真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

232 / 306
第二百三十二話

 

 

 

 

目の前の銅鏡を盗んだ二人組を見て俺は一刀にボストンバックを投げ渡す。

 

 

「わ、純一さん!?」

「ちょっと持ってろ一刀。俺はコイツ等を取り押さえる」

 

 

俺はジャケットを脱いで指の骨をベキベキと鳴らす。

 

 

「コイツ等は歴史資料博物館から展示品を盗んだ窃盗犯だ。即座に捕まえなきゃな」

「純一さん、正義感からの行動じゃないって顔に出ています。でも、確かに捕まえなきゃですけど」

 

 

 

様々な意味で手間が省けたのは有り難い。コイツ等を捕まえて銅鏡を確保できるなら正直、歴史資料博物館に忍び込むよりも話が早いからだ。

 

 

「ふん、まさか此処で貴様と遭遇するとはな。ふざけた運命だ」

「考え方を変えましょう、左慈。此処で全ての片が着くんです」

「一刀、アイツ等に見覚えあるか?お前、目の敵にされてるぞ?」

「いえ……でも、俺もアイツ等を見るとザワザワします」

 

 

二人組の男は明らかに一刀を睨んでる。何があったかは知らないけど因縁がありそうな感じだ。

 

 

「于吉、これを預かっておけ。俺は北郷一刀と協力者を始末する」

「やれやれ……自分の手で始末しないと気が済みませんか、左慈?」

 

 

 

左慈と呼ばれた男は于吉と呼んだ男に銅鏡の欠片を渡す。左慈と于吉か、覚えておこう。

 

 

「覚悟しろ、北郷一刀!茶番にしか過ぎない、物がたり、ぶっ!?」

「隙有り!」

「さ、左慈!?」

 

俺には目もくれず一目散に一刀に狙いを定めた左慈。隙だらけだったので側面にハイキックを叩き込んでやった。クリーンヒットしたハイキックに左慈は背中から地面に叩き付けられる。あまりの光景に于吉が叫んだ。

 

 

「貴様……死にた、ぎっ!?」

「キャオラァッッ!」

 

 

立ち上がろうとした左慈の顔面に飛び蹴りを放つ。今度は鼻を捉えたのでダメージも大きいようだ。左慈はジャリジャリと背中で地面を滑り仰向けに倒れた。

 

 

「よし、一人片付いたな」

「いや、卑怯すぎるでしょ」

「な、なんて事を!と言うか堂々と不意打ちするとは!」

「ぐ……き、貴様……」

 

 

俺の一言に一刀のツッコミが入り、于吉は動揺し、左慈はまだ意識があったのか立ち上がろうとしている。

 

 

「生憎、俺は相手がまだ変身を二回残していたとしても変身する前に倒すタイプなんでな。それに相手の裏を掻いてこそ、戦略・戦術と言うものだ」

「とても北郷一刀の仲間とは思えない発言ですね、貴方は。関羽や馬超とは似ても似つかない」

 

 

手を払う俺に于吉は信じられない物を見る目で俺を見ていた。

 

 

「北郷一刀の仲間とは……か。お前等、本当に何者だ?」

「おっと、少々口が滑ってしまったようですね。しかし、油断のならない相手のようだ」

 

 

関羽や馬超が一刀の仲間と言った于吉。妙な話だ。魏所属の俺達は関羽や馬超は寧ろ、敵だった。それがなんで仲間扱いになってるんだ?それに左慈とやらは一刀を目の敵にしてるのも妙だ。俺と一刀はあの世界からの繋がりで一緒に居る事が多い。その俺が怨みを買った人物を覚えていないのも変な話だ。話が食い違っている。何故だか、そんな気がした。しかし、そんな事を考えていたのが失敗だった。左慈は既に立ち上がっている。タフだな、おい。

 

 

「今のは油断したが、俺を甘く見るなよ!」

「左慈は元々、関羽や趙雲と互角以上の力を持ちます。油断が無ければ貴方達が勝てる道理はありませんよ?」

 

 

