真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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本来は十七話と同時に更新予定だった話です。少し遅れましたけど投下。


第十八話

 

 

 

警邏も終了して、凪達を解散させた後に本日の反省会スタート。俺と一刀は隊長室で向かい合って話を始める。

 

 

「さて……今日だけど一刀にはどう見えた?」

「その……グダグダだったかと……」

 

 

俺の言葉に一刀はズーンと沈みながら答える。うん、気持ちはわかる。

 

 

「真桜と沙和はフラフラとどっかに行っちゃうし……凪も俺の話は聞いてなかった気が……」

「真桜と沙和は兎も角。凪のあれは真面目が過ぎるだけだろうな」

 

 

一刀は今日の事を思い出してるんだろうな。真桜と沙和はアッサリとサボるわ、凪は一刀の制止も振り切って気弾で盗人を仕留めようとした。仮に凪を止められなかったら街は気弾で破壊されていた可能性が高い。

 

 

「報告書……どうしましょう?」

「報告書と言うよりは始末書だな」

 

 

おずおずと俺の顔を不安気に見上げる一刀。うん、報告書よりも始末書の方が潔い気がしてきた。

 

 

「ま、それは兎も角として……報告書は少し捻って書いた方が良いな……真桜は『からくりに対する情熱は高く、今後の魏の技術向上に役立つ見込み有り』沙和は『流行りや噂に詳しく市場に精通して、情報を集める切っ掛けとなる』凪は『任務に忠実。街の警備案や治安改善に意欲的』と書いとくと良いな」

「………言い換えれば変わる物なんですね」

 

 

悪い事も書き方を変えれば違った印象になる。だが大将はこんな事をアッサリと見破る気もするが……

 

 

「本当に凄いですよね……純一さん」

「ん、何がだ?」

 

 

少し考え事をしていた俺に一刀はポツリと呟く。

 

 

「俺、今日の警邏……緊張してたんです。初めての部下が出来て……本当に俺が隊長で良いのかなって。そしたら案の定、真桜と沙和には甘く見られて凪からは叱られて……純一さんがビシッと言ってくれなかったら多分、今日は仕事にならなかった」

 

 

一刀は心情を話してくれた。やっぱ不安だったんだな。

 

 

「結局、俺は今日何もできなかった。ただ純一さんに頼りきりで……」

「……アホ」

 

 

マイナス思考に陥った一刀の額に俺はデコピンを一発。地味に痛かろう。

 

 

 

「じゅ、純一さん?」

「街の警備案はお前が出したんだろ?それを大将が認めて形にしたんだ。それはお前の功績だ、俺は後から来てその功績の仕事に就いただけなんだぜ」

 

 

そう、後から聞いた話だったのだが魏に来たばかりの一刀は文字も読めなかった頃に街の警備案を出して大将を驚かせたらしい。一学生が叩き出した意見とは思えず、曹孟徳から一本とったと大将も楽しげに話していた。

 

 

「お前はお前なりにやればいい……他の誰かと比べて自分は駄目な奴だと言うもんじゃねーよ」

「………やっぱ純一さんには敵わない気がします」

 

 

俺の言葉にハハッ……と苦笑いの一刀。これならもう大丈夫かな?

 

 

「そんな大層なもんじゃないんだよ、俺も。この世界に来てからひたすら混乱してばかりだ。潰れないように踏ん張ってるだけだよ」

「………華琳は今の俺達を『胡蝶の夢』って言ってました」

 

 

胡蝶の夢……確か荘子は夢に胡蝶となり、自由に楽しく飛び回っていたが、目覚めると紛れもなく荘子である。しかし、荘子が夢に胡蝶となったのだろうか、胡蝶が夢に荘子になったのか誰にもわからないって内容だったか……

 

 

「夢か現か幻か……って奴だな」

「思えば俺たちの立場だと今の状況って何かの冗談か……奇跡みたいですよね」

 

 

俺の言葉に一刀は何処か思う事があるのか苦笑いだった。確かに三國志の世界にタイムスリップした挙げ句、武将は皆女性とは何かの冗談にしか思えない。そして一刀の言葉にはこう答えるしかあるまい。

 

 

「奇跡も魔法も……あるんだよ」

「最後の一言余計でしたね」

 

 

俺が微笑みながら言うと一刀は鋭いツッコミを入れてくれた。うん、キレがあるね。

 

 

「じゃ……俺はもう行くわ。予算会議は明日になったから他の書類を纏めないとならないんでな」

「あ、わかりました。お疲れさまです」

 

 

俺は俺で大将から頼まれてる意見案があるので纏める為に隊長室を後にした。

 

 

「さて……今日の事を反省したなら明日以降に反映させてくれよ?」

 

 

俺は隊長室を出た後に曲がり角に話し掛ける。その曲がり角には真桜の髪が少しはみ出ていたのだ。姿は見えないが多分、凪と沙和もいるな。気付かなかったけど隊長室での話聞いてやがったな多分。ま、反省してる様だし後は野となれ山となれ。

やれやれ、なんか手の掛かる弟や妹が出来た気分だ。俺はそんな事を思いながら自室へと戻るのだった。


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