真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月
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第百七十六話

 

 

 

 

呉の建業へと向かう道中で可笑しな噂が流れていた。なんでも呉の周瑜と黄蓋が大喧嘩をしたとかなんとか。降伏するかどうかで揉めた後、黄蓋は軍議をしたがその後に、周瑜から公衆の面前で懲罰を受けたという情報が入ってきた。これって確か赤壁の流れだよな。そして黄蓋はこの後、魏へと一時的に下り、赤壁で裏切る……筈。

 

なんて思いを抱きながら皖城まで来たのだが相手は孫尚香との事だ。そしていつも通り、舌戦となるので総大将同士が何かを話し合っているのだが……俺はこの段階で嫌な予感がしていた。なんとなくだが大将から嫌なオーラが出ている気がする。

 

 

 

「一刀と純一はいるっ!?」

「おう、どうしたんだ……?」

「なんだい大将……?」

 

 

そして戻ってきた大将は帰ってきたと同時に一刀と俺を呼びつけた。案の定とても怒ってらっしゃる。そして一刀のベンケイに不意打ちで蹴りを浴びせた後に視線は俺の方へ。あ、やば……

 

 

「た、大将……少し落ちつい……ほぶっ!?」 

「……ふんっ!」

 

 

俺が大将の行動に反応しきれずにボディに拳が突き刺さる。しかも下から突き上げる形のボディーブロー。

その後、大将は春蘭の胸を鷲掴みにしてからボソリと一言。

 

 

「やっぱり一刀も胸が大きい方が……」

「いや、無い物ねだりはしない方が懸命でしょうよ。今、ある武器で一刀を魅了しちゃ……なうっ!?」

 

 

ボディーブローで踞っていた所に黙ってろとばかりに大将に頭を踏まれた。視線を上げれば大将の顔は赤くなっていた。一人言が聞かれて恥ずかしかったと見える。

 

 

「総員、攻撃準備!江東の連中は戦って散る気十分なようだから、遠慮なく叩き潰してやりなさい!」

「「「オオーっ!!」」」

 

 

大将は俺を踏んだまま号令をかけて兵士達は、その号令に叫びで返した。いや、俺は放置ですか?

 

 

「ねぇ……やっぱり男は……」

「大きさ云々じゃなくて如何に相手をドキドキさせるかを考えた方が良いと思うぞ。少なくとも一刀は胸の大きさを拘るタイプじゃないだろうし」

 

 

大将がすがるような視線を送る中、俺は立ち上がり、体に付いた砂を払う。俺の発言を聞いた大将は「そう……」とそのまま行ってしまう。うん、頑張れ女の子。

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

この後、皖城はアッサリと落ちた。妙に引き際が良かった事から罠かと疑われたがどうも違うらしく普通に空城だった。そして皖城を呉に居る間の前線基地に仕立てあげた頃、騒ぎが起きた。

 

 

「侵入者?」

「はいッス!何者かが城の門番を倒して突破して城内に侵入したって報告があったッス!」

 

 

仕事してたら大河が慌てた様子で報告に来た。魏の前線基地に殴り込みってチャレンジャーな……

 

 

「真っ先に相手をしに行きそうな春蘭とかは?」

「……さっき偵察に出たって聞いてるッス。今は霞さんが向かってるって言ってたッス」

 

 

間悪ぅ……とりあえず行ってみるか。俺は大河を引き連れて侵入者が来たと報告のあった場所へと急行する。そんで現場に到着したのだが

 

 

「ウチの螺旋はただの螺旋やない!天さえ貫く……鋼の螺旋や!でやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「やれやれ……」

 

 

現場では一刀、霞、秋蘭、真桜。そして侵入者と思わしき女性と小さな子が一人。

真桜は何やら怒った様子で螺旋槍で突っ込んで行く最中、対した女性は溜め息を吐いた。

 

 

「そう言う所が未熟だと言うに」

「きゃんっ!?」

 

 

