真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第二百一話

季衣、流琉、大河の目の前には過去に俺を苦しめた三日月模様の熊が……つーか、子供とは言っても季衣、流琉、大河は魏の武将としての力は本物だ。その三人が一頭の熊に敗北って、あり得なくね!?俺なら兎も角だぞ!

 

 

「うぅ……純一さん……」

「おお、季衣!何があった!?」

 

 

呆然としてる俺の耳に季衣の呻き声が届く。

 

 

「村の近くに熊が出るって聞いたから僕達、熊狩りに出たんだ。そしたらコイツが居たから倒そうとしたんだけど……」

「私達、三人がかりでも歯が立たなくて……」

「師匠が苦戦したのも納得したッス……」

 

 

満身創痍な三人。と言うか季衣、アサリ狩りみたいに熊狩りとか言わないの。

確かにこの熊は超強かったけど季衣達で対応出来ない程の強さだったのか?

 

 

「ならば、先手必勝……かめはめ波!」

 

 

俺は疑問に思いつつも季衣達を助けるべく、熊にかめはめ波を放った。だが、その直後……

 

 

「ぐるおぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「うそぉ……」

 

 

 

なんと熊は俺のかめはめ波を避ける事もなく、右腕で払い飛ばした。そのまま空に消えていった、かめはめ波を俺は呆然と見送った。

 

 

「あんな感じで私達の武器も弾かれたんです」

「そう言う事は先に言おうね、流琉!」

 

 

流琉の発言にツッコミを入れたが俺の心中は穏やかじゃない。なんか会う度に強くなってねーか、この熊!?

だが、俺だって今まで何もしなかった訳じゃない!今こそ試す時だ。

 

 

「おら、こっちだ!」

「ちょ、純一さん!?」

 

 

熊に突撃した俺に驚く季衣。だが、驚くのはこれからだ!

俺は上着を熊目掛けて投げ、視界を奪う。当然、熊は俺の上着を避けることなく払い飛ばすが俺はその隙に熊の背後に回り込み、その太い首に手を回して締め上げる!

 

 

「これぞ、ハンギングベアー!」

「ぐるぉぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 

俺は気で腕や手を強化して熊の首を締め上げる。今まで、気功波の類いは効かなかったから今回は直接攻撃に出た。しかも俺は背後に回り込んだから反撃は出来ない筈。

 

 

「ぐるぉぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「ぐ、こ、の……」

 

 

反撃は来ないものの、暴れて振り落とされそうになる。だからって負けるか!

 

 

「ぐ……るぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「へ……?」

 

 

その直後、フワリと妙な浮遊感。その正体は熊がジャンプしたのだ。そしてそのまま背中から落ちて俺を押し潰そうと……ってヤバい!?

 

 

「危なっ!?」

 

 

俺は咄嗟に熊の首に回していた腕を外して、素早く離れた。危ねぇ……あのままだったら確実に押し潰されてたわ。ヒグマの平均体重って250~500キロ位だったっけ?コイツは明らかに、それ以上だし。つーか、咄嗟の判断が人間みたいだよ。熊猫溺泉で溺れた格闘家とかじゃないだろうな!?

 

 

「ぐるぁぁぁぁぁぁぁ……」

「あー……怒ってるよね……」

 

 

起き上がると如何にも怒ってますって雰囲気の熊さん。これはヤバい。季衣達を守るためにマジでファイナルエクスプロージュンも使わねばならんか……そんな時だった。

 

 

「きゅう!」

「……へ?」

 

 

ガサガサと森の中から一頭の子熊が出てきた。その子熊は三日月模様の熊にすり寄るとスリスリとその身を合わせてる。三日月模様の熊もそれを心地好さそうにしてる。

 

 

「もしかして……親子なんでしょうか?」

「それはまさか……そうかもしれないッス」

 

 

 

流琉の言葉に大河が違うと言い掛けたが肯定した。うん、俺もそう思えてきた。だって……

 

 

「半月だ!」

 

 

季衣が子熊を指差して叫ぶ。そう、子熊の額には半月の模様が。親が三日月模様で子供が半月模様って……

親子熊はチラリと此方を見てから森の奥へと帰っていった。

 

 

「お母さんが子供にご飯をあげたかったのかなぁ?」

「なら、私達は邪魔しちゃったのかなぁ?」

「確かに自分達、問答無用で戦ってたッス……」

 

 

子供達はしょぼんとしてる。だけど、まあ……

 

 

「お前達も熊が出て危ないと思ったから村の人達の為にも熊狩りをしようとしたんだろ?人と野生動物の生き方は違うんだから仕方ないさ」

 

 

俺はポンポンと季衣、流琉、大河の頭を順番に撫でてやる。やれやれ……強いとは言ってもまだまだ子供……

 

 

「って……いだだだだだだだだっ!?」

「師匠!?」

 

 

大河の頭を撫でてる途中で腕がビキッと痛みが走った。まさか、ハンギングベアーの時に腕に気を込め過ぎたから過負荷で筋肉痛になったか!?

 

この後、俺は季衣、流琉、大河に支えられながら村へと戻った。村に戻った後、話を聞いたねねが俺にべったりとなった。両手両腕が使えなくなった俺の世話をしてくれたのだ。単に俺に甘えたかったのかもしれないが。季衣、流琉、大河は俺への負い目もあったのか、ねねの手伝いしていた。介護老人の気持ちがよーく分かったよ、チクショウ。

この状況は大将が本隊を引き連れて俺達の回収に来るまで続いてしまった。

 

 

 





『ハンギングベアー』
『聖闘士星矢』の登場人物、檄の必殺技。
怪力を生かした絞め技で何万頭もの大熊を絞め殺したとされている。
銀河戦争では初戦で星矢と対戦の際に使用し、星矢の首を締め上げ失神させるが、意識を取り戻した星矢に両腕の聖衣を破壊された上に連続キックを受け、敗退した。


『熊猫溺泉』
呪泉郷の一つで主人公の父、早乙女玄馬が落ちた泉。水を被るとパンダになってしまう呪いが掛かる。

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