真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第二十四話

 

 

 

 

俺はここ数日、真桜と共に設計したある物を作っていた。それは『五右衛門風呂』だ。大人が一人で入る簡易風呂。俺が何故コレの作成に踏み切ったかと言えば毎日風呂に入りたいからだ。

この時代の人間なら兎も角として俺の居た現代では毎日の風呂は当然。悪くてもシャワーくらいは浴びるものだ。だがこの時代においては風呂は高級なものであり、庶民は入れるものではなく権力者や役人でさえ『風呂日』と定められた日に入るらしい。なんせこの時代の風呂と言えば現代で言うところの大浴場並みに広いのだ。浴場を洗うのも湯を沸かすのも、かなりの手間であり気軽に入るものではない。故の『風呂日』である。

それ以外の日は桶に水なりお湯なり溜めて手拭いで体を拭く。残った水や湯で髪を洗うのが当然との事だ。

 

だが手入れも簡単、使う湯も大浴場よりも遥かに少ない五右衛門風呂なら毎日入っても問題はない。それどころか女の武将や文官が多いのだ。五右衛門風呂は受け入れられて量産される可能性も高い。『狭いが湯に浸かれる』と言うアドバンテージはデカいと俺は確信を持っていた。

欲を言えばドラム缶にプロパンガスを連結した『ドラム缶風呂』が一番簡単なのだがドラム缶もプロパンガスも存在しないので五右衛門風呂に至った。

 

さて、基本的な設計を真桜に任せたのだが予想通り俺の設計を遥かに上回る物を書いてきた。明らかに徹夜した顔だったが良いものを書いてくれたのと期待した顔をされては怒れないわな。設計図の件は誉めたが流石に作るのは明日以降だ。こんな寝不足状態で作業開始とかあり得ない。真桜は不満を口にしていたが。

 

さて真桜を部屋に送ってから俺は新技開発兼明日からの工事作業の準備としよう。俺の目の前には山積されている木材が大量にある。その殆どが廃材であり本来なら燃やして終わりの代物ばかりだ。だが燃やせば五右衛門風呂の燃料にもなる物を無駄にはしない。かと言って、このままではサイズが大きすぎで邪魔となってしまう。ならば、どうするか。切るしかない。そして俺の新技開発で切る技となれば、あの技しかない!

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 

俺は右手を空に向けて掌に気を集中させる。すると球状の気弾が出てくるが俺が目指すのは操気弾ではない。イメージしろ……もっと薄く伸ばして……なんでも切れる円盤状に……

 

 

「く……うう……」

 

 

ヤバいキツい!何がキツいって気弾を一定量キープしながら形を変えるって結構難しい!だが気の消費はあるが気弾は少しずつ形を変えてきた。そして円盤状になった、今だ!

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁっ気円斬!」

 

 

俺は気合いと共に気円斬を解き放つ。気円斬は真っ直ぐ綺麗に材木の方に飛んでいく。『避けろナッパ!』と言う人も居ないので材木に命中する筈。そして気円斬が材木の真ん中に当たった。

 

よし、真っ二つ!………にはならなかった。材木には命中したのだが材木は『切れた』と言うよりは『折れた』のイメージだ。本当ならスパーンと綺麗に切れた筈なんだけど……

もしかしてこれは……俺の編み出した気円斬は形だけが気円斬なだけで切れ味ゼロ?なるほど謎は解けた、それも嫌な方向で。

 

つまり俺の気円斬は気弾が形を変えただけで本来の気円斬みたいにカッター状にはなってなかったらしい。さしずめこれは『気円斬』ではなく『気円弾』って所か?いや、これは実践じゃ使えない。気の消費も激しいし、コントロールにも時間がかかる。

本当に上手くいかないな……んじゃ次は『気功砲』……は止めた。気が枯渇するのが目に見える。

俺は溜め息を吐きながら一部割るのに成功した材木を片付けるのだった。

 

それから数日。俺と真桜は警邏を終えると小屋と五右衛門風呂の作成に勤しんでいた。予定していた半分ほどの時間と予算で完成したのは真桜の再設計のお陰だろう。と言うわけで。

 

 

「一番風呂は真桜に譲ろう」

「え、ホンマにええん?」

 

 

