真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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今回は短めです。


第二百二十五話

 

 

 

あの世界から戻ってきてから二年が経過した。俺は勤めていた会社を辞めて、探偵となった。探偵になったからと言って体が小さくなったり、殺人奇術師を追いかける孫になったり……なんて事はなく、人探しやペット探し、浮気調査等が主な仕事だ。それ以外にも怪奇現象や妙な噂を集めて回ったりしてる。あの世界に行く何かの手懸かりになればと思っての事だ。

これ等の仕事がない場合、俺は基本的に便利屋となる。エアコンの修理や草刈りの手伝い等、人と触れ合いの仕事が主だ。

 

 

さて、そんな名探偵をしていた俺だが、今回は一刀に嘘を言って、隣街の喫茶店を目指していた。

一刀には競馬に行くと告げて事務所を後にしたが、疑われてなければ良いのだが……因みに俺は競馬は過去に数回行ったことがある。前の会社を辞めるに以前の話だが、会社の先輩から『試しに行ってみようや』と半ば強制的に連れていかれたのだ。

会社を辞める事を考えた際に、その先輩と話をした為か何となく競馬に行ったのだが、なんとこれが万馬券を引き当てた。

マジでありがとう、ケンタウルスホイミ。馬券を買った時は当たらないだろうと半ば諦めてたのに超穴馬万馬券だった。

 

そのお陰で俺は会社を辞める良い切っ掛けとなり、探偵事務所を開ける事が出来たと言える。そんな訳で俺は二年もの間、探偵を続けながら様々な情報を集める事にした。表向きは探偵として様々な事件を探る事だが、実際は神隠しの様な話や失踪事件を掘り下げて調べていた。それらが、あの世界へ行った人じゃないかと考えたからだ。まあ、実際はその全てが外れだったのだが。

 

一刀には大学に行って貰い、歴史を主に調べて貰ってる。俺が大学に赴き、調べても良いのだが探偵が大学に入り浸り、歴史を調べるのも妙だからなー。

因みに医療関係で『五斗米道』の名は確認出来なかった。

 

 

多少長くなったが、そんな俺が一刀に嘘を吐き、仕事でもないのに隣街の喫茶店に来たのには理由がある。

 

俺は今日、ある人物に呼び出されたからだ。喫茶店に到着したが、待ち合わせの人物はまだ来ていないらしい。店員に、もう一人来る事を伝えて俺はテーブル席に腰を掛けた。

店内には有線で流れるクラシックな音楽に合わせてコーヒーの香りが漂っている。店員が水を持ってきたのでコーヒーを注文するついでに灰皿も頼んだ。この喫茶店は喫煙OKの店で愛煙家御用達なのだ。

灰皿を受けとり、タバコに火を灯して考える。外でタバコを吸える場所も減ったよなぁ……喫煙家は肩身が狭い。このまま禁煙ブームが長引くと公害扱いかも知れないな、と俺がタバコに火を灯して暫くすると目的の人物が店の入り口に顔を出した。俺は吸っていたタバコを灰皿に押し付けて火を消し、水を一口飲んだ。

すると、向こうも俺に気づいたのか真っ直ぐ、俺が座る席に歩いてくる。心なしか緊張した面持ちだ。それは俺も同じなのだろう。正直、此処に来るかは結構悩んだのだから。

 

そんな風に思っていると彼女は俺の目の前に立っていた。最後に会った時よりも少し痩せている気がする。

 

 

「お久しぶりです……先輩」

「ああ……久しぶり、愛美」

 

 

俺が喫茶店で再会したのは数年前に別れた元恋人の『羽山 愛美』だった。

 


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