真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第百六十三話

恋との戦いをどうしようかと悩んでいたら、既に大会は始まってしまっていた。最初の対戦は沙和VS真桜。

どんな戦いになるのかと思えば、二人は戦いの最中に互いの欲しいものを連呼しながら戦っていた。

 

 

「そういや成績優秀者には報酬が出るって言ってたっけ」

「だとしても欲まみれ過ぎるやろ」

 

 

俺の呟きに霞が答えた。うん、ああなっちゃいけない例だな。

結局、欲にまみれた二人は互いに隙だらけで一撃必殺を目論みダブルノックダウン。一戦目から泥仕合となった。

 

 

「よろしくお願いします斗詩さん!」

「私こそよろしくね凪ちゃん」

 

 

気絶した沙和と真桜が運ばれていき二戦目は凪VS斗詩。今度こそマトモな戦いになると願いたい。そんな事を思っていると、斗詩は俺の方を見てニコリと笑ってから凪と向かい合った。

 

 

「斗詩さん……武器はどうされたのですか?」

「大丈夫ですよ。ここにありますから」

 

 

そう現在の斗詩は鎧は着ているが手には何も持っていない。そんな斗詩を凪は心配するが、斗詩は笑みを浮かべると両肩の鎧の飾りを外して中に収納されていた取っ手部分を握ると振り抜く。そこから飛び出してきたのは大型のトンファーだった。

 

 

「す、凄い……そんな仕掛けが……」

「秋月さんが私の為に用意してくれた武器と鎧なんですよ」

 

 

驚く凪を尻目に斗詩が嬉しそうに言う。喜んでくれたなら此方も嬉しいもんだ。上座と観客席の一部からの視線が冷たくなったが俺は挫けないぞチクショウ。

それはそれとして斗詩の鎧と武器は実は以前から考えていたものだ。鎧は袁紹軍の頃の物を使っていたし、武器の大鎚も文醜に薦められた物をそのまま使っていた。でも魏に来たのだから鎧を一部変えて魏の将らしくしようと思ったのだが、斗詩から改めて鎧と武器を変えたいと言われたのだ。

なんでも斗詩曰く「この鎧と武器を使ってる内は袁紹様や文ちゃんの事を考えてしまう。決別の意味も込めて……魏の一員になった事を示したい」と。

斗詩の意思の固さを感じた俺は街の鍛治屋の親父に話を持ち込んだ。鎧のデザインは袁紹軍の頃の物と違って動きやすく、それでいて下はロングスカートみたいに仕上げた。そして武器だが実は鎧よりも悩むこととなる。なんせ今まで文醜の薦めで大鎚を振るっていた斗詩だが、他の武器を使った事が少ないのだと言う。

そこで俺は今まで開発しまくった武器を試してもらう事にした。なんせ思い付くままに色んな物を真桜と作ったからな。余計な事に予算を使うなと栄華に怒られたが、役に立ったから無駄ではあるまい。そして色々な武器を試した結果、斗詩はトンファーの扱いが巧みだった。やはり斗詩は一撃必殺の大鎚よりも、手数を増やせるトンファーの様な武器の方が相性が良いらしい。斗詩に大鎚を持たせた文醜は何を考えていたのか不思議である。

 

こうして斗詩専用の鎧と武器の目処がたち、作成を開始した。武器にすると決めたトンファーは通常の物よりも大きく……しいて言うならばヴィンデルシャフトみたいなデザインをしている。そして一部が変形して斗詩の鎧の一部となる。こうする事で見た目は鎧の肩当てにも見える見映えのよいデザインとなっている。そして斗詩もデザインが気に入ったのか喜んでくれた。

 

さて、そんな斗詩だが凪との戦いは……

 

 

「はぁぁぁぁぁぁっ!」

「やぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 

凄まじいの一言だった。

凪の右拳を左のトンファーで受け止めた斗詩はローキックで凪の体勢を崩す。そして体勢を立て直そうと少し下がった凪の逃さず追撃に右トンファーを振るう。凪はそれを両手でブロックしながら、その勢いを利用して大きく飛び退いて右足に気を込め始めた。

 

 

「はぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 

凪が足に気を込めて放つ猛虎襲撃が斗詩に放たれた。凪の猛虎襲撃が斗詩に迫るが、斗詩はなんと左のトンファーを構えると猛虎襲撃に向かって走り出す。そして左のトンファーを回転させ、猛虎襲撃を弾き飛ばし凪に迫る。

 

 

「貰いました!」

「まだです!」

 

 

驚いた様子の凪だったが直ぐに立ち直り、斗詩の右トンファーを蹴りで捌く。

 

 

「凪も斗詩も随分と強くなったな」

「秋蘭。良いのか、この後試合だろ?」

 

 

凪と斗詩の試合に見入っていた俺は秋蘭が近くに来たのも気付かなかった。俺は最後の方の試合だが秋蘭はこの二試合後だから精神統一でもしてるのかと思ったよ。

 

 

「何、気を張ってばかりでは疲れてしまうからな。それに他の将がどれほど強くなったかを見るのも私の勤めでもある」

「そっか……んで秋蘭の目から二人はどう見える?」

 

 

秋蘭には本当に苦労かけてる気がする。姉と妹で何故、ここまで差が出たのだろうか?

 

 

「ふむ……凪は気の練りが速くなり、繰り出される拳や蹴りの鋭さが増している。対する斗詩は全てが変わったな……以前は大鎚を振り回すだけといった印象だが今の武器にしてから明らかに技の手数が増えている」

「流石は弓兵。目の付け所が違うな」

 

 

アッサリと見抜く辺り侮れん……

 

 

「しかし斗詩の武器は未だに大型だな。もう少し小型の方が素早くなるのではないか?」

「両手の武器を合わせても大鎚の重さよりも軽いよ。小型のも試したけどあの大きさが一番なんだと」

 

 

他の武器も試したのだが今の大きさが一番合うらしい。実は今まで大鎚を振り回してたから腕の筋力も相当なもので、あのサイズのトンファーなら問題無いらしい。

 

 

「せやっ!」

「くっ……降参です」

 

 

なんて秋蘭と話してる間に凪VS斗詩の戦いも終わっていた。

斗詩の連撃を掻い潜った凪の拳が斗詩の眼前に突き付けられている。打つ手無しになった斗詩が敗けを認めて凪の勝ちが確定した。

 

 

「凪ちゃん……強くなりましたね」

「そんな……斗詩さんがまだ新しい武器に慣れきってないから、その隙を上手く突けただけですよ」

 

 

二人は握手をしながら互いを褒め合って謙遜している。

二人の戦いに大将も満足してるみたいだな。次は大河VS季衣か。どうなるかねー。




『ヴィンデルシャフト』
「魔法少女リリカルなのは」の登場人物、シスター・シャッハの使用するカートリッジシステムを搭載した、二本一組の双剣型デバイス。剣とは言うものの、形状はトンファーに近く、また刃もついていない。

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