女性は呆れた様子で真桜を螺旋槍ごと凪ぎ払うと真桜は尻餅をついて可愛らしい悲鳴を上げた。

 

 

「さて、次は貴公が来るか?それともそちらの優男か?それとも……そこの呑気な男と童か?」

 

 

女性は秋蘭と一刀の後にこっちに視線を移した。おっと、しっかりバレてら。しかし呑気とは失礼な。

 

 

「……あんた、何者だ?ここが魏の前線基地って知ってて来てるんだろ?」

「やれやれ、いきなり殴ってくるヒヨッコ二人に自分の名も名乗らん無礼者か。まったく曹孟徳の器が知れるぞ」

「なんだと……?」

 

 

一刀の質問に女性はこっちを更に挑発してきた。そして大将を馬鹿にされてキレた秋蘭が武器を構えた。

 

 

「はい、ちょっと待った。お姉さん、今日は来客の予定は無いがなんの御用件で?ここは看板抱えた道場じゃないから道場破りなら他を当たってくれや」

「この状況で軽口とは惚けた奴じゃの。ワシを道場破りの様な野蛮な者扱いか」

 

 

俺は秋蘭を制して前に出る。背後で一刀が秋蘭を必死に抑えてる最中、俺は目の前の女性から目を逸らさずに問答をする事にした。

 

 

「今のこの状況を野蛮ではないと?」

「ワシが和平の使者ならどうするつもりじゃ?お主等の行為が全てを台無しにするやもしれんな」

 

 

明らかな挑発だ。後ろじゃ秋蘭達が明らかに殺気立ってるし。

 

 

「とある国の諺にこんなのがある……『和平の使者なら槍は持たない』。武器をもって城に侵入して暴れてる人が和平の使者とか言われてもね」

「む……それを言われると耳が痛いのう。何処の国の諺か知らぬが中々に痛いところを突きよるわ」

 

 

まあ、知らなくて当然なんだが。

 

 

「加えて言うなら『名も名乗らぬ無礼者』ってのは貴女も同じだろう?少なくとも俺は此処に到着してから貴女の名を聞いちゃいないんだが?」

「ふむ……口だけは達者なようじゃな」

 

 

ほっとけ。この人、マトモに会話する気無いんじゃねーだろうな。

 

 

「最早、問答無用!」

「問答しろって!」

 

 

そろそろ後ろも限界か。一刀じゃキレた秋蘭を止めきれないだろうし。

 

 

「離せ、離せ北郷!ここで主の汚名を雪がねば、臣下の立場が……」

「すまん!俺は北郷一刀、曹操の……なんだっけ?」

 

 

秋蘭を抑えつつ話をしようとした一刀だけど……自分の立場で詰まった。まあ、俺と一刀の立場って結構微妙だし。

 

 

「……なんだそれは」

「いや、将って訳じゃないし、軍師でもないし……街の警備隊長?」

「ついでに自己紹介するなら俺は秋月純一。警備隊の副長だ。こっちは弟子の高順」

 

 

呆れた様子の女性に説明するも答えが出ない一刀。ついでだから俺も自己紹介した。

 

 

「どうして街の警備隊長がこんなところで夏侯淵を抑えているのだ?意味がわからんぞ」

「色々あって……なあ、秋蘭。俺や純一さんの立場って……」

「客将よ」

 

 

首を傾げる女性にどうにか答えを出そうとする一刀。そしてその答えは俺達の背後から聞こえてきた。

 

 

「華琳!」

「大将」

 

 

俺達の背後に大将が凪、華雄、流琉、沙和を引き連れて現れた。

 

 

「華琳様!お前等、どうして華琳様をこんな所へと連れてきた!?華雄、お前がいながら!」

「申し訳ありません。お止めしたのですが……」

「大将が行くと言うのだ。ならば我等が守れば良いだろう」

「私が自ら行くと言ったのよ。華雄の言い分も尤もよ……それよりもこのざまは何?」

「……もうしわけありません」

 

