真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第百七十一話

 

 

 

「あの……隊長はどうなされたのですか?」

「一刀は今日、重大かつ大切な用事があるんでな。俺が代理だ」

 

 

本日の警邏前の挨拶に一刀が現れなかった事に、目に見えてガックリと落ち込んでいる凪。うん、その態度は傷付いちゃうよ副長。

 

本日、一刀は先ほど述べた通り欠席。普段なら警邏前の挨拶や連絡事項は一刀がやるが、今日は俺が代理でやっていた。いや、副長だから今まで散々やって来たけど、今日は一刀が居ないってだけで凪のテンションが分かりやすく下がっていた。

 

 

「あのー、たいちょーはどんな用事なのー?」

「とても大事な事……としか言えんな。その有無で今後が変わってくるかもしれん」

 

 

北郷警備隊を代表してか沙和が俺に訪ねてくるが、俺はこう答えるしかないだろう。本当の事を話すと野次馬に行きかねないし。

 

 

「それとも……一刀が居ないと仕事が出来ないのか、チミ達は?」

「そんな訳、あるかいな。隊長が居らんから気になっただけやで」

 

 

俺の挑発染みた一言にツッコミを入れた真桜。コイツも遠慮なくなってきたな。

 

 

「隊長がいらっしゃらないのは分かりましたけど……華雄さんと斗詩さんはどうしたんスか?」

「華雄は血風連を引き連れて春蘭と親衛隊と模擬戦を予定してる。後で見に行こうな」

 

 

はい、と手を上げた大河の質問に答える。華雄は朝から気合いが入ってたなぁ……

 

 

「なんで、そんな事態になってるんですか?」

「ああ……少し前から警備隊にも噂があっただろ。今や魏の二大将軍となっている華雄と春蘭。更にその直属の血風連と親衛隊とどちらが強いか……ってね」

 

 

顔がひきつった凪が聞いてくる。そう……ここ暫く魏の街中でそんな噂が流れ始めていた。最初は気にしなかった華雄と春蘭だが、噂が加速するにつれて『どちらが一番強いか』と言った気持ちが強くなったのだろう。今回の模擬戦に至った。まあ、どちらもバトルジャンキーみたいなもんだし。

 

 

「斗詩の方は桂花達、軍師組と会議だ」

「今日は皆さん、忙しいんスね」

 

 

そう……忙しくなる様に仕向けたんだよ。俺がな!

今回の魏の将や軍師達のスケジュールを俺が管理していると言っても過言じゃない。いや、俺が全部やった訳じゃないよ。大将も一枚噛んでるから。

 

それと言うのも数日前に一刀が俺に相談を持ちかけたのが切欠だ。

遂に一刀が大将に思いを伝えると決めたのだ。しかし、大将も一刀も多忙であり、中々二人だけの時間は取れない。取れたとしても春蘭、桂花等の邪魔が入る。

そこで二人を長時間、一緒にしてあげる為に俺が数日掛けてスケジュール調整をした。その話を然り気無く大将に振ると『……仕方ないわね』と仕事の割り振りをしてくれた上に、自身の仕事も早く終わるように頑張っていた。当日に何が行われるか察したのか、妙にソワソワとしている大将が微笑ましい……と思ったら顔を赤くし絶を持った大将に追い掛け回された。口は災いの元と言うが態度で示しても駄目だな。

 

一方の一刀は少し気合いが入りすぎている感じが見受けられた。なんか新手のスタンド使いの目になってたし。

今までの一刀は受け身ばかりだったし自分から大将に告白するのに緊張と不安ってところか……

 

 

「ともあれ……頑張れよ一刀」

 

 

警邏してから華雄の模擬戦を見に行ってから軍師達の会議に顔を出すか。

俺は煙管に火を灯して、好きな女の子に告白する男子を思い浮かべる。

頑張れ、一刀。素直になれよ、大将。




『新手のスタンド使いの目』
ジョジョの奇妙な冒険でのお約束的なもの。明らかに一発で敵だと分かる目やオーラを放っている。

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