俺の言葉に真桜は目をキラキラとさせたが少々遠慮している。まさか完成品を一番に使わせて貰えるとは思ってなかったんだろう。

 

 

「真桜には手伝ってもらったし大将に見せる前に試運転しとかなきゃだからな。早く準備してきな」

「え、今すぐ!?」

 

 

真桜は俺の言葉に胸を隠しながら後ずさる。こらこら、何を想像した。

 

 

「な、なんや恥ずかしいわ……副長の前で裸になるって……」

「脱がなきゃ始められないだろ。脱ぐときは後ろ向いてるから……」

 

 

恥じらいの乙女になった真桜。うん、いくらなんでも脱衣シーンは見ないぞ。本当なら水着でも用意したかったが、この時代に水着はなかった。いや、と言うか水着が無くても何故か下着や服の種類は現代と変わらない。明らかにオカシイ気もするがツッコミを入れたら負けな気がする。そういや一刀は大将の下着選びをさせられたとか言ってたな。

……………なんとか気を紛らわせようと思ってたけど厳しい。後ろで衣擦れの音が聞こえるから正直生殺し状態だ。

 

 

「え、ええで副長。準備万端や……ちょっと怖いけど」

「最初だけだ。慣れれば癖になるぞ」

 

 

真桜の言葉に振り返れば真桜は手拭いを二枚使って上下の大事な所を隠していた。振り返った俺だが即座に視線を反らす。うん、正直直視できない位に良い体です。俺は真桜から視線を反らしたまま指で風呂に入れとジェスチャーをする。風呂の中に入れば視線を反らさなくても大事な所は見えなくなるから大丈夫。

 

 

「ん……うぅ……熱いわ」

「初めてだとやっぱツラいか?」

 

 

湯船に入ったであろう真桜の声に振り返ると真桜は湯船に浸かっていたが湯の熱さに我慢する様な顔になっていた。

 

 

「あ、でも……めっちゃ気持ちええわ……」

「そうだろ?」

 

 

湯船に浸かった事で少なくとも胸は見えなくなった。俺は釜戸の前に陣取っているので立ち上がらない限りは真桜の裸を見る事はない。いや、見たくない訳じゃないつーか、自分から提案しといてなんだがハイパー生殺し状態だよ。

 

 

「最初は恥ずかしかったり、熱かったりで大変やったけど……こんなに気持ちええなら皆、虜になってまうわぁ~」

「すっかり顔がトロけてるな……」

 

 

最初の恥じらいは何処へやら。真桜は完全にリラックスしてる。俺は自作の団扇をパタパタと扇いでいた。釜戸の火の調整用に廃材を組み合わせて作った即興の団扇だが思いの他、上手く出来たみたいで風が心地よい。

 

 

「でもええんやろか……ウチが初めてで……」

「真桜には色々と世話になったからな。その礼もあるんだから、その気持ちよさに身を任せとけ」

 

 

真桜の言葉に俺は思った事を口にする。今回の五右衛門風呂の作成は真桜の手助けがなかったら、もっと時間が掛かっていた。その報酬が一番風呂なら安いものだ。

それに入ってみた感想を添えて大将に報告しなければならないから俺以外の意見も欲しかったんだし。

 

 

「ちょっと、アンタ等!何して……るの?」

「…………荀彧、何してんだ?」

「え、ちょっ桂花!?いや、なんで他の皆さんも一緒なん?皆でウチの風呂を覗きかいな!?」

 

 

 

今回の五右衛門風呂は概ね成功だな……と思っていたら何故か荀彧が怒った様子で小屋に突入してきた。いや、何してんのお前?荀彧の後ろには大将、一刀、春蘭、秋蘭、栄華と勢揃いだし。

あ、流石に真桜も慌ててるな……って驚いたからって風呂から身を乗り出すな!

 




『気円斬』
クリリンが独自に編み出した技。気を円盤状のカッターに練り上げ物体を寸断する。
ベジータや18号、悟空、フリーザも使用している。


『気功砲』
天津飯の必殺技で体中の「気」を両手に集め、手を重ねて親指と人差し指で四角形を作り、その間から気を放つ強力な気功波。
しかし気の消耗は激しく、勢い余って全ての気を放出してしまうと命を落とす危険がある。

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