A.作者が今、一番書きたい話です。
暫くは戦闘パートになります。
◇◆side甘寧◇◆
私は蓮華様の護衛の任に応えるべく戦場を駆け回っていた。その最中に同盟である蜀の蒲公英が捕まっていた。
そのままにしておく訳にもいかないのと、私自身の恨みを晴らすべく私は部下達に蓮華様の下へ行けと指示を出して、私は蒲公英と翠の手助けに向かった。
背後からの一撃で沈めようと思っていたら、秋月は蒲公英から手を離し、距離を開ける。私の不意打ちの一撃は避けられた。秋月は私の接近に気付いて蒲公英を解放して避けたのか!?なんて勘の良い奴なんだ!
「見付けたぞ、秋月……今度こそ首を跳ねてやろう……」
「生憎と俺の首は一つしかないんでね。落とされる訳にはいかないんだわ」
私が半身になりながら剣を構え告げると、秋月は首に手を添えながら笑う。顔は見えんが、何故かヘラヘラと笑っている気がしてイラッとした。
「今の私に油断はない」
「アタシだって今度は負けないよ!」
「そう……だな。覚悟しろ」
「おいおい……俺一人に過剰戦力だろ。ま、だからこそ今回用意したコイツが役に立つな」
私と槍を拾って戻ってきた蒲公英に翠。多対一の状況でなんで秋月はこんなに余裕を持って戦っているのだ?普通に戦力差を考えれば、こいつなら逃げ出す筈。呉の地で戦った様に時間稼ぎか?それとも話に聞いた定軍山の戦いの様に味方が来るのを待っているのか……どちらにしても妙だ。
秋月は服の中に隠していた金棒を構えるが……なんだ、この違和感は?
私や翠に蒲公英は警戒をしつつ秋月との距離を詰め、騎馬隊も私達の周囲を囲むように待機させている。秋月の逃げ場は完全に封じたのに何故か奴は逃げる素振りを見せない。
「いやはや……美女に囲まれるってのは悪い気がしないネ。戦場じゃなけりゃ尚、良いんだが」
「び、美女って……この種馬が!」
「お姉様、そうは言いながらも嬉しそうだよね」
秋月の軽口に翠が顔を赤くしながら突撃し、蒲公英も続く。私も続こうかと思ったが違和感の正体が掴めないままで僅かに遅れてしまう。まあ、秋月に逃げ場はないのだ、このまま倒して……逃げ場が無い?
「マズい!秋月から離れろ!!」
「「えっ?」」
「気付くのが遅かったな、キャスト・オフ!」
私の叫びに翠や蒲公英は反応しきれず動きを止めてしまう。それと同時に秋月の服の一部が爆ぜたかと思えば、そこから鎖や細かく砕かれた鉄板が飛んで来た。秋月に接近していた翠や蒲公英は当然、避けきれず周囲を囲っていた騎馬隊にも破片が飛び散っていく。騎馬隊の馬はそれが原因で興奮し、暴れ始めてしまう。私は警戒していた事もあり、なんとか無事だった私は元凶の秋月を捕らえようと素早く斬りかかった。
「覚悟っ!」
「この場は退かせてもらうぜ!」
私の刃が届く前に秋月は地面に気弾を撃ち込み、砂塵を巻き起こした。私は秋月を見失ったが、奴が走って行く方角だけは見逃さなかった。
「思春!」
「秋月さんは!?」
「この先だ、まだそう遠くには行っていない筈だ!」
「ふはははっ!このままオサラバじゃーっ!」
私に追い付いた翠と蒲公英が合流し、秋月を追おうとしていた。私が秋月が逃げた進行方向に走り出そうとすると秋月の高笑いが聞こえ、かなり近い距離に居る事が分かる。翠と蒲公英もそう考えたのか直ぐに声のする方角へ走り出そうとすると砂塵が治まってきて視界が開けてきて……秋月の持つ剣の切っ先が此方に向かって振り上げられていた。
「なっ!?」
「うっそ!?」
「エクス……カリバー!」
誘い込まれた!と思ったと同時に秋月は剣を振り下ろし、その直後に翠と蒲公英は光に飲み込まれ、意識を失い、私は相手の隙を突くのが秋月の戦術なのに油断させられた事に私は苛立ちを隠せなかった。
◇◆side甘寧・end◇◆
なんとかなった……馬超や甘寧を相手によくぞ戦ったと自分で自分を褒めたい気分だ。ぶっちゃけ正面切っての戦いなんかしたら俺は馬超に秒で倒されるだろう。ならば、いつもの戦い方をするしかないと馬超や甘寧を挑発&悪ふざけで冷静な判断力を奪い、隙を突く戦い方しか思い付かなかった。
馬超は馬騰さんの事や定軍山での事で俺を恨んでいるし、甘寧は呉での戦いで俺を目の敵にしていたから誘い出しやすかった。頭に血が上った馬超や馬岱、そして騎馬隊が俺を包囲してきたので俺は真桜に頼んだ、改良型なんちゃってシルバースキンの機能を発動させた。
「マズい!秋月から離れろ!!」
「「えっ?」」
「気付くのが遅かったな、キャスト・オフ!」
俺は叫ぶと同時に気を全身に発動させて、なんちゃってシルバースキンを体の外側へと弾き飛ばした。
この改良型なんちゃってシルバースキンは二重装甲になっていて、外側は非常に取り外ししやすくなっている。必要最低限、体を守る内側のシルバースキンに気を叩き込む事で弾けやすくなっている外側のシルバースキンは散弾銃みたいに周囲に飛び散る。だから俺は相手を挑発し、距離を詰めてもらったのだ。甘寧は警戒していたのか、被害は無かったみたいだ。直前で馬超達にも指示を出していたし、俺の戦法が見切られているみたいだ。
だからこそ、俺は追撃してくる甘寧から逃げ、出し惜しみをする事なく、気を使い砂塵を巻き起こし、なんちゃってシルバースキンの中に隠していたエクスカリバーモドキに気を込めながら、その場を離れる。そして甘寧達が追ってくるであろう方角に向けて気を込めたエクスカリバーモドキを振りかぶる。
「思春!」
「秋月さんは!?」
「この先だ、まだそう遠くには行っていない筈だ!」
「ふはははっ!このままオサラバじゃーっ!」
俺はわざと大声で逃げようとしている事をアピールする振りをしながらエクスカリバーモドキに気を溜め込む。そして砂塵が治まったと同時に溜め込んだ気を解放した。馬超や馬岱、甘寧、背後に居た騎馬隊は俺の放ったエクスカリバーに飲み込まれた。
これこそ、蝶のように舞い、ゴキブリのように逃げる!と見せかけて蜂のように刺す戦法!
