真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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帰郷編
第二百三十三話


 

 

 

流星ライダーの如く、落下中!ヤベぇ!マジでヤベぇってばよ!

 

 

 

「落ち着け、俺!まだ地表までは遠い……まずは……出来た!」

 

 

パニックになっているのは当然の事だが、俺は右手に力を込める。すると、過去に使っていた気の力を感じ取れた。

 

 

「や、やっぱり使える!って事は、俺は帰ってきたんだ!」

 

 

気の発動を目の当たりにして俺は再び、この世界に帰ってきたのだと、確信した。こんなに嬉しいことはない。

 

 

「って、喜んでる場合じゃない!」

 

 

このままだと本当に流星になりかねない。俺は即座に両手を腰元に添えて気の力を溜める。

 

 

「久々だけど……上手くいってくれよ……かぁめぇはぁめぇ……」

 

 

地表に近付いていくのに恐怖が増していくが俺は目を反らさない。放つタイミングを間違えると地面に激突するからだ。まだだ……まだ……ギリギリまで引き付けて……今だ!

 

 

「波ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 

 

俺は地面に向かって、かめはめ波を放つ。これで多少なり、失速する。後は受け身を……あ?

 

 

「え、ちょっ……予想が……痛だだだだだだっ!?」

 

 

結果として、かめはめ波で落下速度を軽減させるのには成功した。後は華麗に受け身をする予定だったのだが……かめはめ波を撃った地点。即ち、着地場所が俺自身のかめはめ波でクレーターみたいになってしまったのだ。思わぬ事態に俺は動揺してしまい、受け身のタイミングがズレてクレーターの中に激突した。落下速度軽減とクレーターを生み出した事で土が柔らかくなっていたからダメージは少なかったけど、それでも超痛い。

 

 

 

「痛ってて……RXか俺は」

 

 

クレーターから這い出してなんとか立ち上がる。一度、宇宙に飛ばされて帰還したらパワーアップって、マジでRX染みた事になってんな。そう思う程に俺のかめはめ波は威力が増していた。

 

 

「で……此処は何処なんだ?なんか、最初にこの世界に来た時と同じシチュエーションだな」

 

 

パンパンと埃や土を叩く。汚れちまったよ。あ、ボストンバックは一刀に預けたままだった。

 

 

「兎に角……魏を目指すか。一刀もこの世界に来たならそうしてる筈だし」

 

 

俺と一刀の打ち合わせはこうだった。

『あの世界に戻れたら魏を目指す』

『離れ離れになっても魏を目指して、片方が到着前だったら、大将に話を通して捜索してもらう』

『無茶な事をしない』

 

 

最後のは一刀が俺に言ったのだがまあ、いきなり破っちまったな。無理しないと確実に死んでたからね、今の。

 

 

「しかし……だだっ広いな。なんで、こんな場所に降り立ったんだか……取り敢えず」

 

 

俺は気を落ち着けようと胸ポケットからタバコを取り出して火を灯した。なんか……本当にあの日に帰って来たみたいだ。あの時もこうしてタバコ吸ってたら桂花の悲鳴が聞こえたんだっけ。

 

 

「ぴにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「そうそう、こんな感じで……って、なんですと!?」

 

 

あの時と全く同じシチュエーションが発生した。声からして桂花ではなさそうだが、明らかな悲鳴に俺は即座に悲鳴の聞こえた方角へ走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、な、何をする無礼な!わ、妾は袁術じゃぞ!貴様等の様な……ぴぃ!」

「なんだ、このガキ……袁術の名を語ってやがる」

「こんなガキが袁術の訳がねぇ」

「ま、本当だとしても落ちぶれた袁家に何が出来るって言うんだ」

 

 

とっても分かりやすい状況だった。金髪の少女を三人の山賊が取り囲む。一人の山賊が金髪の少女に剣を突き付けて無理矢理黙らせていた。つーか、微妙に見覚えあるけど、あれ本物の袁術だな。反董卓連合の時にチラッと見た事あったけど、間違いなさそうだ。

俺はこそこそと茂みに隠れながら様子を窺っていた。剣が袁術に突き付けられてなければ突撃してたけど、あのままじゃ俺が突撃してもアイツ等の方が先に袁術を人質にしてしまう。

 

 

「ひぐっ……なんで妾がこんな……めに……」

「は、テメェの馬鹿さ加減に感謝するぜ」

「態々、捕まりに来てくれたんだからな」

「きっひっひっひっ」

 

 

ボロボロと涙を溢す袁術に山賊達は笑ってる。余裕ぶってるのか袁術に剣を突き付けていた男は剣先を下ろした。今だ!

 

 

「リクーム……キック!」

「あん?……へぶっ!」

 

 

俺は山賊達の隙を突き、リクームキックを袁術に一番近かった男に浴びせる。顔面を捉えた膝蹴りに男はそのまま気絶した。

 

 

「な、なんだテ……ぐぶっ!?」

「あ、兄貴……この!」

「纏めて失せやがれっ!」

 

 

 

俺の出現に慌てて剣を抜こうとした他の山賊にボディブローを叩き込む。更にこの男の後ろに居た最後の男はボディブローを浴びせた男諸共に気功波を放ち、纏めて吹っ飛ばした。

 

 

「ふーっ……帰った初日に、これって酷いな」

 

 

まさか、この世界に戻ってからいきなり荒事に遭遇するとは思わなかったな。この世界はあれから戦乱も終わって平和になったんじゃなかったのか?おっと、それよりも……

 

 

「大丈夫か?もう、アイツ等はぶっ飛ばしたから怖くないぞ」

「あ、う……」

 

 

俺が声を掛けても袁術はガタガタと震えていた。山賊から助けられたにしても見知らぬ男じゃ不安なのかもな。

 

 

「ひ、あ……だ、駄目なのじゃぁ……止まらないのじゃぁ……」

「え、あ……あー……」

 

 

ガタガタと震えていた袁術はスカートの中心から染みを生み出していた。余程怖かったのか、助けられて安心したのか。兎も角……うん。

 

 

「近くに川がある筈だから行こうか?俺も土や埃まみれだから洗いたいし」

「………」

 

 

怖がらせない様になるべく優しく話し掛ける。すると俺の提案に袁術は無言でコクリと頷くと俺の後に付いてきてくれた。はぁ……帰って来た初日にしてはハード過ぎるぞ。色んな意味で。

 

 

 




『宇宙に飛ばされてパワーアップ』
仮面ライダーBLACK RXの冒頭の話。
主人公、南光太郎(仮面ライダーBLACK)はクライシス帝国に変身機能を破壊されて宇宙空間へと放り出されてしまった。
しかし、光太郎の体内のキングストーン(太陽の石)が太陽光線を吸収し、光太郎を仮面ライダーBLACK RXへと進化させた。その際に宇宙から地球へと大気圏突入して帰還する。


『リクームキック』
独特なポーズの後、瞬間的なスピードで間合いを詰め、強烈な膝蹴りを浴びせる技。

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