真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第二話

 

 

 

◇◆side荀彧◆◇

 

 

 

アイツと初めて会ったのは親の指示で仕方なく勤めていた袁紹の所に見切りをつけて実家に帰る途中のことだった。

私は実家の近くまで行くと言う商人の馬車に相乗りさせて貰い、近くの村から歩いて実家のある町まで一人で歩いていた時だった。

町のすぐ近くだった事もあり、油断している所を野盗に襲われてしまった。 野盗は男が三人。

ゲスな笑みを浮かべて近づく男達に私は嫌悪感から悲鳴をあげた。

 

 

「きゃあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 

男達は私の悲鳴に回りに誰もいない事を悟ったのかニヤニヤと笑いながら近づく。私は曹操様に身も心も捧げると決めたんだからこんな奴等に触れさせてなるものですか!

 

 

「来ないでよバカ!男が私に触らないでよ!」

「んだとこのアマ!」

「やっちまおうぜアニキ!」

「だ、だな」

 

 

男達が私を取り囲む。私は恐怖で体が動かなくなっていた。

私は思わず、目を瞑ったその瞬間だった。

 

 

「不意打ち!」

「あだっ!?」

 

 

聞こえたのは先程の男とは違う男の声と野盗の悲鳴。

 

 

「な、なん……ぶげっ!?」

 

 

更なる悲鳴に目を開けると見たこともない黒い服を着た男が野盗と戦っていた。

 

 

「ア、アニキ、チビ!?ぶぎゃ!?」

「ふー……なんとかなった」

 

 

あっという間に野盗三人を倒してしまった黒服の男は額の汗を拭った後に私の方に歩み寄る。ちょっと来ないでよ!

 

 

「っと……大丈夫だったか?」

「男が話しかけないでよ、汚らわしい!」

 

 

すると男は私の言葉に黙る。ふん、男なんかこれで十分よ!

 

 

「ああー……それはすまない。でも聞きたい事があってな」

「………チッ。まぁ、まがりなりにも命を助けられたんだし不本意だけど答えて上げてもいいわよ」

 

 

目の前の男は汚らわしい男にしてはまだマシな様だし、不本意だけど命を救われたから答えてあげるわ。

でも私を襲おうとした野盗が目覚めたら元の木阿弥になるから一先ずその場を後にした。

 

 

「ここは何処なんだ?恥ずかしながら迷子でな」

「はぁ?馬鹿なの?ここは豫州潁川郡よ」

 

 

黙って歩けば良いものを男は私に話しかけてくる。しかも迷子ですって?何、馬鹿なの死ぬの?

しょうがないから場所を教えてあげたけど男は首を傾げてる。まさか本当にわからないのかしら?

 

 

「アンタ、もしかしてこの国の人間じゃないの?」

「この国と言うか今現在、自分が何処に居るのかすらわかってないんだが」

 

 

私の予感は的中したらしく男は自分がどの国に居るかもわかっていないみたい。私は深い溜め息の後、口を開いた。

 

 

「この国は漢よ。今はもう朝廷の中が腐っちゃってるから、もうじき乱世になるだろうけどね」

「そうか漢か……漢?」

 

 

漸く場所がわかったのか男は納得した様子になったが、すぐに顎に手を添えて何かを考える仕草をしている。

 

 

「いやしかし……さっきのチンピラ共の格好……言われてみれば三國志の映画を観た時に野盗があんな姿だったけど……いや、まさかねぇ……ああ、そう言えばあの映画、DVD借りに行こうかな……」

「……何、訳の分からない事、言ってんのよ」

 

 

男はブツブツと何か考え事をしている。と言うか『でーぶいでー』って何よ?私は男を怪訝な表情で見る。

 

 

「ああ……うん。少し、考え事を……あ、そう言えば自己紹介もしてなかったな俺は秋月純一だ」

「…………男なんかには名も教えたくないんだけど」

 

 

何か考え事をしていた男は私の言葉に明らかに話を変えようとしている。何よ、自己紹介したって私の名は教えたくもないわ。ん、『秋月純一』……珍しい名前ね。姓は『秋』名が『月』字が『純一』かしら?

相手が名乗ったし……まがりなりにも命を助けられたんだし……ああもう!

 

 

「………荀彧よ」

「………What?」

 

 

私が仕方なく、仕方なく!名前を教えてやったら男は訳の分からない言葉を発した。『ほわと』って何よ!

 

 

「ほわ……何?」

「あー……スマン」

 

 

私の質問に男は一度、天を見上げて……何、諦めた様な顔してんのよ……

 

 

「えーっと荀彧さん?もしかして曹操の所で働いてたりする?」

「な、なんで私が曹操様のところに仕官しようと思ってるの知ってるのよ!?」

 

 

 

 

目の前の男は何故か私がこれから曹操様の所へ仕官する事を知っていた。コイツ何者よ!


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