真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第二百五十一話

 

 

 

俺は甘寧に全てを話した。

 

『蜀での決戦の後、天の国に強制送還された事』

『三年半程、天の国で仕事をしながら、この国に帰る方法を模索していた事』

『貂蝉、卑弥呼から、この地に来る方法を教えて貰った事』

『その方法でこの国に帰って来た、その日に袁術を助けた』

『袁術から、この国の話をある程度は聞いたが、全容はさっぱり』

『袁術を放置も出来なかったので、取り敢えず人里に連れてきた事』

『荀緄さんと顔不さんの勧めですぐに魏に戻らず、平和祭に合わせて戻る事になった』

『その流れで天下一品武道会に参加し、功績を残すのを目標とした』

『袁術は以前とは違い、我が儘な娘ではなく健気な子になった事』

 

 

その全てを聞き終えた甘寧は瞳を閉じて黙っていたが、スッと瞳を開ける。

 

 

「それで……納得できると思ったのか?」

「まあ、そう言われるよな」

 

 

その視線は鋭く俺を咎めている様だった。まあ、四年近くも不在でいきなり、こんな事してれば……やっぱりサッサッと帰るべきだったか。そんな事を思っていたら甘寧に胸ぐらを捕まれた。

 

 

「あ、あの……甘寧さん?」

「貴様は……何故、気付かん……」

 

 

その瞳は鋭いながらも何処か哀れみを含んだような瞳だった。

 

 

「私は……くそっ!」

「お、おい……」

 

 

甘寧は苛立った表情になると俺の胸ぐらを乱暴に離した。なんだってのよ?

 

 

「貴様が戻った経緯と袁術の事はわかった。貴様が望むなら黙っていてやる。だが、忘れるなよ。袁術は我等、孫呉の怨敵だと言う事をな」

「そん時は……守るさ。そう、約束しちまったからな」

 

 

ギロッと甘寧に睨まれる。うん、めっちゃ怖いけど美羽の事を守ろうと決めたのは俺だ。

 

 

「貴様は……まったく、もういい……」

 

 

甘寧はそう言うと呆れた様子で窓から去っていった。取り敢えず俺の事を秘密にしてくれるなら、有り難いよ。甘寧が去った後、俺は窓を見詰めていた。

 

 

「色んな人に迷惑掛けてんなぁ……一刀と土下座案件がドンドン嵩んでいく……」

 

 

俺は気絶している美羽の髪をサラリと撫でると少し溜め息を吐いた。だが溜め息を溢すのも本日の分は最後だ。何故ならば明日の初戦の相手は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さぁー、天下一品武道会二日目!初日を勝ち抜いた精鋭達が集う強者のみの祭典!優勝するのは誰だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』

「「「「ほわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」」」

 

 

地和の叫びにそれ以上の叫びで返す観客席。地和、お前のライブじゃないんだぞ……なんてツッコミを入れたものの俺の心は落ち着かない。天下一品武道会の予選や初日は所謂、ふるい落としだ。寧ろ、二日目が本番と言える。

 

予選や初日で弱い選手をふるいに掛けて二日目に強い者達のみで行われる試合。本来なら二日目に出る筈だったが甘寧を倒したので俺も二日目に参加しているのだが……

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「どりゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「せいやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 

もう次元が違うよね。初日に格下相手に戦っていた時と違って実力が近いから凄まじい戦いになってる。戦いを見てるとやはり、関羽、孫策、春蘭、華雄、霞等は別格に強い。その上が恋なのだろうが不参加だ。因みに聞いた話では祭さんは鍛練を張り切りすぎてギックリ腰になって不参加である。しかし、舞台袖で見てるけど凄まじい戦いだよな。この中に参加しろってか。正直、なんちゃってシルバースキンを着てても躊躇うわ。そんな中で伊之助コスプレで参加って自殺志願者みたいだ。

 

 

 

『では、次の試合に移ります。伊之助選手対楽進選手!』

「おうっ!」

「はいっ!」

 