 

大将が辺りを見回しながら言う。うん、侵入者にやられてズタボロです。

 

 

「そちらは呉の宿将の黄蓋ね?私は魏の曹操。この者達の無礼、主として詫びさせてもらうわ」

「ほほぅ……主君はそれなりに話の分かる者ではないか。少々見直したぞ」

 

 

え、この人が黄蓋なのか……それは兎も角、これ以上挑発すんのは止めてほしいなー。また空気が冷えてきたし。

 

 

「皆が貴女の姿を知っていれば、このような無礼は働かなかったでしょうけどね。出来れば、初めに名のって欲しかったわ」

「おお、それはすまん。つい、いつもの癖でな……その件に関しては、こちらもお詫びしよう」

 

 

なるほどね。呉の人なら黄蓋を知ってるだろうから、いつものノリで来たと。

 

 

「そんで、その呉の宿老殿が何の用や?まさか、ウチ等に喧嘩売りに来ただけっちゅー事はないやろ?」

「うむ。ワシは売られた喧嘩を買ってやっただけじゃ。まあ、いくらかはお代を払う前に商品を押し付けられたようじゃが?」

 

 

霞の発言にまたも挑発行為の黄蓋さん。もう止めてくれって。流石に俺でも皆を押さえられなくなるから。

 

 

「看板が欲しいなら今から作りますけど?」

「あ、材料持ってくるッス!」

「お主等は……愉快な奴等じゃの。ワシが挑発しても風の様に吹き抜けてしまう」

 

 

俺が発言し、大河が元気よく手を上げる。そんな光景に黄蓋さんは意表を突かれた様な顔をしてから笑った。

 

 

「曹操殿、少々話をさせてもらいたい。良ければ席を設けてはくれんかの?」

「いいでしょう。流琉、沙和、席の用意を」

 

 

黄蓋の提案に大将が乗った。そして流琉と沙和が準備に向かうと秋蘭を始めとする霞や真桜も同席を求めた。

大将がそれでも構わないかと黄蓋に聞くと……

 

 

「無論だ。それこそワシが曹操を弑するやもしれんしな」

「……っ!」

「なんやて!」

 

 

黄蓋さんのその発言に皆が殺気立つ。ああ、もう……

 

 

「やめろ。コイツを相手に殺気立っても無駄だ。それこそ付け入る隙を増やすだけだぞ」

「せやかて華雄の姐さん!」

 

 

そして以外な事に俺が皆を宥める前に華雄が皆を止めた。その光景に黄蓋さんも目を丸くしてる。

 

 

「ほう……誰かと思えば猪の筆頭の華雄ではないか」

「昔の私だと思うなよ?貴様も目的があって此処に来たのなら無闇に挑発するのは止めるんだな」

 

 

華雄を挑発する黄蓋さんだが、華雄はサラッとそれを流す。それどころか忠告したよ。

 

 

「の、のう……奴は本当に華雄か?ワシの知ってる華雄とは大違いなんじゃが」

「間違いなく華雄ですよ。後、そろそろ挑発するのは止めてください。ちょっとした冗談でも爆発しそうなんで」

 

 

黄蓋さんは華雄の豹変ぶりに思わず俺に聞いてくる。うん、昔の華雄を知ってる人ならそう言うリアクションになるよね。そう思いつつも俺は黄蓋さんにこれ以上の挑発行為は止めてもらうように頼んだ。

 

 

「おお、すまんの。何、嘴の黄色い雛を見ると……ついな」

「だから……」

 

 

俺は黄蓋さんに反省の色が明らかに無い事を感じつつも話し合いの席となる場所へと移動する。

そういや、黄蓋さんと一緒に居た魔女の帽子みたいなの被ってた子は誰だったんだろう?




『和平の使者なら槍を持たない』
魔法少女リリカルなのはAsでヴィータがなのはに放った一言。因みに正しくは諺ではなく小話のオチとの事


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