真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第二百十一話

 

 

 

蜀へ攻めいるまでにはまだ距離がある。兵隊の疲労と士気向上の為に大将と一刀の発案のもと、『第一回不寝の番免除大会』が開催された。タイトルは俺が決めた。

ざっくりと説明すると、その日の戦の功績次第でその晩の不寝の番。つまりは徹夜での周囲警戒を免除されると言うものだった。

それを説明すると兵は勿論の事、将も気合MAXとなり、猛進撃を開始した。

 

 

因に俺の隊は参加してはいるが、俺自身は参加していない。それと言うのも、大将に話をして俺は不寝の番をかって出たからだ。だって相手が甘寧と馬超なんだもの。遭遇したら刺されるわ。そんな訳で俺は周囲の警戒には出ないものの焚き火の前でボーっとしていた。処理する仕事は大概終わらせたから、後は同じく不寝の番をしている連中から報告を聞くだけだ。

 

 

「遂に……最後の戦いか。この戦いが終わったら……アイツにプロポーズでもするか……」

「露骨なフラグ立てしないで下さい」

 

 

煙管を吸いながら呟いた一言に鋭いツッコミが入る。振り返ると苦笑いの一刀が立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇side一刀◆◇

 

 

 

 

 

 

不寝の番の免除になった俺だけど、なんとなく寝れなくて散歩をしていたら焚き火の前で純一さんが煙管を吸っていた。焚き火の前で黄昏ながら吸う姿は何処か絵になっていた。

 

 

「遂に……最後の戦いか。この戦いが終わったら……アイツにプロポーズでもするか……」

「露骨なフラグ立てしないで下さい」

 

 

格好いいと思っていた姿は一瞬でいつもの純一さんになっていた。あからさまなフラグ立てをする姿は本当にいつもの純一さんそのものだった。

この人は戦いとかこれからの不安は無いのだろうか?

 

 

「どうした一刀、寝れないのか?」

「ちょっと……落ち着かなくて……」

 

 

眠れないので少し純一さんと話をしようと隣に座る。「そっか」と純一さんは柔らかい笑みを浮かべていた。

 

 

「純一さんは……その不寝の番で大丈夫だったんですか?寝不足だと明日に響きますよ」

「不寝の番って言っても明け方になれば交代だからな。その時に寝るさ。それに俺が不寝の番免除の為に頑張れば甘寧か馬超辺りに刺されるからな」

 

 

俺の疑問にフゥーっと紫煙を吐く純一さんは何処か悲壮感が漂っていた。甘寧と馬超は純一さんに因縁……と言うか一方的に敵視されていた。馬超には刺されてるし、甘寧にはシルバースキン越しだったけど斬られている。純一さんが退くのも分かる。

 

 

「その……純一さん。この戦いの後、俺達、どうなるんでしょう?」

「そりゃ……ずっと……この世界に来てから、ずっと悩んでた事だな」

 

 

周囲に人は居るけど……俺達だけの会話。天の国から来たと言われている俺達だけど、実際は未来から来た俺達だけの話。なんでこの世界に来たのか、いつか帰れるのか、これからどうなるのか……この世界に来てからずっと悩んでいた事。

 

 

「どうなるかね……この世界で一生を終えるのか、来た時みたいに急に帰る事になるのか」

「何も……わからないままですもんね」

 

 

純一さんは不寝の番にも関わらず準備していたのか酒を飲み始めていた。バレたら桂花に怒られますよ。

 

 

「元の世界の家族や友達にまた会いたいとは思うが……元の世界に戻ってもハゲ部長に面倒な事で怒られる日々なら此処で生きたいとは思うな」

「俺は……学生に戻る事になりますね。でも……」

 

 

俺も純一さんも元の世界の未練はある。でも、こっちの世界もかけがえのない世界となっていた。

 

 

「もしも、この世界で生きるならまだしも、このまま未来に戻ったら武将と数多く寝たって不名誉な伝説が残りそうで怖いですね」

「それはもう、伝説って言うかワイセツだな」

 

 

俺の一言に純一さんはいつものふざけた返しをして来た。この人は悩んでいる様で悩んでいない。悩んでいない様で悩んでいた。

 

 

「もう落ち着いたろ、そろそろ寝ろ。一刀が寝不足だと俺が大将に怒られかねん」

「あ、はい。純一さんもお疲れ様です」

 

 

俺は純一さんに促されて自分の天幕に戻る事にした。天幕に戻る途中で振り返ると純一さんは再び、煙管に火を灯していた。その姿は何処と無く仕事に疲れたお父さんを感じさせるものだった。

 


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