 

試合は次々に進み、地和のアナウンスで舞台に上がる俺と凪。そう、俺の二日目の初戦の相手は凪なのだ。荀緄さんの話では今の凪は各国の武将から戦いを学んで凄まじい強さになっているとか。凪は真面目だから俺と一刀が去った後に修行に打ち込んだんだろう。更に警備隊の仕事をしてれば、窶れもするか。

 

 

「……………」

 

 

そんな事を思いつつ凪と向かい合う様に立つ。凪は無言のまま俺を睨んでいた。先日、会った時と同じ様に……いや、あの時から俺の正体を怪しんでいたんだろう。なんせ魏に居た頃は組手の頻度は凪、華雄、大河が特に多かった。その事を考えると動きで正体がバレている可能性大だ。特に凪は俺が魏に行った頃から組手や鍛練に付き合って貰っていたから下手すれば一番にバレていたのかも。

 

 

 

「お相手……願います」

「………よかろう」

『おおっと!両者、気合い充分!それでは試合開始!』

 

 

 

凪が構えたと同時に俺も刀に手を掛ける。正体がバレてるにせよ、バレてないにせよマジでやらないと、あっと言う間に負けてしまうわ。

 

 

 

「そりゃあ!」

「はあっ!」

 

 

俺は抜いた刀で凪に斬りかかるが凪は俺の刀を避けると、カウンターで右拳をボディに打ち込もうとする。俺はバックステップで下がりながら、刀の柄でガードする。打ち込まれた拳の衝撃がビリビリと手に伝わる。

距離を置いた凪はジッと俺を見据えている。なんて言うか……違うな。今までは鍛練と言う形でしか凪と戦った事しかない。しかも今は明確な『敵』としてだ。心構えや対応も違うのだろう。

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「ふんっ……げっ!?」

 

 

再度、攻めてきた凪に先程の様に刀の柄でガードしようとしたが、余りの速さに対応が間に合わなかった。凪は俺の右手の刀を蹴りで叩き折った。

 

 

「ヤバッ……ごはっ!?」

「せやっ!」

 

 

刀を折られた事に気を取られた瞬間に腕を取られて投げ飛ばされる。その際に左手の刀を落としてしまった。凪は俺が落とした刀を踏んで刀身を折る。いや、めっちゃ怖いんですけど。圧力半端ないッス。

 

 

「貴方が私の知る人なら……」

「ちょ……まさか」

 

 

凪は両手を前に突き出した後に腰元に構えた。あの構えには見覚えが有りすぎる。

 

 

「かめはめ……波ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「デカいっ!」

 

 

凪の放ったかめはめ波は俺の知る凪のかめはめ波のサイズを遥かに上回っていた。このかめはめ波の直撃はヤバい!。それに俺がかめはめ波を撃ったら正体がバレる。そう思った俺は咄嗟に両手を広げた。

 

 

「かあっ!」

「なっ、跳ね返し……くっ!」

 

 

両手を胸の前で印を組む。それと同時に迫った凪のかめはめ波を受け止め、凪にそのまま跳ね返した。これぞ天津飯流のかめはめ波返し。なんて言ったけど本来のかめはめ波返しとは違う。天津飯は気合いで跳ね返したけど、俺は実は手に気を込めてバレーのレシーブの要領で凪に打ち返しただけだ。だから、今めっちゃ手が痛い。

 

 

「このめちゃくちゃな感じ……やっぱり……」

「あちゃー……バレたか?」

 

 

正体がバレない様にかめはめ波を撃たないようにと思ったのに、今のかめはめ波返しで凪に正体がバレっぽい。さーて、どうするかな。俺は痺れてる両手を振りながら、これからの戦いを頭を悩ませる事となる。

 

 

 




『かめはめ波返し』

両手で印を組み、相手のかめはめ波をそのまま跳ね返すカウンター技。天下一武道会で天津飯がヤムチャのかめはめ波を跳ね返した。

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