真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第二百九話

 

 

 

「山道へ入り始めたな。ここから道幅も狭くなるし、奇襲も増えてくるな」

「そうね。凪達の部隊に偵察させてるけど……異常は無いそうよ」

 

 

蜀への道程も平野を抜けて山道へと差し掛かった。道幅が狭くなるという事は奇襲や待ち伏せを受ける確率が上がるという事で凪、沙和、真桜、華雄、斗詩を小部隊に分けて偵察を頼んだのだが、待ち伏せをしていそうな蜀の部隊はいないとの報告だった。

しかし、逆に蜀の部隊は山を抜けた先。つまり、狭い山道を抜けて広くなっている出口付近に布陣を展開しているとの事だった。しかも大群なので此方の軍が布陣を展開する隙間がないのだ。

 

 

「地形を使った待ち伏せの基本中の基本ね。敵将は?」

「将旗には馬と甘の文字……恐らく、馬超と甘寧でしょう。他にも複数の将が補佐についているかと思われます」

 

 

大将の質問に凛が答えたが……馬超と甘寧か。ヤバいな。敵側で俺を恨んでる筆頭が揃ってる。迂闊に前に出るとまた腹を刺されるか、首がすっ飛ぶな。

 

 

「馬超と甘寧か……純一を囮にすれば釣れるかしら?」

「真っ先に恐ろしい策を考えんで下さい」

 

 

マジで恐ろしい事を真顔で提案する大将。この覇王様なら本当にやりそうな所が怖いわ。確かにあの二人、俺への恨みが半端無いだろうけど。

 

 

「華琳様……私にお任せ頂ければ突破出来ます」

「は、何言ってんのアンタ?」

 

 

軍義の最中、口を開かなかった春蘭が喋ったと思ったら、とんでもない事を口走った。桂花がバカを見る目で春蘭を見ていた。

 

 

「狭谷への隙間が無いのであれば作れば良いではないか」

「アンタねぇ……」

「それが作れないから困っているのですよー」

 

 

その視線を意にも介さず春蘭は『作ればいい』とハッキリ言う。その考えに軍師組は頭が痛くなっていた様だ。

 

 

「春蘭……出来るの?」

「ハッ!私の部隊と秋月がいれば可能です!」

 

 

大将の疑問にハキハキと答える春蘭。そっかー、凄い自信だ……いや、ちょっと待て。

 

 

「なんで俺を含める?」

「秋月のかめはめ波で奴等の布陣に穴を開けて、後は私の部隊を突入させて奴等の布陣を食い破る。完璧ではないか」

「あら、悪くないわね」

 

 

俺の疑問に春蘭は『何を言っているのだ?』と言わんばかりの表情で俺を見て、大将は春蘭の発想が悪くないと考えてます。

 

 

「決まりね。春蘭、言ったのならやってみなさい」

「御意!」

「それだけかよ!」

 

 

アッサリと決まった方針に一刀がツッコミを入れる。しかし、春蘭は鼻を鳴らした。

 

 

「ふん、華琳様が私を信じて命じてくださったのだ。それに正面からのぶつかり合いで、この私が負ける事などあるものか……違うか?」

「そういう事よ。後続は春蘭と純一が隙を作ったら、その間に部隊を展開。間断なく攻撃を開始しなさい。兎に角、迅速さが勝負よ」

 

 

春蘭の言葉と大将の宣言に俺は春蘭と最前線に行くことが決定した。しかも扱いが鉄砲隊な感じで。と言うか俺は、かめはめ波を撃つ事すら了承してないってのに。

 

 

「春蘭、純一がかめはめ波を撃った後はそのまま戦いに参加させても構わないけど彼を守りなさい。純一を失う事は魏への損失は大きいわ」

「御意!秋月、華琳様からのご命令だ。私が守ってやる!」

 

 

大将は意外にも春蘭に俺の警護を命じてくれた。思ってた以上に大将からの評価が高かった事に俺は感動したが、そう思っているのなら、かめはめ波を撃った後に撤退させてくれと言いたい。そんな風に思っていたら桂花が俺の胸ぐらを掴んでいた。

 

 

「いい?絶対に帰ってくるのよ!春蘭も秋月を守りなさいよ!?」

「お、おお……」

「ふん、任せておけ」

 

 

桂花の叫びに俺は圧倒されて、春蘭は任せろとドンと自身の胸を叩いた。その際、春蘭の胸が揺れて桂花の春蘭を睨む視線が厳しさを増した事を俺は見逃さなかった。

 

 

「と言う訳だ。行くぞ秋月!」

「や、ちょっと待て!普通に歩くから引きずるな!」

 

 

そう言うや否や、春蘭は俺のスーツの襟首を掴むと俺を引っ張っていく。春蘭の力に抵抗できない俺は引き連れられて行く最中、ドナドナの牛の気分だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇おまけ◆◇

 

 

「………華琳様。何故、秋月が前線で戦う事を許可なさったのですか?あのまま戦わせては秋月はまた、倒れますよ」

「反董卓連合の時の件もあるでしょう?純一は良い意味でも悪い意味でも予測しづらいのよ。だったら下手に退かせるよりも最前線で春蘭の部隊に守ってもらう方が安全だわ」

 

 

俺が春蘭に連れられて前線に行っている間に、秋蘭と大将でこんな会話がされていたと後々聞かされました。

 

 


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