大将に呼ばれたので大将の執務室に行くと、椅子に座ったまま随分と難しい顔をしていた。なんの話をするつもりなんだ?
「大将、お呼びとの事ですが?」
「あら、来たわね」
大将はフゥと溜め息を溢す。おいおい、人を見て溜め息を溢すなよ。
「まあ、いいわ。聞きたいのだけど、貴方はこの間まで体調が悪かったのよね?」
「ああ、妙に体が重かったが……」
大将の言葉に思い出すのは先日の呉の祭さんとの戦いの時。かなり急に体が重くなり、呼吸するのもキツかったのは覚えてるけど。
「そう……気を失う程だったのかしら?」
「それに近い感覚だったと思う」
あの時は祭さんを助けるのと走るので必死だったけど、今思えば気を失ってもおかしくはなかった気がする。
「そう言えば、一刀も具合が悪かったみたいだな。俺と同じく船酔いだったのかもな?」
「そう、参考になったわ。少し考えたい事があるの……また後で話を聞かせてもらうから、そのつもりでいて」
俺の言葉に大将はまた考え込んでしまう。なんなんだか。
「そんじゃ、失礼します」
俺は大将の考え事の邪魔をしない為に部屋を後にする。なんか凄い深刻そうな感じだったな。
「おお、秋月。丁度良かった」
「僕らだけじゃいつもの訓練になりそうだったんだよねー」
「未来への脱出!」
なんて思いながら廊下を歩いていたら、これから鍛練なのかフル武装の春蘭と季衣と遭遇した。会話の流れから嫌な予感がした俺は即座に逃げ出した。しかし、回り込まれた。
「貴様も甘寧との戦いで強くなったと聞く……さ、やろうか」
「当たり前みたいに言うな!それと甘寧のは色んな意味で事故だからね」
春蘭の言葉にツッコミを入れるが意味は無さそうだ。と言うか秋蘭を初めとした他の将が手を合わせてる。チクショウ、意地でも生き残ってやる。
という訳で俺は、なんちゃってシルバースキンを身に纏って春蘭と対峙してる。しかし、いつもと感覚が違うような……
「なにをボサっとしている!行くぞ!」
「いや、ちょっと待った!?」
春蘭が大剣を構えて突っ込んできた。こっちの体勢を整える時間くらいはくれよ!?
春蘭の大剣を両腕を交差してガードしたが、やはり何かが違う。なんだ、この違和感は!?
「待ってくれ、春蘭!」
「戦場で敵が待ってくれると思ったか!」
体の違和感を感じつつも春蘭の大剣を避ける。避ける事が出来るのは、やはり甘寧との戦いが活きてるのだろう。春蘭の剣筋が完璧じゃないにしても見える。
「相変わらず防御と避けるのは得意な様だが、それだけで私に勝てると思うなよ」
「仕方ない……だが、今までの俺と同じと思うなよ!」
春蘭の挑発に乗る事にした俺は体に気を込め……込め、あれ?なんか、なんちゃってシルバースキンに込めた気が……そう思った瞬間。俺の胸や腹に衝撃が来た。
「ごぶっ!?」
「な、なんだっ!?」
なんちゃってシルバースキンが弾けとんだ。胸や腹の辺りの鎖帷子が砕けて、ぶっ飛んだ。仮面ライダーカブトのキャスト・オフみたいに。
だが、キャスト・オフみたいに前だけに飛ばず俺の方にも弾けた破片が来た為に大ダメージ!
「く……ぐお……」
「い、今のはなんだったんだ秋月?」
踞って痛みに耐える俺に春蘭が話し掛けるが、俺にそんな余裕はない。なんとか立ち上がろうとしたけど、立ち上がれずに俺はその場に倒れ込み、意識を失った。
次に目を覚ました時、俺は医務室で専用の寝台で寝かされていた。大将からは『推測が終わる前に怪我するんじゃないわよ』と叱られ、桂花からは『またか……』と呆れられてしまった。
『キャスト・オフ』
仮面ライダーカブト系のライダーの特徴の一つ。
重装形態であるマスクドフォームから、全身のアーマーを吹き飛ばし、高機動形態であるライダーフォームへ移行する。
弾けとんだアーマーは四方に飛ぶ。これ事態が無差別全体攻撃で雑魚敵はこれで一掃されるパターンが多い。