まただ。何故か左慈と于吉は一刀の仲間を蜀の連中で表現している。と言うか、まさかコイツ等もあの世界の住人なのか?気になる事は多いが……時間を掛けるのはマズイな。コイツ等が歴史資料博物館から銅鏡を盗んだと言う事は警備会社に連絡が行ってる可能性が高いだろう。早くしないと警備の人間や警察が来てしまう。俺は左慈と于吉に見えないように一刀にハンドサインを送る。それに気付いた一刀は左慈と于吉にバレない様に小さく頷いた。

 

 

「関羽や趙雲並だって?嘘吐くなよ。あの二人の方がお前なんかよりも強かったぜ?」

「なんだと、貴様!」

「落ち着きなさい、左慈。怒っては彼の思うツ……なっ!?」

「純一さん!」

 

 

俺の挑発に案の定、乗ってきた左慈。その左慈を諌めようとした。その瞬間、一刀が于吉の持っていた銅鏡を奪い取った。先程、一刀に送ったハンドサインは警備隊の頃に使っていた符丁で意味は『俺が気を引く』こうする事で犯人の気を引き、人質解放。または背後からの奇襲を意味する合図だ。一刀は俺の意図を察し、俺が左慈と于吉の気を引いている隙に背後に回り込み、隙を突いて銅鏡を奪った。左慈と于吉は強いから普段なら気付きそうだがコイツ等は一刀の事になると頭に血が上りやすいらしい。まんまと引っ掛かったわ。

 

 

「わわっ、なんだ!?」

「銅鏡が光ってる!?」

「ちぃ、発動したか!」

「左慈、今ならまだ!」

 

 

すると奪い取った銅鏡の片方が眩い光を放ち始めた。しかし、光を放っているのは割れた銅鏡の片方だけ。此処で俺は卑弥呼の言葉を思い出す。『片方だけでは駄目だ』そう、卑弥呼は俺と一刀は二人で天の御遣いだといったのだ。左慈と于吉の慌てようから、それは確信に変わる。

 

 

「一刀、片方寄越せ!俺達で銅鏡を一つにするんだ!」

「は、はいっ!」

「させるかよっ!」

「させません!」

 

 

銅鏡を俺に渡す一刀。俺達は流れるような動きで割れた銅鏡を一枚の銅鏡にしようと動き、左慈と于吉はそうはさせないと俺達に駆け寄るが俺と一刀の動きの方が速かった。

 

 

「なっ、これは!?」

「ま、眩しい!」

「扉が開く……外史の続きが描かれてしまうのか!?糞が!」

「どうやら、成功したらしいな。一刀、向こうに行ったら打ち合わせ通りにな」

 

 

 

一枚の銅鏡になった事で目も開けられない程の光が溢れ出す。左慈と于吉の驚き方から、あの世界への道が開かれたのだと俺は何故か確信を持てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………へ?」

 

 

一瞬、何が起きたか理解できなかった。光が収まったかと思えば襲ってきたのは浮遊感。それも結構な速度で落下している感じの。まさか、と俺は目を開けて視線を下ろすと其処に広がる光景は荒野だった。

 

 

「じょ、上空っ!?いや、高すぎるだろ!?」

 

 

そう……俺は現在、荒野を一望出きる程の高さから落下中だった。なんで、こんな状況に!?

 

 

「わ、我が魂はぁぁぁ……曹魏と共にありぃぃぃぃぃぃっ!」

 

 

この状況でボケに走った俺は余裕があるのか、パニックになっているのとどちらだろう?ってマジでヤベェェェェェェェェェェェェッ!!

 

 




『キャオラァッッ』
バキの登場人物「加藤清澄」が飛び蹴りをした際に放った掛け声。



『後、二回の変身』
ドラゴンボールでフリーザがベジータに言った一言。


『我が魂はZECTと共にあり!』
劇場版仮面ライダーカブトで仮面ライダーケタロスが叫んだセリフ。宇宙ステーションでカブトと死闘を繰り広げていたケタロスだが、戦いの最中に宇宙ステーションに隕石が追突。その衝撃で宇宙ステーションから地球へと投げ出されてしまう。カブトはエクステンダーで難を逃れたがケタロスはそのまま大気圏突入。その際に最期にZECTへの忠誠心を叫びながら地表に激突して大爆発するという壮絶な最期を遂げた。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。