真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第二百四十七話

 

 

 

予選を勝ち抜いた俺は本選に勝ち上がった。そんな訳でその日は宿屋で祝勝会をしていた。俺は一刀にアニキの話をした。アニキの心情を知った一刀は泣きそうになっている。

 

 

「改めて俺達が居なくなった後の事を思い知らされるな」

「皆に辛い思いをさせてしまったんですね……」

「うーん。その答えも正解ですが満点ではありませんね」

 

 

俺が酒を呑むと一刀は俯いてしまう。そうなんだよな、惚れた女云々じゃなくて国の皆に迷惑を掛けたと言う事なんだ。そんな風に思っていたら黙って酒を呑んでいた荀緄さんが口を開く。満点じゃないってのは?

 

 

「まだこの国の皆さんにも貴方達にも満点は差し上げられませんね。まだまだ子供なんですから」

 

 

「うふふっ」と微笑みながら俺の頭を撫でる荀緄さん。おいおい、三十手前のオッサンの頭を撫でるなよ人妻。それを見て、美羽が俺の頭を撫で始めた。マジで禰豆子みたくなってきたな。

 

 

「それで満点ってのは……」

「教えたら皆さんの為になりませんから教えません。因みに曹操様も桂花ちゃんも満点には至ってませんよー」

 

 

俺が答えを聞こうとしたら荀緄さんは微笑んだままで答えは教えてくれなかった。

その日は結局、答えは分からず仕舞い。翌日の天下一品武道会本選の為に早めに寝る事になった。逆に二日酔いで参加するのも俺らしいかな?なんて思ったり。

 

明日から大変だろうなぁ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 

『さぁー、これより第四回天下一品武道会本選を開催しまーす!』

「「「ほわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」」」

 

 

翌日。俺は天下一品武道会の会場の舞台袖で舞台で司会をする地和を見ていた。ノリノリで司会をする姿はアイドルそのものだ。妖術で拡散した声に役満姉妹のファンと思わしき、連中から叫びが戻ってきた。相変わらずだねぇ。

 

 

『主賓席には魏の曹操様。蜀の劉備様。呉の孫権様が揃っております。更に解説兼緊急時の医者として華佗さん。更に……助手の卑弥呼さんが来ております』

「なんで卑弥呼まで居るんだよ。中々、インパクトのある絵だなぁ……」

 

 

舞台袖から主賓席を覗くと大将と劉備と孫権。前に看て貰った事があるけど華佗。そして俺と一刀の夢の中に侵入をして来た卑弥呼も一緒だった。可憐な少女が三人にイケメンにナマモノのセットとはカオスの極みだ。

 

 

『さぁ、それでは早速第一回戦から始めましょう!一回戦、関羽対李典!』

「おうっ!」

「出番や!」

 

 

地和の進行に舞台の上に関羽と真桜が上がる。その姿に俺は胸がホワホワした。今すぐにでも走りよって抱き締めてやりたい。でも、今それをやったら色んな意味で騒ぎになるから我慢だ、我慢。

試合開始の合図で戦う、関羽と真桜。アッサリと勝敗は決した。真桜の羅刹槍を関羽が素手で受け止めて一撃で真桜を倒す。めちゃくちゃだわー。担架で運ばれていく真桜に南無と手を合わせてから俺は試合会場に視線を戻す。他の選手の戦いぶりを見ておきたかったからだ。孫策や甘寧、趙雲や馬超と言った一流どころの将は危なげもなく勝ち上がり。魏延、馬岱といった者達は苦戦しながらも勝っていく。やはり格の違いがあると言うべきなのか……

 

 

『では次の試合を始めます。文醜対伊之助!』

「よっしゃあっ!」

「おっと出番か。猪突猛進!」

 

 

地和の呼ばれて舞台の上に。相手は文醜だった。あの頃、戦う事は無かった相手だが、斗詩から話しは聞いていた。大剣を扱い、一撃必殺が戦法。それを体現するかの様に文醜は背負った大剣を構えている。

 

 

『伊之助選手は予選を勝ち進んだ一般枠の参加者です。今まで予選優勝者であったアニキさんを破った実力や如何に!?そして、その頭の猪は何なんだー!』

「へっアタイがあんな猪擬きに負けるかよ!斗詩ー!アタイが勝つ所を見てろよー!」

 

 

地和が俺の紹介をすると文醜は舞台袖に居た斗詩に手を振っている。対する斗詩は恥ずかしいのか顔を赤くしながら手を振り返していた。なんやかんやで仲直りはしたらしい。でも、まあ……目の前の相手に集中せずに他所に意識が行ってるのは頂けないな。

 

 

『では……試合開始!』

「でりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 

試合開始と同時に文醜は大剣を振り上げて迫ってくる。俺は危なげもなく斬撃を避ける。

 

 

『か、かわしたーっ!なんと伊之助選手、文醜選手の一撃必殺を避けたー!』

「く、この、でりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「ふん、猪突猛進!」

 

 

打ち下ろしの攻撃を避けられた文醜は薙ぎ払いに来るが俺はバックステップで薙ぎ払いを避けた直後にタックルで文醜を突き飛ばす。

重量系の武器は打ち下ろしか薙ぎ払うかの二択だ。特に文醜は大振りだから攻撃予測もしやすいし、大振りの後は隙だらけだから虚を突いたタックルが充分に通用した。武器は手離さなかった文醜だが、倒れた状態じゃ何も出来まい。俺は即座に大剣を取り上げてから、文醜の服を掴み、そのまま場外へと投げ飛ばそうとした。

 

 

「く、くそ!まだだ!」

「ちっ、浅かったか」

 

 

しかし、文醜は体勢を立て直し、場外落下は免れた。だが、大剣は俺の手の中。徒手空拳で文醜が俺に勝てるかと言えば否だろう。それでも負けたくない文醜は俺に殴りかかってくる。

 

 

「よっと……ほいっ!」

「え、うひゃぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 

俺は文醜の右拳を左手で受け止めながら文醜を自分の方に引き寄せる。引き寄せた文醜を腕事抱き締めて動きを封じてから後方へ投げっぱなしのジャーマンで場外へと投げ飛ばした。先程、投げた段階で舞台の端ギリギリだったから今度こそ場外だ。

 

 

『じょ、場外!勝者伊之助!』

「ふはははははーっ!俺様、最強!」

「なんだと、ちくしょう!アタイがこんな負け方するなんて!」

 

 

大剣を奪われた上に場外へと落とされた文醜が悔しそうにしていた。俺はブリッジの体勢から起き上がり、勝ち名乗りを上げた。

 

 

『名も無き選手であった伊之助選手。文醜を打ち破り、二回戦進出!その猪頭は伊達では無かったー!』

「「「「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」」」」

 

 

地和の解説に沸き上がる会場。うん、こんな会場で盛り上がるとテンション上がるわー。

そんな事を思いながら一回戦を勝ち抜けて嬉しいと思う気持ちと……斗詩に慰められている文醜を見て少し羨ましいと思ってしまう。


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