今日は以前、話していた魏の内部での武道大会。これは魏に属する将のみで行われる大会で、日頃の鍛練の成果を大将に見せると共に魏で誰が一番強いかを決める大会でもある。呉や蜀との戦いの前に士気を高めようとの狙いもあるのだろう。
その大会を観戦する為に俺も大将達と同じく上座に座ろうかと思っていたのだが……俺はなんちゃってシルバースキンを身に纏って選手待ち合いの控えに座っていた。
何故、こうなったかと言えば大会の数日前に大将から武道大会に参加せよとのお達しが出たのだ。
俺は即座に断ったのだが大将のありがたいお説教の下、参加が決定した。
戦う相手は当日発表との事だったので、先程対戦表を見たのだが……
・沙和VS真桜
・凪VS斗詩
・大河VS季衣
・秋蘭VS華雄
・流琉VS香風
・春蘭VS霞
・俺VS恋
とまあ……こんなラインナップな訳だ。泣いても良いよね?
「まったく……いつまで嘆いているの?」
「嘆きたくもなるっての」
大将の呆れた声に恨みがましく反論してみる。まさかまた恋と戦う事になるとは……当初の予定では恋の相手は華侖だったのだが、流石に曹の一族を危険な目には……と言うことで外され「じゃあ誰が恋の相手を?」となった際に恋は「純一ともう一度、戦いたい」と言ったそうだ。
『華侖を戦わせるくらいなら……それに副長なら大丈夫そうですし』と本人の知らぬところで勝手に大会に参加が決まり今日に至る。
とりあえず誰が相手になるか分からなかったので、いつも通りの修行をしていたのだが……こりゃ勝てんわな。
「恋殿ー!応援してるのですぞー!」
「……ん」
ねねの声援にコクリと頷く恋。ねね、恋が頑張ったら俺がヤバいのよ?
「じ、純一さん!頑張ってください!」
「恋が相手だから怪我はするだろうけど死ぬんじゃないわよ?」
月も詠も完全に俺が負けると思ってるよね?明らかに『怪我しないでね』的な雰囲気になってるし。
「ふ……あの頃の私と比べてどれ程、恋に近づけたか試したかったが……ここは秋月に譲るとしよう」
ポンと俺の肩に手を置いて語る華雄。出来たら代わってくれ頼むから。
「秋月さんから貰った武器で私、頑張りますから秋月さんも御武運を」
今回……と言うか前から斗詩用の武器を幾つか作っていたのだが今回が初披露となる。御武運を………と言う辺りやはり、心配なんだよね。
「副長、無事に帰ってきてや。うち、まだまだ副長から学びたい事も一緒にやりたい事もあるんやで」
それは完全に死地に向かう人間を送る言葉だよな?
「その……帰ってきたら優しくしてあげるから……」
出来りゃ今、優しくしてくれ桂花。
なんかもう、ため息と一緒に魂も吐き出しそうな気分だよ。
こうなったら……暫く特訓していたあの技を試すか。気持ちを切り替えた俺はこれから始まる武道大会に気合いを入れて臨むことにした。