真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第百八十話

赤壁へ到着してから俺は黄蓋さんと凰雛と別れて華雄と話をしていた。

 

 

「なんだ……桂花が甘えていたと思っていたが顎に一撃貰ったのか?」

「まーだ人前は恥ずかしいみたいでな」

 

 

華雄の言葉に俺は桂花からのアッパーを食らった顎を擦りながら答える。船酔いしてた割にはえらく腰の入ったアッパーだった気もしたが。

 

 

「それはそうと秋月。お前は今回どうするのだ?あの『しるばーすきん』とやらは使えぬのだろう?」

「ああ……だから今回は裏方や後方支援かな。かめはめ波で援護射撃とか考えてる」

 

 

華雄の言葉に俺は苦笑い。一刀とも話したけど、なんちゃってシルバースキンを着たまま水上の戦いとか自殺行為すぎる。

他にも色々と考えたけど今の俺に出来るのは援護射撃くらいだ。舞空術で空でも飛べれば別だけど。

因みに、過去に足でかめはめ波を放って空を飛ぼうとしたら、出力が足りず地面に顔面ダイブしてしまった。やっぱ手から出すのと足から出すのじゃ勝手が違って、不安定になって却って危ないとの判断を下さざるを得ない。

 

 

「ふっ……ならば私がお前を守らなければな」

「心強いよ」

 

 

そう言って微笑む華雄。あらヤダ、イケメンだわ。と言うか……今の台詞は立場が逆じゃね普通?

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

華雄との会話を終え、なんやかんやと仕事をしていた俺。未だに船酔いの影響が強く、動ける者が動けない者の代わりに仕事をするしかない状態である。

 

 

「秋月」

「ん、秋蘭?どうしたんだ?」

 

 

夜になっておおよその仕事を終えた俺に秋蘭が駆け寄ってきた。何事?

 

 

「すぐに来てくれ、華琳様と北郷が呼んでいる。黄蓋や凰雛には気取られぬ様にな」

「ん、わかった」

 

 

真面目な様子で俺の耳元で告げる秋蘭に緊急事態だと察した俺は静かに頷いた。

 

 

「大河、華雄。俺はちょっと離れるから作業の続きを頼む」

「はいッス!」

「うむ、心得た」

 

 

俺はやっていた作業を大河と華雄に頼むと秋蘭と共に大将の天幕へと向かった。途中で流琉に連れられた桂花、稟、風と合流して天幕の中へ。

そこでは大将が一刀を押し倒していた。密着度合いから、その最中だと察するには十分すぎる。

 

 

「大将、一刀。時間を潰してくるから済ませておいてくれ。40分くらいで良いか?」

「なんですか、その具体的な時間は!」

 

 

大将に押し倒されたままの一刀がツッコミを入れた。分かってるっての。

 

 

「華琳様、流琉から召集を受け、北郷からの話との事で秋月、桂花、稟、風を呼びましたが時間を潰してからの方が良かったですか?」

「いいわ。一刀をからかうのも一段落したし、入りなさい」

 

 

やっぱり一刀をからかっていたか大将。少し悪戯心の出た俺は一刀に指示を出すことにした。

 

 

「一刀、右手を外側に払ってから腹の辺りに回してみ?」

「え、こうですか?」

「きゃっ!?」

 

 

俺の指示した疑いもなく実行する一刀。一刀の払った右手は一刀を押し倒していた大将の手を払う形になる。バランスを崩した大将は一刀の胸に飛び込む形となり、しかも一刀が腹に手を回した動作で大将を力強く抱き締める形となった。

大将は可愛い悲鳴と共に、一刀の胸に顔を埋めて足は一刀の足の間にスッポリと収まる形となった。しかも一刀が自身の腹に手を回そうとした事で、大将の腰を一刀が抱き上げている状態になる。

その状態になった大将はカァッと顔が赤くなり狼狽え始めた。うん、人をからかう人ほど、そういった事態に弱い。

 

 

「この……馬鹿っ!」

「へぶっ!?」

 

 

仕返しとばかりに大将の蹴りが俺の顔に叩き込まれた。大将は器用にも一刀に抱き締められながらトンと地を蹴って後ろ蹴りを放った。しかも的確に人中を狙ってきたし。

 

 

「ああ、華琳様……一刀殿に力強く抱き締められ……なんと可愛らしいお姿に……プーッ!」

「はーい、稟ちゃん。トントンしましょうねー」

「兄様、華琳様……大胆です……」

「可愛らしい華琳様が見られたのだ感謝するぞ秋月」

 

 

外野では稟、風、流琉、秋蘭が騒いでる。こっちは鼻の下が痛くて、それどころじゃないわ。

 

 

「まったく……馬鹿なんだから」

「ん、ありがと……いたた……」

 

 

桂花は然り気無く手拭いを渡してくれた。大将は俺が痛がってるのを見て満足したのか、一刀の抱擁から抜け出そうとモゾモゾとしていた。いや、寧ろその行動は一刀に生殺しを与えてると思う。

 

 

「さて……脱線したけど話をしましょうか。一刀、先程の話を、もう一度皆に」

「あ、うん……」

 

 

大将が離れると一刀は名残惜しそうにしていた。うん、気持ちはよくわかる。しかし、ここで口を挟むと追加で蹴りが来そうなので黙ってよ。

この後、一刀からの話で黄蓋さんと凰雛はやはり裏切る気なのだと判明。船を鎖で固定した後に火を放って戦力差を埋めるつもりらしい。昼間、漁をしていた船が鎖で繋がれていたのも今回の事に対する信憑性を高める仕込みなのだという。

しかも、こっちは船での戦いに慣れてない上に火計までされたら負ける決定打となってしまう。その話を聞きながらやはり、史実通りに進んでるなと思っていた。そして史実通りなら黄蓋さんは……

 

 

「痛っ……」

「ちょっと!どうしたの!?」

 

 

俺はあまりの頭痛に頭を押さえてしまい、桂花がそれを心配してくれた。話の腰を折っちまったな。

 

 

「いや……大丈夫。まだ船酔いが残ってたみたいだ」

「二日酔いの間違いじゃないわよね?」

 

 

俺の言葉に、まったくもう……と飽きれ顔の桂花。見れば一刀も同じように船酔いが残っていたのか大層苦しんでいた。

俺や一刀の頭痛は兎も角、会議は進み方針として、黄蓋さんの提案を受け入れて罠にかかった振りをして、それを利用する方向で話は決まった。取り敢えず真桜には今夜は徹夜してもらうのが確定したな。

 

天幕を出ると、俺は桂花と共に黄蓋さんと凰雛が鎖の調達に向かったとの話を部下から聞いて、その作業が行われる場所へと向かった。

 




『足でかめはめ波』
第23回天下一武道会で悟空がピッコロ/マジュニアに対して使用。ロケット噴射のように、かめはめ波を足から放ち、相手に向かって突撃する。両手が自由になる利点がある。

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