さて、久々に洛陽に到着したが大将と一刀が早々と用事の為に離れる。香風はその護衛。季衣や流琉、ねね、大河のチビッ子組は里帰りの為、離脱。季衣や流琉の故郷に香風、ねねが付き添いで向かい、大河は元々洛陽に実家があるので、そのまま帰らせた。沙和は景気を調べる為(建前)に街へと行った。真桜は春蘭や霞の武具、俺のなんちゃってシルバースキンの改修の為に工房へと行った。
そんな訳で久し振りに俺は一人での行動だ。
「副長さん、久し振りだね」
「帰ってたのか?新作だ持っていってくれや」
「出先では怪我しなかったのかい?」
「今日は女の子は一緒じゃないんだね」
「呉でも女との関係が出来たって本当なのか?」
久し振りに聞く街の人達の声に泣きそうになる。俺の評価って……そんな事を思いながら街の散策を続けた。
「副長さん、新作の服……出来てますよ」
「素晴らしい出来です。つーかクオリティ高っ」
いつもの服屋に顔を出したら頼んでおいた服が大量に出来ていた。本当にこの世界の服ってどうなってんだろう?俺や一刀の世界の服と差がないんだけど。
服を受け取った後、武器屋に行ったら服屋同様に頼んでいた物が出来ていたので受け取った。真桜になんちゃってシルバースキンの事を頼んではいたが、それ以外の物は武器屋の親父に頼んでいたのだ。毎回、驚く真桜の顔を見るのも楽しみの一つだしね。
さて、街の経済と警備の見回りを済ませ、警備隊の屯所に顔を出してから城に戻る頃には夕方になっていた。やれやれ、一人でやると時間かかるな。車やバイクは無理として……せめて自転車くらいは欲しいなー。
「あら、戻ってたのね純一」
「おや、大将。見回り等々、色々と終わりました。報告は後程しますわ」
城に戻ると大将が既に戻ってきていた。用事は終わったのかな?
「そう。なら、明日までに纏めておきなさい。私と一刀は明日には戻るから」
「へ……俺は?」
大将は明日には一刀を連れて呉へと戻るらしいけど俺は?
「純一には季衣達の村に行って欲しいの。そしたら暫くはそこに滞在しなさい。呉から本隊を連れて蜀に行くときに纏めて拾っていくわ」
「あ、それで報告書は明日までと。しかし、大将の護衛は……」
季衣達の護衛が無い上に俺まで居なくなったら護衛はどうすんだよ。
「あら、香風と沙和と真桜は一緒に連れていくわ。他にも兵は居るから心配ないわよ。それよりも季衣達の村でねねや大河が迷惑を掛けていないかの方が心配だわ」
「護衛の件は了解ですが……保護者代わりか俺は?」
大将の言葉に思わず笑いそうになる。なんやかんやで子供に甘いよな大将は。なんつーか、親戚の家に子供を預けた親の心境だよ、それは。
「んじゃ、報告は明日までにまとめるから今日は大将も一刀を独占しとくと『バキッ』ありがとうございます!」
「余計な気は回さなくて結構よ」
俺の言葉を遮る様に大将の拳が俺の顔面を捉えた。余計な事や口出しをして殴られるって、詠の時といいパターンと化してるな。不味い、このままじゃマジで矢部警部と石原刑事みたいになってしまう。
「そっちは兎も角……それじゃ俺は明日にでも季衣達の村に行きますわ」
「そうして頂戴。まったく、もう……」
まだプリプリと怒ってる大将。本気で怒ってる訳じゃない時ってこんな怒り方するんだよな。年相応の顔付きしてら。
さっき、服屋で受け取った服の紹介もしときたかったけど今出したら絶が飛んでくるな。うん、間違いなく。
「あら、それとも早く桂花に会いたいから季衣達の村に行くのは止めておくのかしら?」
「それを言うなら離れたくないから大将は一刀を連れて戻ってきた……危なっ!?」
大将の発言に反論したら大将の拳が飛んできたので上体を反らして避けた。流石に二度目は食らわんよ!
「甘いわよ」
「そげぶっ!?」
ドヤ顔をしたら大将は俺の服の襟を掴み、そのまま流れる様に足払いを仕掛け、俺は対処できずに転ばされた。
「私相手に得意気になるのは10年は早いわよ」
「そう言う大将は俺から一刀の事を言われると……あだだだっ!?」
ドヤ顔を返されたので一言添えてやると、大将は俺の腕をとって捻り上げた。関節技とかも前に少し話しただけなのに、完璧に理解して使いこなしてるし!
「ま、遊ぶのはここまでにしておくけど……明日から季衣達の事、頼んだわよ」
「りょーかいです」
パッと俺の手を離す大将。遊びだと言ったけど、一刀の話をした辺りの力の入れようを考えると本気だったよね。
そんなこんなで明日から季衣達の村でお世話になると決めた俺だが……その判断を俺は激しく後悔する事となる。