まさか、これを実践する日がやってこようとは……っと此処で気を抜くと不味いな。大概油断して負けるパターンが多いんだから俺は。
「っと……思ったが大丈夫みたいだな」
エクスカリバーで再び舞い上がった砂塵が治まると馬超や馬岱に騎馬隊の面々は倒れていた。ま、油断した所に俺の最大出力のエクスカリバーを食らったんだから無理もないか。ちゅーか、初めて上手く行ったよエクスカリバーの一撃。
「ふざけた……戦い方をして……っ!」
「うおっ!?甘寧か!」
ひねり出した声と共に蹴りが飛んで来たので受け止め、ガードしたのだが蹴りを放った人物は甘寧だった。エクスカリバーの直撃を受けて服も体もボロボロなのに俺を攻撃してくるとは……
「生憎……マトモに戦ったんじゃ確実に負けるんでな。こんな戦い方しか出来ないんだ」
「貴様……貴様の戦い方に誇りはない……あ……」
俺の言い訳を聞いた甘寧はよりいっそう怒って俺の胸ぐらを掴み上げようとしたのだろう。それと同時に甘寧の服が破けた。キャストオフとエクスカリバーを食らった甘寧だが体が無事でも服はそうじゃなかったらしい。サラシと褌と靴のみとなった甘寧。やっぱ、良い身体してるよな……スポーティーで引き締まった……
「見るなっ!」
「あっぶねぇ!?」
顔を真っ赤にした甘寧の目潰しが迫り俺は、その手を掴み甘寧の動きを封じる。マジで危なかった……明らかに両目を潰しに来てたよ、今の。
「わかった、落ち着こう甘寧。落ち着いて……自分の今の状況を確認しよう、な?」
「もういい……貴様を殺して私も死ぬ……」
落ち着かせようと思ったのに甘寧はヤンデレキャラみたいに目から光が失われている。いや、マジで怖いんだけど。
「と、兎に角……ほら」
「………」
俺はボロボロになった、なんちゃってシルバースキンを脱いで甘寧に渡す。甘寧は何も言わずに受け取り、それを身に纏った。俺の着ていた服って事で抵抗があったのか、終始無言だったが俺はそれが狙いだった。
「ゴメンな」
「うぐっ!?……きさ……ま……」
服を着る為に油断した甘寧の腹を気で強化した拳で殴り、意識を奪う。最後まで騙す形になり、心苦しかった。気絶した甘寧を馬超達と共に寝かせると俺は他の場所で戦っている皆のと所へと急いだ。
◆◇side甘寧◆◇
やられた……この言葉しかなかった。
油断も隙も突かせないつもりだったのに、終始奴の作った流れに流された。そして奴の技を食らい、服が破けてしまい、私はサラシと褌のみの姿にさせられた恨みから奴の目を潰そうとしたのだが防御されてしまう。何故か、妙に馴れた仕草だったが奴は普段から目潰しを食らっているのか?
その後、奴は私に着ていた服を差し出す。秋月が着ていた服なんて着たくもなかったが背に腹は変えられず、袖を通す。これが先程まで秋月が着ていた服だと思うと妙に顔が熱くなる……そう思ったと同時に痛みが腹部に襲い掛かる。顔を上げると秋月が私の腹に拳を叩き込んだのだと理解する……最後まで私は油断してしまったんだな……これは、私の油断だ……だから……
「そんな……泣きそうな顔をするな……馬鹿者が……」
身体が動かなくなった私を寝かせた秋月は辛そうな顔をしていた。
申し訳ありません、蓮華様……私はもう戦えそうにありません……何処かへと走り去っていく秋月の背を見ながら私はそんな事を思っていた。
『蝶のように舞い、ゴキブリのように逃げる!と見せかけて蜂のように刺す』
『GS美神』で香港における対メドーサ戦での横島の戦い方。
攻撃する素振りを見せながら脱兎し、相手の気が抜けた瞬間に攻撃に移り、反撃を食らう前に離脱する戦法。