真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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こんなに間を開けるつもりは無かったのですが……今後は更新ペースを上げていくつもりです。


第二百十二話

 

 

遂に来た最終決戦当日。夜勤明けで寝不足だった俺だがなんとか仮眠を取り、体力を回復させていた。そして現在、魏軍は劉備の城の目前に部隊を展開し、現在は大将と劉備の大将同士の舌戦となっているのだが……

 

 

「大将と劉備の嬢ちゃんの舌戦ねー……正直、劉備が大将に勝ってるのって胸の大きさくらいじゃね?」

「色んな方面にケンカを売るのは止めてください」

 

 

大将と劉備の舌戦を遠巻きに眺めがら呟いた俺に一刀のツッコミが入った。いや、だってまさにその通りなんだもの。前に劉備が魏に来たときも大将は劉備の胸を羨ましそうに、そして妬んだ視線を送っていた。ごく僅かな変化だったので多分、俺以外は気付いていないだろう。

 

 

「ま、舌戦は劉備の負けとして……すぐに戦闘になるぞ」

「そうですね……」

 

 

俺は一刀に忠告しながら煙管に火を灯す。俺は既になんちゃってシルバースキン(改良型)を身に纏っている。真桜に頼んで改良してもらったけど……重っ!仕込みが入ってる分、重くなるとは聞いてたけど、ここまで重くなるとは思わなかった。

 

 

「その……純一さんは大丈夫なんですか?」

「大丈夫かどうかと問われれば大丈夫じゃないさ。なーんでサラリーマンだった俺がこんな所に居るのか改めて考えさせられたっての。それはそうと……今回の戦いは厳しくなるだろう。お前も自分の身を守るためにも……コレを使え」

 

 

俺を心配する一刀だが俺は一刀の方が心配だ。そして俺は今回の装備した武器の一つを一刀に差し出す。

 

 

「えすかりぼるぐ~」

「なんで、青猫型ロボットの口調で撲殺天使様のバット出してるんですか。と言うか、こんな殺傷力100%な武器使えませんよ」

 

 

俺が差し出したエスカリボルグを受け取ろうとしない一刀。まあ、偽物だから殺傷力はほぼ無いんだが。

 

 

「冗談だよ。これは只の仕込みバットだ。相手の裏をかく為に準備した」

「仕込みバットの段階で普通じゃないですけどね」

「アンタ等……こんな時まで遊んでるんじゃないわよ!華琳様が舌戦中でしょうが!」

 

 

等と話をしていたら桂花から脛を蹴られる。なんちゃってシルバースキンを纏っているので痛くはないのだが。

 

 

「聞いても実質無駄だろ。あの娘、言ってることが大分矛盾してるし」

「それは……そうだけど……」

 

 

先ほどから大将と劉備の舌戦は一刀との会話の中で聞いてはいたが、大将の言う甘さがあるのだろう……俺は煙管から灰を落とすと懐に仕舞った。その仕草に察したのか、桂花と一刀の視線は俺から大将の方に戻っていた。

 

 

「全軍戦闘態勢!我が曹魏の新たな歴史、この一戦にあり!命を惜しむな!名誉を……そして我らの歴史に名を刻まれぬ事を惜しめ!」

「この戦い、はるか千年の彼方まで語り継がれるであろう!」

「曹魏の牙門旗の下、最後の戦いを行う!各員奮励努力せよ!」

 

 

春蘭、秋蘭、大将の叫びが鳴り響く。舌戦を終えた大将は春蘭、秋蘭と合流し、此方に戻ってきていた。

 

 

「華琳様、敵の第一陣が舌戦の合間にこちらの陣内に……」

「……勝つために手段を選ばぬか、劉備め!」

「勝つ為に手段を選ばなかった俺は耳が痛いな」

 

 

大将が戻ると同時に流琉が敵陣の動きの報告をして春蘭がそれに苛立ちを隠せない様だが、普段から勝つ為に手段を選ばない戦いをしていた身としてはちょっと心苦しい。

 

 

「それだけ相手も必死という事よ。普段の純一と、ある意味同じよ。そうしなければ戦えないと自覚しているの。でも劉備の策は純一には劣るわ。相手が全軍で搦め手を使うと言うなら……分かってるわね、春蘭!」

「はっ!我ら曹魏に秋月に劣る小賢しい罠など効かぬ!覇王の威を持って打ち砕くのみ!」

 

 

なんだろう……大将も春蘭もフォローしてくれてるんだろうけど……なんか、モヤッとする。

 

 

「やれやれ……誉められてるんだか、舐められてんだか……」

「どっちもでしょ。いつもの事とは言っても……無茶するんじゃないわよ」

 

 

ぼやきながら戦闘準備をしていた俺に桂花が話し掛けてくる。おいおい、まだ此処にいたのかよ。

 

 

「軍師が此処にいて良いのか?」

「心配しないでも華琳様をお迎えしてから北郷と下がるわよ。それと……」

 

 

俺の問いに桂花はいつもの調子で答えたかと思えば桂花は俺の袖を掴み、引き寄せる。そして触れる程度のキスをしてきた。

 

 

「絶っっっ対に帰ってきなさいよ!じゃあね!」

「あー……もう萌え殺されるわー……」

 

 

キスをした後に桂花は顔を真っ赤にして、その場を立ち去る。去っていく背を見送りながら、その耳が真っ赤な辺り、過去最大に顔が赤いのだろう。ちくしょう、見たかったな。でも、まあ……

 

 

「気合いは入った……さて……」

「皆の者!副長を必ず、荀彧様の下へと無事に送れる様に奮起せよ!この苛立ちは蜀の兵士共にぶつけろ!」

「「「「おおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!!」」」」

 

 

桂花に気力MAXにしてもらった俺だが当然、周囲の兵士も見ていた。その掛け声に恥ずかしさと嬉しさと申し訳なさが混じる。なんて思っていたら蜀の陣営から将が一部の兵士を引き連れて此方に突撃してきていた。

 

 

「さあ……始めようか」

 

 

俺はなんちゃってシルバースキンの帽子を被り、拳を握る。これが最後の決戦となる……。

 

 




『エスカリボルグ』

「撲殺天使ドクロちゃん」に登場する魔法のステッキ的な扱いの釘バットアイテム。これで殴られても絶対に死なない(死ねない)ようになっており、これを使うことによって撲殺した人物を即座に再生できる。言い換えれば撲殺と蘇生が永遠に続く、終わりのない拷問道具。


『さあ……始めようか』

映画『ドラゴンボールZ とびっきりの最強対最強』に登場したフリーザの兄クウラのセリフ。

戦いの終盤に最終形態を披露したクウラが変身の最後に、「さあ…始めようか!」の台詞とともに、マスク状の外殻がカシャッと口元を覆うシーンは有名。

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