真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

179 / 306
第百七十九話

 

 

黄蓋さんと酒を飲みながら雑談に興じていたのだが、呉の武将も面白い人が多いようだ。

 

 

「まさか孫策が前に俺が作った塩焼きそばを作ろうとしてたとは……」

「策殿が面白い男に会ったと言っておったが、塩をあんなに大量に無駄にするのは感心せんし、冥琳にも叱られておったわ」

 

 

ケラケラと孫策と周瑜の事を楽しそうに話す、黄蓋さんは本当にこれから俺達を裏切るのか怪しいとさえ思えてしまう。

 

 

「つーか、料理が出来ないのに作ろうとか無謀ですな」

「うむ、好奇心旺盛なのは良い事なのだがのぅ」

 

 

普段料理をしないのに思い付きで料理をしようとか、失敗する人の典型だ。

 

 

「そもそも孫家の者は……」

 

 

色々と溜まっていたのか愚痴が多い黄蓋さん。その姿は自分の子や親戚の子に手が掛かると話す親類にさえ見える。

でも、その瞳には優しさがある……やはり黄蓋さんは呉の事が大切なんだな。じゃなきゃこんな風に楽しそうに話せないよな。

黄蓋さんの話を聞きながら俺がそんな事を思っていた時だった。

 

 

「あんた……何してんのよ」

「っと……桂花?」

 

 

船酔いで気持ち悪いと寝ていた桂花がフラフラと俺達の所まで歩いてきた。その顔は青く、まだ不調だと訴えているかの様だった。

 

 

「おいおい、無理すんな。まだ寝てろって」

「何よ……私は邪魔って言いたいの?」

 

 

俺の隣に座った桂花は明らかに体調が悪そうで、無理に起きていては更に具合が悪くなりそうだと思ったのだが、ギロリと睨まれた。

その様子に目の前の黄蓋さんは目を丸くして、離れた所で話をしていた凰雛と大河も会話が止まってこっちを見てる。

 

 

「それになんで、お酒飲んでるのよ」

「天の国で船酔いには酒を飲むって話があるから試してたんだよ。ほら、辛いなら横になってた方が……」

 

 

横になってた方が良いと言おうとしたのだが、桂花は予想外の行動に出た。

桂花は胡座をかいて座っていた俺の足に膝枕をする形でコロンと寝始めた。

 

 

「あ、あの……桂花さん?」

「んー……」

 

 

突然の事態に驚く俺に、桂花は甘える様にスリスリと身を寄せてくる。

 

 

「やっぱ……落ち着く」

「……そっか」

 

 

心底安心した様な声を出す桂花に俺は少し納得した。船酔いで寝ていた桂花は体調不良も相まって、俺が居ない事に不安を覚えていた。そして眠りから覚めてみれば俺は黄蓋さんと酒盛りをして少しばかり妬いていたのだろう。

 

 

「……ゴロゴロ」

「ふふっ……くすぐったいわよ馬鹿」

 

 

猫をあやすみたいに顎の辺りを擽ると、もどかしそうに笑みを浮かべる桂花。俺も少し楽しく……と言うか。少し調子に乗りすぎたな。

目の前では黄蓋さんが超ニヤニヤして酒を飲んでる。少し離れた位置では凰雛と大河が顔を真っ赤にしながら手で目を塞いでる。だが凰雛は指の隙間から、しっかり見てやがる。こやつ出来るっ!

 

この後、赤壁に到着するまでこの状態が続き周囲から冷やかしの視線を存分に浴びる事となった。

ついでを言うと、その事に気づいて顔を真っ赤にした桂花のアッパーが俺の顎を捉えたのは、赤壁に到着してからだった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。