ですから」

「言われてみると……そっか」

 

 

言われてみると確かにそうかも。でも俺のイメージカラーって銀かなぁ?

 

 

「私、秋月さんが煙管を吸っている姿……好きですよ」

「お、おう……そっか」

 

 

斗詩の笑顔にドキッとした。家庭的な子がたまに見せる、こういう表情って破壊力抜群だよね。

 

俺はこの後、城に戻って煙管の回収に向かおうと思ったのだが途中で桂花と遭遇してしまい、斗詩と腕を組んでいる所を見られて桂花の機嫌が急降下。

煙管は返してもらえませんでした。グスン。

 

 


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