曹魏の将軍人気投票、結果発表!!
第1位 春蘭
「はーはっはっはっ!みんな、ありがとう!」
第2位 夏侯惇
「……ふん」
第3位 元譲
「華琳様に感謝」
第4位 魏武の大剣
「くっ……春蘭に負けた」
第5位 隻眼の猛将
「順当な順位だな」
キミのお気に入り将軍は何位だったかな?
沢山の投票、本当にありがとう!!
「って……全部、春蘭だろうがっ!」
ツッコミを入れ、妙な夢から覚める。
いつもなら昔の……現代に居た頃を夢に見るのだが今回は何故か、こんな夢だった。
「なんつー夢だよ……ってか此処は……」
妙にダルい体を起こすと見覚えの無い天井。明らかに魏の城にある俺の部屋じゃない。
「何処だ……それに何で寝てたんだ俺は……」
俺が悩んでいるとガランと何かが落ちる音がする。その方向に視線を向けると、驚愕の表情で詠が俺を見ていた。
足元には水の入っていたであろう手桶と手拭いが落ちている。溢した水は詠の足と服を濡らしていたが、詠は固まって俺を見つめていた。
「秋月っ!」
「うおっと!詠!?」
意識が戻った詠は俺に駆け寄り抱き付いて来た。急な事で驚いたけど、俺は詠をしっかりと抱き止める。
「馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!心配したんだから!」
「馬鹿って言いすぎだ……でも、心配させたみたいだな」
俺に抱きつきながら『馬鹿』を連呼する詠。状況を説明して欲しいが落ち着くまで待った方が良いな。しかし……ふーむ。やはり詠は胸が大きくなったな。押し付けられるボリュームが前とは……
「ねぇ、秋月?……僕のお腹に何か固いのが当たってるんだけど……」
あ、やべ……
「ねぇ……僕、心配してたんだけど……これ、何?」
「えーっと俺の青龍偃月刀……痛い!」
詠の視線は非常に冷ややかな物に変化していく。そりゃ倒れて心配してた相手の一部がいきなり元気になってりゃ怒るわな。
そして俺の発言を聞いた詠は落とした手桶を拾うと俺の股間に一撃を与えた!超痛い!
「おま……これは洒落にならん……」
「心配させといて、そんなんになってるからでしょ馬鹿!」
股間を押さえて踞る俺に、詠はフンと鼻を鳴らしてそっぽを向いた。
俺の股間の痛みが引いてから詠から話を聞くと、今は俺が倒れてから二日後の夜らしい。俺が倒れた事で進軍は明らかに遅れており、立ち寄った村にそのまま逗留させてもらっていたらしい。いつもなら俺を馬車の荷台に乗せて進軍をしていたが、俺の様子が尋常じゃない事から村に逗留して安静にする事にしたらしい。
「そっか……皆に迷惑かけたな」
「理由はそれだけじゃないわよ。長い進軍で兵隊の疲れも出る頃だから一度腰を据える必要があったのよ。これで進軍の予定も調整しながら行く事になったのよ」
蜀までの距離が距離だから無理はさせられないって事だな。蜀に到着したのに疲労困憊ってのは洒落にならんな。
「兎に角……明日の朝になったら皆に謝っときなさいよ。皆心配してたし月なんか泣いてたんだから」
「そっか……」
忘れていたが現在は深夜で起きているのは一部の夜勤組のみ。詠は丁度俺の看病の順番だったから居たとの事。
「僕は華琳に報告してくるからアンタは寝てなさいよ。それに着替えなきゃだしね」
「ああ、そうするわ」
そう言って部屋から出ていこうとする詠。着替えか……さっき溢した水は詠の足元を濡らしていた。水に濡れて詠の履いている黒のストッキングを纏った脚は妙な色気を……
「見るな馬鹿!この種馬!」
俺の視線に気付いたのか、詠は濡れた手拭いを俺の顔面に叩き付けた。水を吸った手拭いって地味に痛い。
そのまま怒って出ていく。
これでいい……心配させといてなんだけど、沈んでいるよりも怒っていた方が元気に見えるからな……などと少し言い訳染みた事を考えていた。
◇◆side詠◇◆
まったく……あの種馬は……
人に心配させておきながら無駄に元気なんだから。それにしてもやっぱり妙よね。倒れたと言う割には起きて直ぐに元気そうにしてたし。
何よりも……秋蘭の話じゃ今後の話をしている最中に急に倒れたって言ってた。何があったのかは分からないけど、前も似たような状況で倒れてた……技の開発やら鍛練で気絶する事が多かったけど、まさか今回と同じ状況で倒れてたんじゃ……そう思うと府に落ちる部分が多い。凪も以前、『副長は何故か気を修得していく度に気が不安定になっていくんです。技による自爆や気を失う事が多いのも、それが理由だと私は思っています』と言っていた……それはつまり秋月がこの世界で生きるだけでボロボロになっていると言う事……
「それに北郷も倒れた……とまで行かなくても体調不良って聞いてるし……」
そう……秋月が倒れた頃に北郷も体調が悪かったと聞いている。その報告を聞いた時に華琳の表情も何処か思案顔だった。
「華琳も何かを知っている……と思うべきよね……」
恐らくだけど華琳も秋月や北郷の体調不良の事を何か知っている。それは誰にも話していない事なのね。知っていれば春蘭や秋蘭はあんなに慌てないし、桂花ももっと冷静に対処できていた筈。
「聞き出すべきよね……」
そう言って僕は着替えをした後に華琳の所へ向かう事を決意した。